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マズいマネージャーの見分け方

最初は「より良いマネージャーの…」と書こうかと思ったのですが、良い点を示しても、おそらく殆どの人は「ふーん」で終わると思います。言葉だけ並べても、実際にそうしているマネージャーの方は極僅かしかいませんから。美辞麗句を並べても、心に響かないんですよね。

実際、私が見てきた中で、能力の高い/低いはあれど、(管理職を含め)マネージャーの姿勢として敬意がはらえると思えた人は、あまり多くはありません。

敢えてネガティブなタイトルにしたのは、それが

 ・部下を疲弊させ、忠誠心や帰属意識が低下する
 ・企業全体の価値を下げる
      ↓
 ・ひいては業界、社会全体に暗い影を落とす存在となり得る

と言ったことに影響しかねないほど本当にマズいからで、且つそのマズい部分を改善するだけで、圧倒的に状況が改善されることがわかっているからです。そして、その見分け方の中でも最も重要となってくるのが

 「未来に対して、どう語るのか?」
 「プロジェクトの現状と理想をどう受け止めているのか?」

です。


世の中の多くの経営者をはじめ、真っ当なマネジメントをする者は必ず

 未来の"状態"

について語ります。
状態とは、ゴール地点でのあるべき理想の姿です。

たとえば、経営者であれば、自社を語るなら…

 「売上〇億企業になっている」
 「上場する」
 「〇人規模の企業になっている」
 「〇〇業界でのシェアを1位に押し上げる」

と言った状態を語ります。言い換えれば先にゴールが設定されているということです。できる/できないではなく、「やる」。やらないとできないわけですし、未来なんて正確に予測できるわけがないのですから、ある程度の計画を立て、計画通りに進めつつ、想定していたリスクに対してはそれぞれ対策を講じて、極力計画通りに進めつつも、いざとなったら状況の変化に臨機応変に対応し、決断する覚悟を持つ。それだけですし、実際それしかできません。

メディアなんかでもたびたび取り沙汰される著名な経営者なら、業界や社会、あるいは世界の未来について語っていることが多いですよね。

 「〇〇年は△△な年になる。
  我々は××していかなければならない。
  それに先駆け、弊社は□□を推進し、◎◎には目標を達成する」

的な。具体的な数字で示せると、投資家に対しても好感が持たれるでしょう。事業投資したお金が何にどう使われ、いつ頃までにどんな成果を生み、社会にインパクトを残すのか、あるいは業績を向上させるのか。損得勘定によるつながりと言う意味合いの濃い、投資家にとっては最も知りたい情報ですよね。

その意向を受けて、部課長クラスであれば、たとえば

 「〇〇会社との取引を1億上乗せする」
 「〇〇と言う技術領域を柱に、来期までに最低〇回は案件化する」
 「最低でも〇チームは今期中に安定して利益をあげられるようにする」
 「◎◎技術の修得メンバーを中心にプロジェクトを立ち上げ、
  部門の柱となる事業を確立し、年間予算の△%を支える体制にする」

と言った状態を語るのかもしれません。

そしてもう1つ大事なことは、未来ばかり見て灯台下暗しになっていないことです。経営のことをマネジメントというくらいですから、当然ながら企業規模のマネジメントをしてもらわなければなりません。管理職なら部署規模の、プロジェクトマネージャーならプロジェクト規模のマネジメントを実際にしてくれなくては、存在価値がありません。

ただ未来を偉そうに語るだけではその立場にいる価値は半分もありません。

その未来のヴィジョンを叶えるためには、叶えるためのマネジメントが必要です。マネジメントとは

 現状と理想(ゴール)とのギャップを埋めるために
 必要となる全ての「やりくり」をコントロールすること

自分一人で行うとしても、チームや組織で行うとしても、本質的な部分は何も変わりません。このことを正しく理解し、理想に向かって「やりくり」できるかは、理想を語ったうえで現状とのギャップをどのようにして埋めるつもりなのか確認してみれば、よくわかります。

未来を不確定なものとして考えない

未来の状態とはすなわち『目標』です。

 「ゴールした時、目標に到達した時に、どんな状態になっているか?」

と言う具体的イメージです。
「未来のことなんてどうなるかわからない」「計画なんて立てたって、その通りになることなんてない」なんておっしゃる方もいますが、仮にそうだとしても、センスなのか、感覚なのか、未来を言い当てる人は少なからずいます。

