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「過去未来報知社」第1話・第91回

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>>第90回
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<<第1回
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 ふっと脇に気配を感じ、笑美は振り返る。
 そこには、陰鬱な笑顔を浮かべた婦人がいた。
「お、オバサン……えっ?! 嘘っ?!」
 婦人は、笑美の左わき腹から「生えていた」。
「えっ?! 何なの?! これ?!」
「母は、あなたが書留を送り返してきた後、行方不明になりました……」
 逆側から聞こえた声に顔を向ければ、男が何かに耐えるような顔をしている。
「えっ?! 何で?」
 男は、笑美の右わき腹から「生えていた」。
「それから数日後、変わり果てた姿で母は見つかりました……」
「そ、それって……」
 恐る恐る見る笑美に、婦人はにぃっと笑ってみせる。
「そ、それじゃあ……」
 笑美は男に目を向ける。
「あ、あなたも……?」
「私? 私は生きていますよ。但し、本来の体は病院のベッドの上ですが」
 こともなげに言われた一言に笑美は言葉を飲み込んだ。
「ああ、私が体を壊したのは、あなたが書留を送り返したからではありません。
 母の奇行が始まった後、ストレスで倒れたんです」
「……」
 笑美はじっと男の顔を見つめる。
「見えるんですよ。ベッドの上にいると。
 母が何かに引き寄せられように彷徨っているのが。
 止めないと、と思ったら、こんな風に」 
 半透明の腕を持ち上げて見せ、男はため息をついた。
「私が……私のせいでみなみが死んだから……?」
「……と思いつめたのが、この現象の元凶だな」
 ずい、と詰め寄った大家が婦人と男を払う。
 霞が消えるように、二人は四散し、渦に飲み込まれていった。
「ひっ!」  
 喉の奥で叫び声を上げる笑美。
「ふ、二人を! 二人をどうしたの?!」
 大家はつまらなそうに渦の底を見る。
「とりあえず、六合の餌に、な」
「それに、あの男の人は行きてるのに!」
「母の霊に引き寄せられた生霊だから、母の霊が消えれば元に戻る」
 ふ、っと笑美から離れると大家は頭を掻いた。
「それにお前、のんきに人の心配している場合じゃないだろ」
「……え」
「聞いてなかったのか? 俺は六合の餌づけ係で、
 過去未来報知社は、その餌の分別をするための会社だって」
「聞いては……いたけど」
「で、俺がここにお前といるのは、なんのためだと思ってるんだ?」
「こいつを餌にすることは、俺がさせない」
 慶太の声に、大家はふっと目を向ける。
「ああ、そういえばお前さんがいたんだったな。
 六合があっちこっちにあけた穴から、迷い込んできた男。
 過去か、未来か、別次元か。アカシ。
 その年のとり方からみれば、未来か」
「そうだ。俺は10年後の未来から来た」
「未来……」
 呆然と見上げる笑美に、慶太=アカシは微笑んだ。
「10年後の……、お前の旦那だよ」
「え」
 笑美は何度目か分からない絶句を迎えた。


>>第92回

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