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「過去未来報知社」第1話・第53回

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>>第52回
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「見たわよ~!」
 大声とともに背中を強くバン、と叩かれ、
 笑美は買い物籠を取り落としそうになった。
「がっ……な、何を……って市子さん!?」
 ニコニコと買い物籠を持って立っているのは、恵比寿の嫁の市子だ。
 午前中は眠そうな顔をしているが、夕刻になるとやけに元気になる。
「こんなところにいていいんですか? お店、開店時間じゃないですか?」
「それがね、からしきらしちゃって、急遽買いに来たってわけ」
 ガハハ、と豪快に笑うと、市子は馴れ馴れしく笑美の肩に手をかけた。
「ばっちり写ってたじゃないの、この、この!」
「え? 何のことですか?」
「この間の、諸国漫遊のことよ~」
「それなら、確か六合荘は写ってなかったと……」
「そこじゃないわよ、商店街の方よ~」
 市子は体をくねらせる。
 笑美はぎくり、と表情をこわばらせた。
 六合荘の方はしっかりチェックしたが……。
「ほらほら、見て、これ。データ化しちゃったわよ」
 市子はギラギラにデコったスマホをバッグから出してみせる。
 そこには、店の片隅で市子と話をしている笑美が写っている。
 市子はもじゃもじゃのパーマ頭の端しか写っていないが、
 笑美は小さいながらも全身が写っていた。
 とはいえ、知人が見ても「もしかしたらこれは笑美か?という
 程度の大きさではある。
「ねぇ、ここにあんたがいるってことは、これアタシでしょ、アタシ」
 自分を指差してはしゃぐ市子の言葉は、
 呆然とスマホの画面を見詰める笑美の耳には届いていなかった。

>>第54回

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