そう、必ずしもわからないものではないんです。「未来のことなんてどうなるかわからない」「計画なんて立てたって、その通りになることなんてない」なんておっしゃる方は、厳密には「わかるかもしれないけど、複雑怪奇だから考えたくない」ということなのでしょう。

ですが、実際にはそれをやる人も、できる人も多かれ少なかれいます。人によって、1年先を見ようとする人もいれば、一ヶ月、一週間、一日しか未来予測できない人もいるでしょう。人によってさまざまだとは思いますが、それでも「存在する」のは確かです。

日頃から、仕事に対して目標志向で活動できる人は、とても成長が早いと言うデータもあります。なぜなら、どのタイミングで、どんな状態に成長するかを決めてさえしまえば、あとはどんな方法であれ、その通りになるよう迷わず行動し、行動しさえすれば、さらに努力することもできるようになるからです(行動に起こさなければ、努力のしようもありませんよね)。


未来を見据え、未来を言い当てる人は大別して2種類のタイプがいます。

一つは、現状や周囲の動向などの情報を集め、整理し、分析することによって予測するタイプです。自らも関わってはいるのでしょうが、どちらかと言うと、流れを読んで言い当てるタイプであり、自らの行動によって引き寄せているわけではありません。

そしてもう一つが、計画を理想とし、計画通りに遂行できるよう努力し、自らの望む未来像をつかみ取るタイプです。本来、「計画」を主体とするマネジメントとはこちらのタイプのことを言います。

ちなみに、私は両方使うタイプですかね。50:50というよりは、それぞれに全力を傾け、それでも100にすることはできず、70:70くらいで当初の計画に近づけるマネジメントを行います。えぇ、何かと器用貧乏なもので。

これに対して、

 「未来はどうなるかなんてわからないから、計画なんて不要」

という言い訳をする人は、自らの力で、自らの望む未来を掴む実力や努力が不足しています。ですがそれは、あらゆるデータからゴールを予測するでもなく、ゴールを設定してそのゴールに向かって邁進するでもなく、ただただゴールを定義することの責任に恐れをなして、闇雲に進んでみようとしているにすぎません。

IT業界にいるエンジニアであれば、多少は理解できるのではないでしょうか。予測不可能な問題ですらも起こることを想定して例外処理を組み込んでおく、プログラミングの考え方があれば、

 (正常系)予測する通りに実現する未来

しか計画しない…なんてことは絶対にしません。常に相対する

 (例外系)予測する通りに実現しなかった場合
    ├ Aパターンの場合
    ├ Bパターンの場合
    └ それ以外の場合

と言ったように、起こりうる不確実なパターンを網羅し、それぞれのシチュエーションごとの対策も講じておき、あわよくばその際の異常処理まで組み込んでしまっておこうと、普通にエンジニアリングがわかっているなら必ずします。

「計画なんて立てるだけ無駄」「計画通りになんてならない」と言う人たちは、この例外系のシチュエーションを想定せず、またそうなった時用の計画を立てようとしないだけなのです。

だから、「計画」そのものの価値が低下する…。

未来は確かに不確定で予測不能なものも多いのも事実ですが、だからと言って私達まで不確定なものとしてとらえる必要はありません。どのルートのどんな状況になっても、それが計画の示す「想定の範囲内」となるように過去の経験や歴史から「リスク」として管理し、対策を講じておけばいいだけのことです。


多くのマネージャーは「自分ごと」化できていない

そう言った、目標を中心に据えて運用できるマネージャーの中でも、さらに優れたマネージャーと呼ばれる人たちは、

 「どうやったら目標を達成できるのか」
 「自分がやるとしたら」
 「もっと良い方法はないか」

と言ったことを自分が中心になって活動することを前提に模索するそうです。もちろん、現実として活用できる既存リソース(環境、人員、予算、時間、etc.)を正しく把握し、且つそれらに大きな負担を負わせるだけにせず、最適なマネジメントによって、最高のパフォーマンスとなるようコントロールできなければ、ただの絵に描いた餅にしかなりません。

