見出し画像

見せメニューが繁盛店を作る

宇宙一外食産業が好きな須田です。

さて、前回の続きの売らない・売れなくてもよい見せメニューをあえて作るというお話しです。

この考え方は非常に特殊な考え方に見えますが、しかし、繁盛店を分析してみると、この売らないメニューと売れなくても良いメニューが存在している場合が非常に多く見受けられます。

集客商品が圧倒的に売れているので、売らない商品と売れなくても良い商品が出来ているように感じられますが、実際に集客商品のオーダー率が高いのは、これらの見せメニューの存在が寄与している感はあります。

厚切りのポークジンジャーが有名な洋食レストランには、生姜焼きセットがあり、濃厚魚介豚骨ラーメンがウリのラーメン屋さんには、あっさり醤油ラーメンがあり、本格四川麻婆豆腐で集客している中華レストランには、辛さ控えめな麻婆豆腐があります。

このように、圧倒的な集客商品がある繁盛店は、集客商品と比較できる商品を置いている場合が多いです。

あえて、比較する商品を置くことによって、集客商品が際立つ作用を引き起こしています。

さて、ここからは、あえて売らないと売れなくても良い商品を置く利点を解説して行きたいと思います。

通常はメニューを開発する時、全ての商品を売れるように考えて商品開発をしますが、それでは消費者は何が一番のおすすめなのか、何が自信をもってお店が提供しているかがわかりにくくなります。
ですから、あえて売らないと売れなくても良い見せメニューを置くことが繁盛ポイントとなります。

では、具体的な利点を解説していきます。

利点 1 オーダーを集中させられる。
集客商品と比較検討できる商品を置くことによって、意図的に集客商品にオーダーを集中させられる。
オーダーをコントロールすることが出来、何がおすすめなのか、どの商品が一押しなのかが消費者に伝わりやすくなる。

利点 2 仕込み作業が軽減できる。
オーダーをコントロールすることによって、集客商品の仕込みに作業比重を集中させられる。

オーダーが分散する場合は、仕込み量もそれに合わせてコントロールすることが必要となるが、オーダーをコントロールすることによって仕込み量をコントロールできる。

利点 3 原価コントロールが容易になる。
当然扱う食材の量も増えるので、食材仕入れもコントロールが可能となり、ロスを軽減することが可能となり、廃棄ロスなどが無くなり原価コントロールが容易になる。
又、ある特定の食材の取扱量が増えることに、値段交渉も可能となり、原価を引き下げることも容易になる可能性がある。

利点 4 ブランディング戦略
あえて見せメニューを作ることにより、集客商品にオーダーを集中させることにより、専門店としてのブランディング戦略が可能となる。
消費者に店名を覚えてもらうのではなく、○○の専門店として認識されるようになり、商品=お店として認識されるようになる。

利点 5 お客様が迷わなくなる。
見せメニューを置くことで、容易に比較検討が出来て、お客様が瞬時に何がお得で何がおすすめなのかが理解でき、迷わなくなり自然とスムーズにオーダーを促すことが出来る。

利点 6 スタッフのおすすめ作業が楽になる。
ホールスタッフも、見せメニューを置くことによって、見せメニューよりもおすすめの集客商品の方が美味しいとかおすすめであるとかお得であるとか、セールスに迷うことがなくなり、おすすめ作業がスムーズに容易になる。

見せメニューを置くことには、ざっとこれだけの利点が考えられます。

見せメニューを置くことによってオーダーコントロールが容易になるということには、仕入れに始まり、仕込み作業からセールス、そしてブランディングにおいて多くの利点が発生します。

仮に、見せメニューが無い場合は、おすすめ商品の美味しさや特徴、お得感なりが比較できないので、オーダーが分散する可能性が高くなり、その結果、調理作業が大変になり、仕入れ価格の交渉が出来なく、仕込み作業も分散してセールスも集中できなくなる。

見せメニューの存在は、ブランディング戦略のみならず利益確保と作業軽減のためには必須のメニュー戦略と言えます。

何より、お客様を迷わすことなく一番の商品へスムーズに誘導することが可能となり、最大限の価値を提供できるという利点があります。


お客様は何かの商品を選択する場合、必ず基準となる比較対象となる商品がある方が、決めやすいという心理が存在する為です。

比較することで、利点が明確となり、オーダーする理由がハッキリとして、意思決定が早くなる利点があります。

又、商品選択に対する、疑念・喪失感・後悔などの考えや感情を解消もしくは軽減できる作用があり、自己説得効果が高まる傾向が強くなります。

ここで大事なポイントをお伝えしたいと思います。

比較対象の商品は、集客商品よりも価値を下げる場合と、圧倒的に価値を上げる場合の2種類あります。

例えば見せメニューの価値を下げた事例ですが、先ほど紹介したポークジンジャーの例でいうと、ポークジンジャーは銘柄豚の厚切りロース100gを2枚使用したボリューム感タップリの商品ですが、見せメニューの生姜焼きセットは、同じ銘柄豚のロースを使用し、3ミリの厚さにカットした60g程度の肉を3枚使用した商品となっています。
価格はポークジンジャーが¥1,200で、生姜焼きセットも¥1,200です。

