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「過去未来報知社」第1話・第22回

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>>第21回
(はじめから読む)<<第1回
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「あの……、何の話ですか?」
「知らない? 満月のパワー」
「すぴりちゅある、的な? あー、私そういうのに疎くて」
 笑美はぼりぼりと頭を掻く。
「そんな胡散臭いものじゃないんだけど。もっと身近なものよ。
 だからか、皆が警戒していたのは。縁起の悪いものだと思われたのね」
「さっきから気になってるんですが、この『子』って……」
「決まってるじゃない。ここの皆よ」
 猫たちがいっせいに声をあげる。
「あの……。あなた、ネコさん、ですか?」
「そうよ」
 あっさりと答えると、女性……ネコはにっこりと笑った。
「あの……、六合荘の大家さんの所の……?」
「そう」
 頷くと、ネコは三毛猫を下ろした。
 三毛猫は一つ伸びをすると、笑美に体を擦り付けた。
 恐る恐る慣れない手つきで持ち上げる笑美。
 三毛猫は少しジタバタしながらも、なんとか笑美の肩に前足を乗せて落ち着いた。
 ふんふん、と笑美の匂いを嗅ぐとゴロゴロを喉を鳴らす。
「この『子』は、随分となつっこい、ですね?」
「あなたが気に入っているのかもね」
 三毛猫の代わりに黒灰ゴマ猫を抱き上げるネコ。
 巨大な猫だが、まるで空気のようにネコの胸に落ち着く。
 月と猫と美女。
 見ごたえのある光景に笑美はほう、と息を吐いた。
 その隙に三毛猫が笑美の手の中のウィンナーを噛み砕いた。
「あ」
「ご褒美、らしいわね」
「ご褒美?」
 ウィンナーを食い尽くすと、三毛猫は身をよじって笑美の腕から降りる。
「あなた、若旦那とお話がしたいの?」
「若旦那?」
「六合荘の大家のことよ」
 ポン、と笑美は手を打つ。
「二代目だから、若旦那」
「そう。困ったお坊ちゃま」
 歌うように笑うネコ。
 笑美は身を乗り出した。
「そうなんですよ。仕事、してもらわないと困るんです。
 いや、本当は市民がどうしていようといいんですが」
「それにあなたは、六合荘に住めるようにしないとならないものね」
「え? どうしてそれを?」
「若旦那もそれは知ってるわよ」
「え? さらになんで?」
「だってあの人は、六合荘の過去未来報知者だから」
「ああ。人生相談の……」
 ネコは意味ありげに笑う。
「でも、今のままでは話にならないんです」
「あの人の目を見ようとしては、駄目よ」
「え?」
「あの人と話すのは、コツがいるの」

>>第23回

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