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「過去未来報知社」第1話・第32回

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☆連載内・クリスマスイベントです(第29回~
#Xmas2014
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>>第31回
(はじめから読む)<<第1回
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 商店街に午後12時を告げる鐘が鳴る。
「……なんでこんな真夜中にこの商店街は人が減らないんですか。
 子どももいっぱいいるし」
「だって、これからがお祭りだもの」
 途端に道を埋め尽くしていた客がモーゼの十戒のように割れる。
「な、何?」
「くるぞ、くるぞ~」
 三代目がワクワクと拳を握る。
「くる?」
『メリー、クリスマス!』
 野太い声や黄色い声が響き渡り、商店街の向こうから赤白の軍団がやってきた。
 正統派サンタやら、パチモン風の安っぽいものから、
 ただ、赤白の服を着たものから、様々な サンタクロースが道の幅いっぱいに行進してくる。
「六合名物、サンタ大名行列だ!」
 口々にメリークリスマス! と叫びながら、手に持った小さな袋をあちこちに投げる。 容赦なく降ってくる小袋に、着ぐるみの中で笑美は頭を抱える。
「な、なに、これ?!」
「サンタのクリスマスプレゼントだよ!」
 エプロンを広げて袋を集めるサンタの顔は、嬉々としている。
「中に餅とか、ちっちゃいお菓子が入ってるんだ」
「和歌山の餅投げと、ハロウィンが混じってませんか?」
「さあさあ、あんたもいってらっしゃいな!」
 奥から出てきたサンタ娘(つまりは三代目母)が、
 腕いっぱいに小袋を抱えて笑美に押し付ける。
「なんで私が?!」
「折角、りくもんサンタになってるんだから、参加しなきゃ!」
「え? ええ?」
「さあ、さあ!」
 サンタクロースたちに腕を引っ張られ、無理矢理行列に入れられる笑美。
「わー、りくもんだ!」
「りくもんサンタだー!」
 子ども達がわらわらと周りを囲む。
 慌てて小袋を投げる笑美。
 ぱーっ! と袋をとりに行く子ども達。
 商店街中が、大変な騒動になっている。
「ええーい! こうなりゃ、ヤケだ!」
 笑美は両手いっぱいの小袋を力の限り投げ上げる。
 スパンコールのついた袋に照明が反射して、キラキラと輝く。
(あ……)
 不意に笑美の脳裏に、大きなもみの木についた飾りを見上げる二人の女の子の姿が浮かんだ。
『笑美と小夜はずっと友達だよね』
『うん』
 二人の少女は、固く手を繋ぐ。
『ずっと、ずっと、一緒ね』
『ずっと、ずっと、一緒だよ』
 微笑む笑顔。でもその顔が、思い出せない。
 その瞬間、どすん、と鈍い感触が笑美の腹を襲う。
「ふごっ?!」
 息が詰まりそうになって、笑美は現実に引き戻された。
「りくもんだ~!」
「み、みやげざん……。殺す気ですか!」
 頭から笑美の腹に突っ込んできた三宅は、きょとんと顔を上げた。
「あれ? えみみん?」
「誰ですか、それは」
 聞いたことのない愛称に、笑美は冷たく答えた。
「なんだ、クリスマスも仕事だって言ってたけど、遊んでんじゃん」
「仕事です!」
 忘れかけてたけど!
 笑美は冷や汗をかきながら弁明した。
「クリスマスの妖怪を……」
「クリスマスの妖怪? そんなのいたかな?」
 首を傾げる三宅に、笑美は少し嫌な予感がした。
「それより、えみみんも行くんでしょ?」
「行く? どこへ?」
 行くもなにも、流されてるけどね、と笑美は心の中でつぶやく。
「六合のクリスマスツリーに、だよ。
 六合にいるのにあれを観ないのは、勿体無いからね」
 さあさあ、と三宅に手を引っ張られて笑美は商店街を抜ける。
(……まぁ、あのままあそこにいても、妖怪なんかいなさそうだし)
 笑美は諦めて、その後をついていった。

>>第33回

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「過去未来報知社」第1話・第32回

涼廣

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本と音楽が好きです。