多くのマネージャーは残念ながらここまでしません。
頑張ればできるのかもしれませんが、やろうとしません。

多くのマネージャーは、役職があがり、役割が変われば変わるほど、

 ・過去からの自分を変えられず、自分で全てを抱え込んでしまう
 ・部下を顎でこき使う立場か何かと勘違いして、すべてを丸投げする

のどちらかに陥ってしまって、「自分で」考える時間を作らなくなってしまいます。多くのメンバー、多くの部下が増えれば増えるほど、実務に関する責任能力が衰えるのはそのためです。

管理職という立場にあたる「部長」が、プレイヤーとして果たしている役割は現状でどの程度かを尋ねた。「プレイヤーとしては動いていない」を0%とし、10%刻みで回答を求めたところ、「まったくない」との回答は、わずか4.2%に留まる結果となった。つまり、部長職のほぼ96%もの人が、本来の業務であるマネジャー業務と現場でのプレイヤー業務を兼務するプレイングマネジャーとして稼働している現状が明らかになった。

また、業務内容にも目を向け、加重平均を算出したところ39.9%となった。つまり、部長が抱える業務のうち「プレイヤーとしての仕事」が約4割を占めているということになる。

海外については詳しく知りませんが、記事にもあるように日本の場合はマネージャーと言うと、ほぼプレイングマネージャーのことを指します。課長クラスまでなら、十中八九実務を担いながらマネージャーをしているかもしれません。ITの業界の場合は、管理職になると技術からどんどん離れ、営業しかしない/できない人になっていく傾向もありますね。だから、

 ・部下に(技術的な/ビジネス的な)指導ができない
 ・営業活動にばかりかまけて、殆ど社内にいない

と言う現場も少なくないと思います。そのせいで、せっかく夢を持って入社してきた新人たちも、よほど事情がない限り、

 「上司に期待しなくなる」
 「独学で開発の進め方を学ぶことができず、
  30代になっても40代になっても、小粒な作業員のままになる」

と言ったことが起きます。

昨今、「他人ごと」と対になる「自分ごと」で考える、あるいは仕事をすることが巷では推奨されており、多くの講演やセミナーなども開かれているようです。

まぁ、マネージャーを担っている人が一番「自分ごと」化できていない気がしますけどね。マネージャーが自分ごと化できていないような状態の温度感で部下やメンバーに何を言っても、部下もメンバーも自分ごと化できるはずがないのですが…。

考えても見てください。

現実問題として多くの部下やメンバーは、上司やマネージャーに『ついていこう』と言う考え方を持ちがちですよね。まさか『上司やマネージャーの前に立とう』なんて考えていません。にも関わらず、上司やマネージャーが「他人ごと」のように考えているのですから、部下やメンバーもそれに倣えば、同じ「他人ごと」になるのは自明の理です。

そして、未来の状態を自分ごとのように見ることができない人は、

 ・その場の思い付き、好き嫌いで行動が変わる
 ・感情や気分に流されやすい
 ・努力の方向性が定まりにくく、無駄が多くなる
 ・挙句、上手くいかなければ、他人ごとのような言い訳や保身に走る

と言った状況を生み出します。

そして、まさにマズいマネージャーとは、この点が非常にマズいのです。この「他人ごと」意識のマズさは、『運』に頼る以外では、まず間違いなく失敗する結末しか見えません。

どんなに学歴が優れていても、どんなに個人能力的に優秀であっても、どんなに人当たりが良くても、どんなに周囲から好かれていても、ゴール志向で語れないマネージャーは、人の上に立つ立場…すなわち『上司』として組織を運用する力がありません。

けれども、古き良き日系企業の多くは、未だ年功序列を捨てきれず、社内政治に優れたものを評価し、

 「結果」に対して、個人が具体的にどのような貢献をしているのか

と言う観点で人事を行おうとしません。「負担が大きい」「定量化できる数値が無いと」そういった言い訳の結果、正当な評価が行われず、毎年、毎月、毎日どこかで問題を起こしている管理職や経営者が後を絶ちません。


目標志向になっているかどうかの判別方法

具体的には、何か取り組む業務が1つあれば、それに対して

 「いつまでに、どんな状態にするのか」
 「そのために、どんな行動を起こさなければならないのか」

と聞いてみれば、即判別できます。
この質問に対し

 「○○をやります」
 「今、○○をやってます」
 「○○がしたいと今検討中です」
 「○○しなきゃいけないと思ってます」

と言うように、ゴールを語れず、スタートや直近の状況から語りだす人は、まず間違いなく現時点で優れたマネージャーの素養が、現状では及第点に至っていないと断言せざるを得ません。仮に、今後改善される可能性があるとしても、直近での解決は難しいでしょう。

