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「過去未来報知社」第1話・第15回

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「こんにちは……」
 男の肩越しにドアをのぞき込む笑美。
 部屋の中は廊下と同じか、それ以上に暗い。
 まだ昼だと言うことを考えると、しっかりと窓を閉め切っているのだろう。
 それにしても、まったく日の光が射さないというのは、どれだけ目張りをしているのだろうか。
「誰か、いませんかー」
 かー、かー、かー……。
 六合荘の全体構造を考えるに、そう広くないはずの部屋の中に、不気味に笑美の声が響く。
「ほら、やっぱり時空がひんまがっているんですよ」
「んな、バカな」
 背中にひっついてくる根津を引きずりながら、笑美はそろそろと部屋の中に足を踏み入れた。
 ドアから射し込む光でかろうじて見える限りでは、どうやら和室らしい。
 上がり框らしき場所で靴を脱ぐと、笑美は壁を探して手を伸ばした。ここが玄関口という事は、近くにスイッチがあるはずだ。
「なんか探してんの?」
「ひゃっ!」
 手を伸ばした反対側から、三宅の声がする。
「あ、あかりのスイッチがないかと」
「なんだ、早く言えばいいのに」
「三宅さん、どこにあるか分かるんですか?」
「このぐらいなら。あたし、夜目は結構効く方なんだ」
 そういう問題だろうか、と笑美がくびをかしげる暇もなく、パチリ、と軽い音がして部屋が一気に明るくなる。
 目の前が真っ白になり、笑美は思わず目を覆った。
「わ!」
「なんと!」
「え? 何?」
 根津と三宅の挙げる声に細々と目を開ける笑美。
 そこには、三人の女性が立っていた。
 そしてその三人は、全員、笑美と同じ顔をしていた。
「え? ええっ?!」
「落ち着け、鏡だ」
 男に冷静な顔で言われ、笑美はじっと目を凝らした。
 すると、三人の笑美も一緒に目を凝らす。
 振り返ってみれば、もう一人の笑美が振り返った。
 更によく見れば、その奥にも笑美、また、笑美、笑美……。
 いや、笑美に限らず、根津・三宅・男が何重にも連なっている。
 玄関から入った部屋の壁一面が、鏡張りになっているのだ。
「うわー、これは凄いね」
「壮観です」
 店子の二人は面白そうにポーズをとっている。
 じわじわと這い上がってくるような不気味さを腹に抱え、笑美は横の男をちらり、と見る。
 男は平気な顔で立っている。
「……気味悪くないんですか?」
「……別に」
 これはこれで不気味だな、と笑美は男から視線を反らした。
 と、その時、
「誰だ」
 部屋の片隅から、声が響いた。
 響きに険はあるが、耳障りの良い声だ。
「大家さん?!」
 声のある方へ振り返り、笑美は絶句した。

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涼廣

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