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「教育」に対する学生と社会人にある深い溝

とりあえず超ブラックな企業は参考にならないので置いておくとして、大抵の場合、どこの企業でも

 「新社会人の扱い」はあまり大差がない

と言うのが、世間一般の認識です。しかし、実際には企業ごとあるいは部署ごとに細やかな教育を施していたり、フォローをしていたりと見た目以上に差があるものです。私も、新人教育をする際には、1週目からかなり内容の濃い情報(下図、A-01~A-04)を取扱います。

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また、これらの内容に沿って、およそ3年ほど継続してフォローします。いや、フォローと言っても支援…と言うよりは普段から気にかけて、ことあるごとに忘れてないか話しかけたり、仕事に活かすシーンを教えてあげるだけですけど。

だいたいこれらをすべて印刷すると、5cmのKINGファイルでギッチギチになるくらいです(いや、毎年徐々に書き加えているから、もう入りきらないかも…)。ちなみに、3ヶ月の期間を想定した教育資材になっています。

コンセプトは「3年は読みなおして使える若年層用バイブル」です。

1回聞いただけで、記憶に依存する教育なんて、あっという間に風化します。だから私は、講義前に全員に印刷して配り、KINGファイルに閉じておくように指示しています(教育そのものは、PCと電子ファイルで行うんですけどね)。そうすることで、

 ・OJT/実務で困った時
 ・忘れてしまった時

にもう一度見直すことができます。何度も誰かに確認しに行くようなことをしなくて良くなります。


まぁこれはあくまで私の場合の事例ですが、どんなに豊富な知識を植え付けることができようと、ただ量が多いだけでは、教育として十分ではありません。

必要な「情報」であったとしても、目的もなくただ垂れ流すだけでは、その情報を吸収した側(新入社員)の意志や判断に依存してしまって、必ずしも企業が望む社員に育つとは限らないからです。

社員教育には「社員を成長させる」と言う明確な目的に従って行わなければならない絶対的な指標がありますが、同じ教育であっても、学校や塾とは根本的に異なる部分があります。それは

 "会社の利益につながらない教育"は、教育になってない

と言うことです。つまり、”費用対効果”の問題として、教育した結果、教育を受けた者は、必ず企業にとって利益をもたらしてくれなくては意味がないのです。

学校の先生は、そこまで追い詰められて教育することはまずありません。

もちろん成績によって自分の評価なども変わってくるでしょうから、成績を上げてもらう努力はするでしょう。しかし、上がらなくても即クビになることはありませんし(私立は別?)、その点で企業の教育担当者とは心構えや覚悟のスタートラインが異なります。多くの企業でも、育成結果がなかなか評価に関係しないからと言って、疎かにしている上司も多いと思います。

社会人になってからの教育は、教える側だけでなく、それを受ける側にも同じだけの責任が圧し掛かります。学生の頃は、授業中に居眠りをしていても勉強を放棄していても、テストでいい点数が取れなくなるだけ、内申書の評価が下がるだけで、希望のキャリアパスに影響を与えないのであれば、自己責任の範疇でなんとかなりました。

しかし、企業に属してしまうと経費や予算といった「お金」に関わる様々なことに対して、常にシビアに考えられるようにならなければなりません。考えられなければ、企業にとって存在価値が大きく低下してしまうからです。生活のために就職したのであれば、その生活を脅かすことになりますし、立身出世が夢なのであれば、その夢を脅かすことになるでしょう。

研修や講義があって、参加しない、聞く耳持たないという姿勢は「企業貢献する気がないヤツだ」と思われるだけなので、まだ個人の責任で済みます。ですが、参加している以上、その時間は経費がかかっていて、且つ業務が進んでいないため売上が発生しません。『人件費』というコストだけ積みあがっていくことになるのです。

であれば、その経費分の利益をその後に提供できるレベルにまで何らかの形で成長しないと、教育するだけ無駄な人材だったと言う扱いを受けることになります。価値がゼロと言うだけならまだしも、マイナスとなるようでは企業としても扱いに困ります。そう言った意味からも、既に学生と社会人の違いは顕著に出てきているのだと認識しましょう。

給料をもらうのであれば給料分、経費がかかるのであれば経費分は「最低でも」成果をあげなくては、責任ある社会人とは言えません。何に対して給与が支払われているのか、しっかりと意識しておく必要があります。

とは言え、新入社員~若手社員と呼ばれているうちは、企業側の先行投資として経費を見ていますから、将来的に仕事の成果で還元できるようになっていけばいいと考えられがちです。

問題は

 いつから企業に利益をもたらす社員となれるか?

というビジョンを明確に持つか/持たないか、の違いではないでしょうか。これを持てない社員はいつまで経っても自分が企業にとって、あるいは社会にとって有益な人物かどうかを判断することができません。

この判断は後々非常に重要となってきます。

たとえば、結婚などの家庭を持つ基準社会的評価を受ける基準、なんだったら転職する基準にも用いられるでしょう。企業内評価、社会的評価が低い状態では、当然待遇や賃金などにも影響を与えます。生活充足度にも影響してくることでしょう。

こうした学生時代には決して考えもつかなかった「取り巻く環境に自分自身を適合させるための計画と努力と評価」について、真剣に考え、悩み、実行していく(いかざるを得ない)状況になっていくことも、また1つの学生と社会人の大きな違いと言えるのではないでしょうか。

この辺は、日系企業も外資企業もそう大差ないと思います。日系企業は未だに終身雇用の夢から覚めていない会社も多いので、外資系企業の方がシビアかもしれませんね。

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