神様の寝言も聞こえる

きみとぼくの間でだけ
伝わる言葉で話をしよう
まつげは震えているし
指先はとてもやわらかい
(ねえここは)
(だめだよ)
笑うと、とろけるみたいだね


名前を知りたいのだと言って
足元の花を摘む
そうなると興味がなくなったから
食べてしまうほうがいい
すらりと伸びた角を飾りにし
いつもの森へ歩きに行こう
そろそろ雨の降る匂いがするんだ


水槽に満たした温度が
なだらかな胸と似ている
低く唸るモーター音が
羽音のように響いていても
刺されるようなことはないけれど
飛ぶことと泳ぐこととの
近しい呼吸をおもっている


寝室の床につけた爪先から
花々が開いてゆく気配
やわらかなターンを描き
私だけの舞台で踊る
世界が眠ったままでいるなら
神様の寝言も聞こえる
光がほどけるまで、ここで


指先に感じたぬくもりを
永遠と呼べたならよかったのに
確かめるには少し背伸びをしすぎた
おぼつかない足元で
クローバーが揺れている
繰り返すまばたきはやがて蝶になり
甘い香りのするひとを探しにゆく


ここまでお読みくださり、ありがとうございました