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今回紹介する内容は、売れない料理を、‟売れる商品”に仕立て上げる方法です!

宇宙一外食産業が好きな須田です。

昨年ですが、チェーン展開する焼肉屋さんの開業サポートを、続けざまに数件させて頂きました。
その際に、お通しで「無限キャベツ」というものをご提案させて頂きました。

結果的に、このお通しが客単価を引き上げることになったのですが、開発段階で起こったことをご紹介させていただきます。

おそらく同じようなご経験をされている方が多いと思います。
と言いましょうか、この現象は頻繁に目にするので、ご紹介します。


この焼肉業態は、居抜き物件の有効活用をテーマに開発した案件です。

居抜き店舗のファサードを変更して、集客力を上げて、業態が何なのかを一目で理解していただけるように改装をしました。
内装も明るくて、元気と活気と新鮮さを感じていただけることをテーマに改装をしました。

特にオープンキッチンを重視しました。
このお店の作りは、オープンキッチンの前を通って席にご案内するレイアウトになっていましたので、ライブ感を感じて頂けるように、手直しをしました。


商品開発の段階で、タレの問題に行き当たりました。


このタレは、あるPBメーカーさんのオリジナル商品で、都内の有名老舗焼肉店で30年継続使用されているタレでした。

その老舗店は、山形牛を中心に和牛・国産牛を取り扱う客単価10,000円ほどの業態です。

従って、タレもそのクラスのお肉に合うようにブレンドされており、銘柄牛・和牛の肉質と脂を考慮し、言うなれば上品な仕上げのタレとなっていました。

一方、私がお手伝いをした焼肉業態は、洋牛をメインに扱い上位クラスのメニューに国産牛が少しだけ有る、客単価5,000円の日常使いの、使い勝手が良い業態です。

一般的に焼肉業態は、一つの大きなカテゴリーで捉えてしまいがちです。
しかし、業態特性を分析するといくつかに分類されています。
詳細は弊社のHPをご覧になっていただけると、ご理解いただけると思います。




私がお手伝いをさせて頂いた焼肉は、「焼肉居酒屋」
一方、老舗の焼肉店は「焼肉専門店」 その中でも高級業態になります。

顧客層も違い、扱っている肉質も違い、そもそも牛肉そのものが持っている旨味成分が全く違います。

銘柄牛・和牛を扱う場合、その牛肉が持っている旨味を殺さないこと、旨味を引き立てることを目的にタレは開発・選択されます。

洋牛をメインにする場合、牛肉が持っている旨味は、和牛と比較すると圧倒的に少なくなります。
タレによって、その少なくなった旨味をプラスする作用が、このクラスの肉を扱う業態では、絶対に必要な要素です。

そこを無視して、この時のクライアントはPBメーカーが提案したタレを、採用すると決定してしまいました。

この件に関して何度も協議を行いましたが、お考えが変わることはありませんでした。

実際に店舗で使用する肉を、サンプルとして取り寄せて、いくつかのタレも用意して試食会を行おうとしましたが、用意したタレを見て、
「こんなどこにあるようなタレなら、試食会はやらなくてもいいよ」と、試食会が中止になってしまいました。

