2020年5月17日

【日曜日とおじさん】

何となく目が覚めて、ベッドから出て、換気扇のところでタバコを吸った。外光はもう白く、部屋も暗くない。間もなく6時、という折。寝たのは3時頃だから、これを吸ったらまた寝に行くつもりで、、カタンと何か、硬くぶつかる音を聞いた。

真鍮のオブジェなどを、3つばかり飾っていた手製の棚(壁掛けの)が落ちたらしい。決して大きくない、でも、よく響く音がしたのはこのせいだったようだ。小さい箱(棚)は壁にもたれた折りたたみイスの上に、もっと小さい物たちは床に、どこか、鎮座しているようにも見えた。

下の階のおじさんがうぉーうぉー叫んでいる。壁か床か、家具なのかわからないけど、何かをぶつけているらしく、ドタドタいう音も聞こえた。上の階の騒音に腹を立てているのだ。「はいはい、すみませんね」とつぶやきながら、私は、私の「大切な物」をひとつひとつ確認した。だけど、棚上にちょんと乗せていたもうひとつ、ピンクの折り紙のバラと、それを活けた小さい白い紙の筒が、どうしても見当たらなかった。

ベッドの下、本棚の下を見て、部屋をパンして、懐中電灯でも見て、何度も探したけど、、「バラが消えた」と私は思った。捜索がまた騒音だったのか知らないけれど、おじさんは相変わらずうぉーうぉー叫んで、痰の絡んだ咳みたいな不快音を交えながら、「ばかやろー」とも言う。

「うるせー死ね」と返してやったけど、バラのせいで私は悲しい。活力みなぎる引きこもりのおじさん、そういえば、私に?ばかやろーと言うけど、死ねとは言わない。理屈もないけど、バラは床をすり抜けて、おじさんの部屋に行ってしまったのかもしれない。探すのをやめた。書き止めておくことにしようと思う。

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