そして、ゴールが語れないと言うことは、すなわち"精度の高い計画も立てられない"と言うことです。

ゴールをまず定義し、そこから逆算して必要なものを洗い出し、その延長線上に、現在「何をすべき」かが語られなければなりません。それこそが"計画性"です。

とは言え、計画性がなければ、必ずしも失敗する…と言うわけではありません。野生の勘が働いて、反射神経だけで苦難を乗りきれる人もいるでしょう。もちろん、それができるのは一握りの才能あふれる人たちだけかもしれませんが。

ですが、個人プレーであればそれもいいでしょうけど、リーダーが行き当たりばったりでしか判断、指示できないのであれば、その下に就いているメンバーは相当大変な想いをしてきたことになります。少なくとも、上場企業に対し、証券取引所も金融庁も、そして投資家の方々も、「未来予測が難しい」という一点において、最も嫌うタイプではないでしょうか。


「計画」は、ブルーオーシャンにせよ、レッドオーシャンにせよ、これから大海原へと航海に出る際に持つべき"地図""測量機"そして"羅針盤"のようなものです。

何も持たずに出航すれば、遭難するのは当然です。
一度出てしまえば、地図や予想通りの航海にならないこともあるでしょう。

だからと言って何も持たずに、何も考えず、無計画で、何の準備もせず、その場の思い付きや好き嫌いで海に出ようとする船長に、みなさんが船乗りや乗客だとしたらついていきたいと思いますでしょうか?

できれば、何事も起きないように安心してついていけ、しかも何事かあったとしてもその殆どが想定内にあって、臨機応変に対処し、全員を無事に目的地まで連れて行ってくれる船長についていきたくはないですか?


IT業界に求められるマネージャー

IT業界…特に私たちのようなB2Bビジネスを中心とするソフトウェア開発においては、基本的に『全く同じものは2度と作らない(独自性)』と言う特性がある制約上、そのマネージャーや管理職は、常に「未知の大海を渡る船長」のような存在でなければなりません。

 常に同じ道になることはなく、
 同じ道であっても常に安全と言う保証もない

まったく同じものを大量生産できる製造業とは、その点で大きな隔たりがあります。

目的意識や目標意識を持たず、その場その場でやりたいことをやりたいように振る舞うと言うのは、ただ感情の赴くままにあちらへふらり、こちらへふらりとウロウロしている子供と大差ありません。そう言った幼い感情を残したまま大人になった人も、決して少なくはありません。なかには、「お客さまにそういう人がいた」と言う人もいるのではないでしょうか。

そして、いい歳した大人である私たちが、子供のような無邪気さを先頭にしてビジネスすることの危険性は、言わずもがな想像に難くないと思います。

もし将来、優れたビジネスパーソンになりたい、あるいはビジネスパーソンを取りまとめる優れたマネージャーになりたいというのであれば、仕事の未来…すなわち「目標」は、日頃から次のように語るよう訓練すると良いでしょう。

 「〇〇(いつ)までに、△△(どんな状態)にします」
   ├「その実現のために、□□を進めます」
   └「その実現のために、□□を新しく導入します」

これからやる事を語る前に、まずゴールを決め、現在のスタート地点からゴールまでの過程上に必要なコトをやっている…と説明するのです。それが説明できないものは、原則としてROI(return on investment:投資利益率)から外れたものにしかなりません。

ここで言う投資や利益とはお金だけのことではありません。

費やした時間や投入した人的リソースなど、資源全般と考えてください。ひょっとすると巡り巡って「やっておいてよかった」と呼べるものが出てくるかもしれませんが、「かも知れない」を根拠にやっていいことではないのです。

 「これから行うことは何につながることなのか?」

このトレーサビリティがわからない人が、昨今にぎわせる"バイトテロ"のような、その場限りの欲望のままに行動し、あとで後悔することになるでしょう。

 常に先を予測する
 常に
先を見据えて、実現する

そんな当たり前のことが理解できて、実現できるそんなマネージャーに、みなさんはなりたくありませんか?

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