この時、クライアントが素晴らしいことをおっしゃいました、
それは、

「1回来てタレが美味しくなかったら、もう2度と来てくれなくなるよ」

と、素晴らしいお答えをおっしゃいました。


さて、いよいよオープンすることとなり、関係者も含めて多くのお客様がオープン日に来店して、行列も出来て大繁盛しました。

ところが、朝一でクライアントからLINEがあり、

「客数は凄かった、売上も予算以上で問題ないが、客単価が想定よりも相当低い、何とかして欲しい」とだけ、書かれたメッセージが来ました。

そこで、客単価が幾らだったかを聞いたところ、5,000円設定のところ、3,850円だったと言います。

1,150円の差異ですから、ビール2.5杯分、カルビ2皿分、牛タン2皿分です。

要するに、カルビがもう1皿とビールがもう1杯売れれば、客単価が想定値になります。


この結果は、私はある程度予想していました。


原因も特定できていました。


そうです、原因はタレです。

タレが弱くて、カルビが美味しくなりません。

なので、カルビの追加オーダーが入りません。
すると、ビールの杯数も伸びません。


このストーリーは見えていました。


しかし、メーカーが持ってきた、創業50年の老舗が30年も使っている高級なタレを信望しているクライアントには、このことが理解できていませんでした。

いみじくも中止になった試食会で、クライアント自ら仰っていたことが現実となりました。


もう2度と来店しなくなる前に、その場で2回目のカルビの追加オーダーがありませんでした。


そこで、アイドルタイムにお店に行き、昨日のデータを確認しました。

初日だったこともあり、レジデーターが随分と間違っていましたが、おおよそ想定通りの内容だったので、店長と料理長に確認をとりました。

お酒の出数はどうだったかと、カルビの出方はどうだったかを感覚的で良いから教えて欲しいと、「バンバン出ましたよね!と、カマをかけて聞いてみました。


日本人は素晴らしい特性を持っています。
それは「忖度する」という特性です。

「昨日お酒もカルビも出なかったですよね?」と聞くと、忖度して「出ませんでした」と、答えてしまいます。

すると間違った情報をもとに施策を打つことになってしまいます。
でもこの場合、「出ましたよね!」と聞くことで、本音を引き出せます。

客単価が低いことを、オーナーから指摘されていて改善命令が出ています。
自分たちも何が悪かったのか、原因を知りたいと思っています。

このような状況の時は、逆の内容の質問をすることで、反抗心とでも言いましょうか、忖度抜きの本音が出てきます。

断定的に「出ましたよね!」と聞くことで、商品の出数が想定通りなら他に原因がある、その原因を自分たちに向けられることに恐怖して、忖度なく本音が出ます。

そもそも、前日の出数データを知っているわけですから、併せて、客数の割には忙しくなかった厨房だったわけですから、もっと商品が出てもいいはずと理解しているわけです、自己保身も含めて本音が出てきます。

そのようなリサーチ作業の結果、やはりカルビの出数が圧倒的に少ない。
それと連動して、ビールもハイボールも出数が少なくなっていることが、実数からも店長と料理長の感覚からもハッキリとしました。


これは、何が起きていたのかというと、
お客様の”脳”が喜んでいません!


人間は、動物性たんぱく質と脂質と塩分と炭水化物、そしてこれに合わせて日本人は、旨味成分が体内に入ると、脳が興奮して喜んだ状態になります。

しかし、このタレでは、その状況を脳に起こさせることが、出来ていないということです。

答えはわかっていましたので、改善も簡単でした。


タレは大量に仕入れてしまっています、もう返品はききません。
今後もこのタレを信望しているクライアントは、取引を継続すると思います。
ですから、タレを変更することは得策ではありません。

そこで、このタレにコチュジャンを添加しました。


たまたまこのメーカーのコチュジャンは非常に優秀で、申し分のない完成度でした。
採用されてしまったタレに、この完成度が高いコチュジャンを10%だけ添加して、揉みダレとして使用するレシピに変更しました。

コチュジャンの粘度が添加されることにより、肉とタレの絡みも良くなり、強くなったタレの旨味を、ダイレクトに感じられるようになりました。

漬けダレは昨日と同じにしましたが、辛味噌をタレ皿の脇に着けるようにして、「味が薄いようなら、辛味噌を溶いてください」と、一言加えるようにオペレーションも少し変えました。


併せて、無限キャベツも確認しました。


レシピは伝えてありましたが、現場で簡略化されてしまったようです。
原因は、私がレシピをお伝えした幹部スタッフが、簡略化して現場に卸してしまったようです。

勘違いしたのか、意図的にしたのかはどうでもよく、兎に角間違ったレシピが現場に伝わっていました。

そこで、正しいレシピをお伝えして、作業手順もストック方法もお伝えしたところ、無限キャベツを試食して出てきた言葉が、

「ウワッ! ビール飲みたくなりますね!」

無限キャベツの目的達成です。


お通しで、無限キャベツと銘打っておかわり自由で販売する目的は、お酒を売るための呼び水商品とするためです。


このお店は、1人300円のお通し代が発生するシステムです。
3人で900円の売価ですが、いくらおかわりをしてもキャベツ1玉は食べ切れません。

キャベツは1玉200円程度ですから、仮に3人でキャベツを半分食べたとしても原価100円程度です。

このキャベツを食べて、ビールとハイボールが3杯ずつ出たならば、利益は2000円程度となります。
3人で6000円の利益です。

これが無限キャベツの目的であり、呼び水商品としてのお通しの在り方です。


その日の営業が終了して、深夜に電話で客単価を店長に聞きました。

なんと、5,500円を超えていました!
一気に想定値を超えてきました。
カルビとお酒の出数も想定値以上で、1夜で客単価問題は改善出来ました。

美味しい味と、売れる味には確実に違いがあります。

以前noteでこの美味しい料理と売れる商品をテーマにした記事を書きましたが、今回はそれをどのように実践するのかをご紹介しました。



飲食業で必要なのは、売れる商品です。
美味しい料理ではありません。



このクライアントは、美味しいタレに魅了されてしまいました。

私は、売れるカルビを開発しました。
更に、ビールが飲みたくなる、もっと秘密をバラスのなら、炭酸系のお酒が飲みたくなるキャベツを開発しました。

その結果、客単価を上げることが出来ました。

お客様が、商品を想定以上に買ってくれたということです。

「売れる商品に、成ったということです。


美味しいは一つの概念です。
個人的な思い込みと言っても、良いぐらいです。

でも、売れる商品は異論をはさむ余地がありません。
売上として、結果が出ていますから。


「美味しい」をもう一度考え直しませんか。



因みに、このお店のカルビは、無茶苦茶美味しくなりました。

そして、無限キャベツは病みつきになり、ハイボールガバンバン売れました。

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