「過去未来報知社」第1話・第91回
☆全文無料でご覧いただけます☆
--------
>>第90回
https://note.mu/su_h/n/n833faeebf04b
(はじめから読む)
<<第1回
https://note.mu/su_h/n/n80b1bc94e9af?magazine_key=mbb6ba54825ac
--------
ふっと脇に気配を感じ、笑美は振り返る。
そこには、陰鬱な笑顔を浮かべた婦人がいた。
「お、オバサン……えっ?! 嘘っ?!」
婦人は、笑美の左わき腹から「生えていた」。
「えっ?! 何なの?! これ?!」
「母は、あなたが書留を送り返してきた後、行方不明になりました……」
逆側から聞こえた声に顔を向ければ、男が何かに耐えるような顔をしている。
「えっ?! 何で?」
男は、笑美の右わき腹から「生えていた」。
「それから数日後、変わり果てた姿で母は見つかりました……」
「そ、それって……」
恐る恐る見る笑美に、婦人はにぃっと笑ってみせる。
「そ、それじゃあ……」
笑美は男に目を向ける。
「あ、あなたも……?」
「私? 私は生きていますよ。但し、本来の体は病院のベッドの上ですが」
こともなげに言われた一言に笑美は言葉を飲み込んだ。
「ああ、私が体を壊したのは、あなたが書留を送り返したからではありません。
母の奇行が始まった後、ストレスで倒れたんです」
「……」
笑美はじっと男の顔を見つめる。
「見えるんですよ。ベッドの上にいると。
母が何かに引き寄せられように彷徨っているのが。
止めないと、と思ったら、こんな風に」
半透明の腕を持ち上げて見せ、男はため息をついた。
「私が……私のせいでみなみが死んだから……?」
「……と思いつめたのが、この現象の元凶だな」
ずい、と詰め寄った大家が婦人と男を払う。
霞が消えるように、二人は四散し、渦に飲み込まれていった。
「ひっ!」
喉の奥で叫び声を上げる笑美。
「ふ、二人を! 二人をどうしたの?!」
大家はつまらなそうに渦の底を見る。
「とりあえず、六合の餌に、な」
「それに、あの男の人は行きてるのに!」
「母の霊に引き寄せられた生霊だから、母の霊が消えれば元に戻る」
ふ、っと笑美から離れると大家は頭を掻いた。
「それにお前、のんきに人の心配している場合じゃないだろ」
「……え」
「聞いてなかったのか? 俺は六合の餌づけ係で、
過去未来報知社は、その餌の分別をするための会社だって」
「聞いては……いたけど」
「で、俺がここにお前といるのは、なんのためだと思ってるんだ?」
「こいつを餌にすることは、俺がさせない」
慶太の声に、大家はふっと目を向ける。
「ああ、そういえばお前さんがいたんだったな。
六合があっちこっちにあけた穴から、迷い込んできた男。
過去か、未来か、別次元か。アカシ。
その年のとり方からみれば、未来か」
「そうだ。俺は10年後の未来から来た」
「未来……」
呆然と見上げる笑美に、慶太=アカシは微笑んだ。
「10年後の……、お前の旦那だよ」
「え」
笑美は何度目か分からない絶句を迎えた。
>>第92回
--------
(「ノート購読」は「投げ銭」扱いで設置させていただきました。
全文無料ですので、今回の連載はここまでですが、
投げ銭いただけますと、作者のモチベーションが更にあがりますw)
------
ここから先は
¥ 100
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?