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飲食業で繁盛するのか否かは、厨房の位置とレイアウトに影響されます。意図的に戦略的に厨房を活用しましょう。

宇宙一外食産業が好きな須田です。

新年1本目の記事です。

新年あけたばかりですが、今年は不動産が非常に多く市場に出回ることが予想されます。

何故かというと、コロナの影響から事業継続を断念せざるを得ないお店が多数あり、それらの多くが撤退を余儀なくされ、残念なことですが物件を手放すことになりそうです。

居抜き物件も多数有りますが、最近はスケルトンの物件が増えてきているように思います。

サブリースをする企業が増えたことに対する懸念からなのか、スケルトン物件が増えているように思います。

今回この記事を書く理由は、不動産市場が活況となるにしたがって、居抜き物件も多数出回りますが、繁盛店になる要素が少ない厳しい物件を入手して欲しくないので、記事にすることにしました。


そこで、今回は厨房のレイアウトを決めると時の、厨房機器のレイアウトの基準についてお話しをします。

現在弊社では、複数の案件を同時進行で進めています。

業態は多枝にわたっていますが、当然のことですがそれぞれの業態には厨房が必ず存在しています。

現代の繁盛店作りの理論においては、厨房は調理をするスペースという以上に、非常に大きな意味あいがあります。

単に調理をするだけの意味付けから、お客様に何をメッセージとしてお伝えするスペースなのかが、大事な時代となっています。


業態によるそれぞれの特性もありますが、コンセプトの方向性による特性も存在しています。

それらの各特性を基準にして厨房を考えていきますが、この時に明確な基準を設けること、調理作業を見せるのか見せないのか、厨房の作業効率とホールとの連動を考えて、厨房の位置と厨房をオープン型とするのか、クローズ型とするのかを決めて行きます。

案件により表現しなければならないそれぞれ特性は変わってきますが、共通することも複数存在します。

では、いくつかの基準をご紹介します。

最初に、厨房の位置について。

多くの方が厨房の位置取りで悩まれます。

一般的に多いのは、ビル側の排水設備の設置位置によって、厨房の位置を決めるパターンです。

これは、施工業者の方がアドバイスをするケースが最も多いのですが、排水設備を基準にして厨房の位置を決めることをアドバイスします。

理由は、排水経路が長くなると施工費が上がることを理由にして、厨房の位置を決めるようにアドバイスを行います。

この考え方も間違ってはいませんが、時にはこの考え方がダメなケースが有ります。

実はこのダメなケースは、居抜き物件で頻繁に目にするケースです。

感覚的にですが、居抜き物件の40%程度は厨房の位置が悪くて繁盛店にはなれないケースが有ります。

本来お客様が入店したらすぐに業態の臨場感を伝えたいとか、元気にお迎えの声をかけたいところなんですが、入り口から厨房が見えない、もしくはお客様が入店したことがなかなかわからないパターンが有ります。

この場合、一瞬で業態をご理解いただくことも、お客様を不安にさせないことも出来なくなってしまいます。

業態のノリと特性を理解できないので、オーダー誘導もスムーズに起きません。

入店して即座に「いらっしゃいませ」の声がかからないので、お客様は一瞬不安になってしまいます。

これらは、初頭効果が効果的に発揮されていないので、お店とお客様との間に溝が出来てしまいます。

初頭効果とは、最初に受けた印象が、後々まで影響を及ぼすというものですが、最初に良い印象を提供できないと、お客様はその良くない印象を基準にお店を体験することとなります。

するとマイナスの印象から、プラスの体験にするための作業が必要になってきます。

この作業は本来やらなくて良い作業なので、無駄な作業と言えます。

ですから、厨房の位置は作業効率の点も勿論ですが、この初頭効果を考えると非常に重要になってきます。

次に、オープンにするのかクローズにするのかですが、現在繁盛店の多くはオープンキッチンになっています。

クローズキッチンは、客単価の高い業態に多い傾向があります。

先日もクローズキッチンの焼肉業態を視察しましたが、客単価は12,000円でした。

客席の落ち着き感を表現したい時にはクローズキッチンにするようにします。
業態特性とノリを前面に出したいときには、オープンキッチンとなります。

以上2点を踏まえると、居抜き物件で繁盛を考える時に最も厳しいのは、厨房の位置が悪いクローズキッチンの客単価5,000円以下の業態です。

このパターンで出店する時には、大幅な改善を必要とします。

すると、居抜き物件の利点が消滅してしまいますが、出店立地さえよければ考慮する物件となります。

大幅な改装費用が発生しても、出店立地が良くてマーケットが潤沢ならば出店しても良い物件となります。

逆を言うならば、以前の出店者はこのポイントを改善しなかったので、繁盛しなかっただけかもしれません。
繁盛ポイントをしっかりと立てることが出来れば、その居抜き物件は復活するということです。


