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学びのプロセスをつくる

残念ながら、あまり教育に関心がない人も多いと思います。

IT業界でも、原則として首から上についているモノの価値で勝負する世界であるにもかかわらず、その価値を向上させることにあまり興味を持っていない人は案外多いものです。

もちろん、純粋なプログラミング技術については、多少なりとも興味があるかも知れませんが、それは「仕事」ではなく、「仕事の一手段」「仕事の一部品」でしかありません。そのため、みなさんがこぞってそのことばかりに傾注していると、「仕事」自体が破綻してしまいます。

道具ばかり磨いていても、その道具を使いこなす腕が無ければ結局はまともな料理ができないのと同じです。

たまに発生する「トラブル」とは、そうして実現するのです。

知識社会においては、継続学習の方法を身につけておかなければならない。
内容そのものよりも継続学習の能力や意欲のほうが大切である。
ポスト資本主義社会では、継続学習が欠かせない。
学習の習慣化が不可欠である。
-----『ポスト資本主義社会』P.253 - P.F.ドラッカー

知識や能力は、一夜にして身につくものではありません。

何を学ぶか、何を学びたいかという情報を得ることは大切ですが、それ以上に「いかにして学ぶか」という普遍的な能力を身につけることが重要です。

さらに、知識社会を生き抜くには、学びを習慣化すること、つまり「いかにして学び続けるか」という継続学習が不可欠だとドラッカーはいいます。

学習にはインプットもアウトプットも必要ですが、

 聞くことが得意ならインタビューで情報を得る
 書くことが得意ならばブログで情報発信をする

といったように、自分の強みやワークスタイルを活用することが学びの秘訣といえます。自分の強みや得意なスタイルで行えば、学習を負担に感じないので知識を得やすく、続けやすくなるからです。学びを楽しみ、知識という資本の投資効率を高めるコツを身につけましょう。

「自らの強みが何か」を知ること、「それらの強みをいかにしてさらに強化するか」を知ること、そして「自分には何ができないか」を知ることこそ、継続学習の要である。
-----『プロフェッショナルの条件』P.106 - P.F.ドラッカー

個人的にはモヤモヤするんですけど、ドラッカーは強みに集中するべきとよく説いていますね。私個人は、これは

 「組織の各パートごとに強みを持った人たちが揃えられていて
  どのパートにも強みを持つ人が不足していない」

場合にのみ、強みに集中することが可能なのであって、常にそうできるとは限らないから、弱みを放置しておくと致命的になりかねない…と思ってるんですけどね。実際、そうした歪な組織はイヤというほど見てきましたし。

それはともかく。

集中を考えるとき、アウトプットインプットという二つの要素が重要になります。

アウトプットとは、「成果」のことです。
成果は必ずしもモノになっている必要はありません。

インプットとは、成果を得るために投下する「資源(燃料)」のことです。
主な資源は時間知識(情報)でしょうか。

成果は、資源投下という"行動/活動の結果"として、生まれます。
単に知識が頭の中にあるだけでは何も起きません。

ここで意識しなければならないのは、「行動の量と質」です。
どれだけ行動したか、どんな行動をしたかです。行動の量については、何といっても時間の確保が欠かせません。当たり前のことですが、時間があればあるほど行動量は多くなり、それは成果の大きさや量に直結します。

一方、行動の質を決めるのは、個人がもつ知識や能力です。深い知識があればさまざまな行動をとることが可能になりますし、あるいは、より短時間で成果をあげることもできます。ですから、なるべく知識を広く深く身につけていきましょう。それはいまの仕事をより早く、的確に行うための投資でもありますが、知識を広げれば、未知の仕事を手がけられるようにもなります。やれる仕事の数と種類が増えていきます。時おり、現在の手持ちの資源の使い方だけでなく、新しい知識という未来の資源をつくる投資も意識してください。

私は、よく

 「スポットで受講する受動的な教育は"教育ではない"」

と言っています。本当の意味での教育は主体的に吸収する姿勢が必要で、しかも日常の継続的な経験の中でしか得られないからです。だからこそ、新人についても「新人教育」はただの予備知識を与える場でしかなく、本当に重要な教育はOJTであると考えています。

OJTにおいて、成長させることを確かな目的とした新人への業務配分を考えられなければ、新人の成長においてスタートダッシュすることは困難でしょう。

学ぶことについて誰かの助けを必要とするようでは、終生学びつづけることはできない。
(中略)
情報、確認、動機づけのすべてを、学ぶことのプロセスそのものの中に組み込んでおく必要がある。
-----『断絶の時代』P.345 - P.F.ドラッカー