商品名も、厚切りロースのポークジンジャーと薄切りロースの生姜焼きセットとなっており、商品名からも価値の違いを感じられようにしております。

オーダー率は、3対1となっています。

価格が同じなら、よりボリュームがあり食材の価値が高い方にオーダーは流れます。
生姜焼きセットの3倍ポークジンジャーは売れていますし、雑誌にもポークジンジャーが美味しい洋食レストランとして掲載されており、度々テレビにも取り上げられております。

薄切りロースの生姜焼きは、年配者のオーダー率が高くなっており、特定の客層に受け入れられているメニューとなっており、戦略的に扱われております。

次に、以前紹介した刺身居酒屋では圧倒的な集客商品は¥800の本鮪のブツでしたが、見せメニューとして用意しているのは、本鮪の中トロ刺身¥1,600と本鮪の赤身の刺身¥1,200です。

消費者の心理としては、本鮪の中トロの刺身に¥1,600も出すのなら、同じ本鮪の大トロのブツ¥800が半分の価格で食べられ、しかも中トロではなく大トロならば、それで十分と感じて価格と価値の高い本鮪の中トロの刺身ではなく、お手頃な価値を感じる本鮪のブツにオーダーが集中します。

本鮪の中トロは特選刺し盛り8品盛に入っているので、本鮪のブツを楽しんだ後に刺し盛りをオーダーする流れとなっているので、中トロもロスなく消費されております。

因みに、この刺身居酒屋の刺し盛りは、人数によって売価を変えています。
二人前盛は¥3,000、三人前盛は¥4,500、四人前盛は¥6,000です。
シッカリと利益を確保している利益獲得商品となっています。

これも、見せメニューの¥1,600の中トロの刺身があるので、¥800の本鮪の大トロのブツで十分と感じ、¥1,600の2倍はしない二人前の刺し盛りの方が、刺身が8品もついてお得感を強く感じるメニュー構成となっています。

圧倒的な比較商品を置くことによって、消費者には容易にお得感を強くアピールすることが可能となり、ブランディング戦略も容易になり、商品戦略もピッタリとはまります。


メニュー戦略で大事なのは、何を売って、何を売らないかを決めることです。
経営者はどうしても全ての商品を売りたくなりますが、全ての商品が満遍なく売れることはありえません。

どちらかというと、満遍なく売れることの方が大きな弊害が産まれます。

仕込み作業が多くなり、冷蔵庫もパンパンになり、オーダーも分散するので人員も余計に必要になり、提供数も増えてホールオペレーションも煩雑になります。

売るものを決めて、売らないものを決めて、売るものと売らないものは食材ミックスにより原価コントロールとロス軽減を図り、作業効率を上げて冷蔵庫管理も容易にするようにします。

店舗の営業は毎日のルーティン作業です。
出来る限り標準化して、再現性を高めて、安定して消費されるようにすることが飲食ビジネスでは重要になります。

私は、刺身居酒屋などの鮮魚を扱う業態の場合は、グランドメニューには魚種を謳わないようにします。
メニューは黒板にてプレゼンテーションをして、おすすめとして刺し盛りを提供する場合がほとんどです。

魚種だけ書いて、刺身にしますか、焼魚にしますか、煮付けにしますかと、調理法までその場で対応するようにすることもしばしばあります。

特定の魚種をグランドメニューに書いてしまうと、その魚を何が何でも仕入れなければなりません。
鮮度がどうであれ、状態がどうであれ何が何でも仕入れなければなりません。

それよりも、今日一番の出物を仕入れて、鮮度も良く仕入れ値も落ち着いている旬の魚を仕入れた方が、お店にとってもお客様にとってもより価値の高いことと考えております。

牡蠣の専門店のお手伝いをした時も、時期によって仕入れる港が違っていたので、グランドメニューには謳わずに、黒板で対応しました。


その方が、お客様には正直な商いをしている印象を持っていただきやすいです。

大手居酒屋チェーンの様に冷凍の魚を解凍した刺身を提供されることと、鮮度抜群の旬の魚の刺し盛りを提供されるのと、どちらにどのような価値を感じるかの違いだと考えております。

大手居酒屋チェーンの価値も必要ですし、専門店や個人店の商品価値も、飲食業にはどちらも必要な価値です。

見せメニューを置くことで、消費者によりわかりやすく価値を伝えることが容易になり、販売戦略も明確でシンプルとなり、ブランディング戦略もブレが無くなります。

何を売って、何を売らなくても良いか、消費者が感じている価値を基準に再考してみてはいかがでしょうか。

あなたのお店の存在が圧倒的なポジションに変わるかもしれません。

次回は、今日のブランディング戦略に関係した、そもそもの店舗コンセプトについてお話をしたいと思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?