昨年も内見同行をした物件がありましたが、この厳しいパターンの物件でした。

私は、入った瞬間にこの物件はスルーすることをおすすめしましたが、クライアントはなぜ一瞬で判断できたのかが不思議だったようです。

クライアントは、数週間悩んでいたそうなので、私が一瞬で判断してしまったことが不思議に映ったそうです。

そこで、そのクライアントが望んでる業態コンセプトを明確に説明して、実際のオペレーションで起こりうるマイナス要素を解説したところ、ご納得いただけました。

お客様の入店が厨房からは解からないこと、その為に必ずホールに余分に人を貼り付けておかなければならいこと、即ち不必要な人件費が発生すること、業態の臨場感が伝わらないこと、厨房から客席が見えないので、タイムリーな対応が出来ないことなどを解説しました。

その結果、厳しい状況になった以前の業態は、居抜きで手放すことになったと解説しました。

これらを改善するためには大きな投資を覚悟する必要がありますが、すると事業予算を大幅に超えてしまいます。


実はこの物件は居抜きとして、今回で4回目の販売となります。
これまでに、3回の繁盛できなかった業態があったということです。

最初に作った方が間違った厨房をつくってしまい、2回目3回目とその間違った厨房のまま営業をして、今回4回目の販売となってしまいました、ということです。

このケースが多いのが、実は居抜き物件の現状です。


次に、厨房機器のレイアウトです。

厨房機器のレイアウトが最悪な厨房も、頻繁に目にします。

これまで多くのチェーン展開している業態をサポートさせていただいました。
ある程度フォーマットを決めてチェーン展開されている業態でさえ、厨房レイアウトを改善してきました。

機器の並びは勿論のこと、どの作業を最初にお客様に訴えかけるのか、効率的に作業内容を絞り込み、どの厨房スタッフにどの作業をして頂くのかを決めて、厨房機器のレイアウト変更を行ってきました。

優先順位を決めて、どのようにすれば業態の特性が強く打ち出すことが可能となり、ライブ感が最大化出来、調理作業が絵になるのかを考えて厨房機器のレイアウトを行っております。

見せたいものを前に持ってきて、優先順位の高い作業を見える位置にして、見せたくないものを奥に隠すようにします。

その時に、最も大事なのは見せる作業です。
この見せる作業が初頭効果となり、オーダー率に直結してきます。

ハンバーグの専門店では、入店してすぐにハンバーグを焼いているのを見せます。
お寿司屋さんでは、入ってすぐにカウンターがあり寿司を握っている職人さんが見えます。
ラーメン屋さんは、入り口の正面に麺上げが見えるようにしています。
純喫茶では、マスターがハンドドリップで珈琲を淹れている姿が見えるようににします。

この様に、業態の最も華となる作業を見せることが、大事になってきます。

次に厨房機器のレイアウトで大事なのは、右手と左手の使い勝手です。
私が若かったころに関わった案件で、左利きのシェフのお店を担当したことがありました。

私と初めてお会いした時に、シェフがペンを左手で持っていたので左利きだとすぐに理解出来ました。

シェフが右利きであると、先入観を持った厨房メーカーが書いたレイアウトを全て逆にしたこともありました。

その図面を見た瞬間、左利き仕様にレイアウトを全面変更しました。
右利きの場合、通常は左手でフライパンを振ります。
左手でフライパンを持ち、右手で食材を食器に移します。

すると、左サイドにフライパンを洗うシンクが有ると、盛り付けたその流れでフライパンを洗うことが出来ます。

これが、右側にあると、フライパンを洗うために、シンクがある右側まで移動しなければなりません。

この移動する時間が無駄であり、調理効率が下がり、この作業が疲労につながります。

左右どちらに何を設置するのか、それぞれの手をどのように動かすのか、その場ですむことなのか、前後の動きとなるのか、横の動きとなるのか、前後も大事ですが、当然上下も考えるようにします。

下には何を置いて上にはどのような機能を持たせてと言う風に、限られた空間を最大限に活用するようにします。

間違っても、“他に置くところが無いから”と言った理由で、厨房レイアウトをすることはありません。

この、ほかに置くところが無いからという理由で、厨房機器のレイアウトをされてしまっているお店を、多く見かけます。

厨房機器のメーカーの設計担当者は、業態を深く理解していることはほぼありません。
業態コンセプトも提供商品も不明確なまま、機器を並べていることがほとんどです。

コンセプトと提供商品が解らなければ、本来厨房機器のレイアウトは難しいと思いますが、残念ながらそこまで詳しく突っ込んでくる厨房機器メーカーの設計者は出会ったことがありません。

ですから、出店者自らが厨房機器のレイアウトに関しては、行うことをおすすめします。

業態を一番よく理解しているのは、出店者ご本人ですから。

どこをアピールするのか、どの作業を見せるのか。
ビジュアルも大事ですが、音も、匂いも考慮して、見せる以上のことを行ってください。

炎を見せること、音がすること、匂いがすることなどは、私は一般的に取り入れていることです。

五感を刺激する厨房をつくることで、業態特性は強く伝わります。

戦略的に意図的に厨房を活用しましょう。

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