人は育成されるものでも教育されるものでもありません。
講師を含む他者はサポートしてくれる以上の存在ではありません。
学びは自分自身で行うものです。

たとえ強制されても、疲れたり、反発したくなったりするだけです。
学習を導く方法について、ドラッカーは次のようにまとめています。

 ①強み、得意、長所を見つけ出す
 ②それらを伸ばすために、目標を設定し、計画を立てる
 ③強みの発揮を阻む制約条件、弱み、不得手、欠点に関心を向ける
 ④自ら方向づけできるよう、成果からフィードバックを行う

これらは学びのプロセスを考える際の大きなヒントとなります。

実際、私も'96年に社会人になってからと言うもの、当時の3か月間の新人教育を除けば、その後たいして教育らしい教育は一切受けていません。

トラブルプロジェクトの支援に送り込まれることが多く、勉強どころか、試験日に仕事していない方が稀ということもあって、情報処理資格も一切持っていません。

1年目の前半だけ、先輩の下に就いて仕事をしました。

当時、Oracleのマニュアルは全40巻ほどですべて書籍でしたが、「それ読んでSQLとPro*C勉強して」と言われてあとは放置されていました。

新人教育ではC言語以外学びませんでしたし、データベースが何なのかもよくわかっていませんでしたから、結果、進捗遅延も甚だしく、期限切れになって協力会社を含む他の人に半分近く引き取ってもらってなんとか納期に間に合わせてもらいました。

それが初めての仕事でした。配属後、初めて与えられた仕事で「たいして使えない」と言われたものです。

誰しも最初は、今の新人たちと同じレベルです。私もそうでした。当時はPCも高価で固定資産扱いできる額でしたから、なかなか個人で持てるものでもありませんでした。

ブラインドタッチもできませんでしたし、まだインターネットすら今ほど普及していない時代です。

当然、家で勉強と言ってもよくわからない書籍を読む程度で、実務で活かせる内容の書籍が必ずしも存在しているわけではありません。プログラムの変数名を付けるのに、大学入試で使ってたボロボロの英和辞典を常に持ち歩いていたほどです。

今の「多少プログラミングできます」と言う新人の方が、当時の私よりよほど優れていたことでしょう。

小規模ながら、まともに仕事のコントロールができるようになったのは、
3年ほど経ったころです。何度も病院送りになりながらも、トラブルプロジェクトの支援をすることで、

 常に不足したスケジュール
 常に厳しいお客様への対応
 常に失敗が許されない空気

に身を置くことで、誰かにもたれかかって甘えていても誰も助けやしないし、そうやって甘えているだけでは自己の成長には絶対結びつかない、と言うことを知りました。

常に逼迫した環境下で、数分悩んで手を動かさないだけでも、万単位の損失を招きかねない状況です。

悩む暇もなく、「できない」なんて戯言を言う機会も与えられず、とにかく失敗しながら、失敗して怒られながらも、前に進むしかありませんでした。

以来、チームがどれだけ緩かろうと、他の人がどれだけ楽しようと、誰かが手を抜こうと、私は自分の中にハードルを設け、自分ルールの中で成果を常に向上させることだけ考えてきました。

そうして今、大抵の仕事がそれなりにできるようになりました。

さらに今はインターネットでほしい情報を手に入れるのは簡単ですから、したことがまったく無い仕事でも、まったく知らない内容の仕事でも、ちょっと時間を作ればおそらく大抵のことはできるでしょう。

要するに

  「やる」
 →「どうやる」
 →「やり方を調べる」
 →「さらにやってみる」
 →「確認する」
 →「指摘受ける」/「失敗する」
 →「修正する」

と言うプロセスを進めるだけです。

みなさんのソフトウェア開発の一般的な手順と全く変わりません。

毎回毎回、同じ仕事であっても「どうやる」の部分で少しずつ改善を加え、より効率的に、より確実に、より品質高く、とブラッシュアップしていきます。失敗したところで、成功するまでやり方を変えながら、模索するだけです。

継続学習と言うのであれば、仕事の場=勉強の場にすればいいのです。

しかし、常に勉強の場にしておくためには、

 「楽な仕事」
 「頑張らなくてもできる仕事」
 「過去の事例に則る仕事」

などに依存しないようにしなくてはなりません。

本質的に、過去と同じ結果が求められていたとしても、より効率的に、より確実に、より品質高くあろうとする姿勢が重要になります。結果以外のプロセスまでも"過去と同じ=停滞"となった時点で、それはもう勉強の場ではなくなってしまうのです。

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