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「過去未来報知社」第1話・第17回

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「で、ネコさんはどこ行っちゃったんですか?」
「それが人に話を聞く態度ですかぁ!」
 襟首を掴みあげて声をあげる笑美に、根津は叫び声を上げる。
「そうよ! ちょっと違うんじゃない?」
 三宅が笑美と根津を引き離す。
「ねづっちはあたしのモノなんだから!」
「それも違うわ!」
 むぎゅっ、と抱きしめる笑美に根津は更に悲壮な声を出す。
「しかし、さっさとネコとやらを見つけないと、
 いつまでたっても大家とまともに話ができん」 
「そう言えば、あなたも大家さんに用があるって言ってましたね。
 何の用なんですか?」
「さあ、なんだろうな」
「なんですか、それ」
 はぐらかしているのかと思えば、
男は大真面目な顔のまま笑美を見つめ返している。
 ここにはまともな人間はおらんのか! 
と笑美は自分を棚にあげたまま考える。
「市役所のお仕事は大家さんに会えた事で終わったんじゃないの?」
「そうそう、様子を見に来ただけなんでしょ?」
「確かにそう言われたけど、絶対にこのまま帰ったら
『じゃあ、外に出るようにしてくれる?』って言われるに決まってます!」
 東谷のニヤニヤした顔を思い出し、笑美は小さくため息をついた。
「役所の相談もここにしてたみたいだし」
「え? 何?」
「なんでもありません!」
 笑美はキッ、と大家の部屋のドアを睨みつけた。
「とりあえず、ネコさんを探します。写真とかないですか?
 あと行きそうな場所とか」
「日向ぼっこが好きよね?」
「散歩も好きでしたね」
「そんな情報でどうやって探せと……」
「おい、これ。これがネコとか言う女じゃないのか?」
 男の声に顔を上げる笑美。
 六合荘の玄関口。茶色く変色した写真が額に飾られている。
 六合荘と二人の男女が写っている。
 一人は小柄でがっしりとした体型の青年。
 着物を着込んだその姿は顔は見られていないが、
先ほどの大家の佇まいと少し似ている、と笑美は思った。
 その横で静かに微笑む痩身の女性。
 こちらも着物に、白いドレスエプロンをつけている。
 中睦まじいその様子から、
笑美はきっとこの二人は夫婦なんだろう、とあたりをつけた。
「そうそう、これがネコさん」
「ちなみにこの隣の旦那さんが、先代の大家さん」
「先代?」
「ここは今の大家さんの伯父さんがやってたんですよ。
 大家さんは、先代が亡くなった後にここを継いだんです。
 ほら、ここにいる」
 二人の影に隠れる様に、少年が顔を覗かせている。
「……」
 笑美は写真を胡乱な目で見つめた。
 そこには、黒灰ゴマ猫を顔に掲げた少年が写っていた。
「ここでもかい!」
「余程写真に写りたくないんだな……」
 横でしみじみと言う男の声に感情が滲み出ているのを感じ、
笑美はあら、珍しい、と男を見つめる。
 それに気付いた男は、ふっと顔を反らしてしまった。
 ……照れてる? 笑美はなんとなく面白くなって顔をほころばせた。
 男は少し居心地悪そうに顎の辺りを掻き……、
「……この写真、日付が昭和だぞ」
「え?」
 ベタっッと壁に手をつけて写真を凝視する笑美。
 そこには昭和62年の日付が……。
「ちょっと! 今ネコさんいくつなのよ!」
 三宅と根津は顔を見合わせてニヤリ、と笑った。

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涼廣

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