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2014年11月の記事一覧
「過去未来報知社」第1話・第14回
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<<第13回
<<第1回(はじめから読む)
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昼なお暗い六合荘。
三宅と笑美に案内され、笑美は六合荘の大家の部屋の前に立っていた。
「……なんで、南向きの廊下なのに、こんなに暗いんですか」
「それが、あたしたちにも不思議なのよ」
「きっと時空が歪んでいるんですよ」
「……それになんで、お二人とも私の後ろに隠れ
「過去未来報知社」第1話・第13回
<<第12回
https://note.mu/su_h/n/n0ba2bb33cf82
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「えーと、あなたが根津さんで……」
笑美は男・根津を見ながら確認する。
「あなたが三宅さん、お二人はここ、六合荘の店子さん、なんですね」
「そうそう」
根津と三宅はこくこく、と頷いた。
「私は~、タウン誌の記者やってんの」
三宅は胸を
「過去未来報知社」第1話・第12回
<<第11回
https://note.mu/su_h/n/n7a3dac0f7ed6
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押しつぶされた男が叫び声をあげる。
「うえええっ?」
ドアの中を覗き込む笑美。
2階分が吹き抜けになっている。
どうやら2階の踊り場から飛び降りてきたらしい。
「ギャ、ギャ、ギャー! 殺される~!」
ジタバタと暴れる男。
その上には
「過去未来報知社」第1話・第11回
<<第10回
https://note.mu/su_h/n/n827e068b087d
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明治や大正時代の小学校みたい。
笑美が六合荘に最初に抱いたのは、そんな感じだっった。
どことなく重苦しくこちら側にもたれかかってくるようなシンメトリーな作り。
規則正しくならんだ窓。
無機質な少しくすんだ白樺の壁。
小学校の裏にこん
「過去未来報知社」第1話・第10回
<<第9回
https://note.mu/su_h/n/ne3191e07d19a
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狭い路地をうねうねと曲がり、いい加減、元来た道に戻れるか不安になってきた頃に、その建物は見えてきた。
今までうねってきた道が急にまっすぐになったその先に、その建物は建っていた。
細い路地のどんづまりをせき止めるように建っている和風建築。
「過去未来報知社」第1話・第9回
<<第8回
https://note.mu/su_h/n/nb5c5b3a3f7ae
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「……そこに何かご用ですか?」
「大家に会いたい」
「大家さんのお知り合いですか?」
「そうとも言えるし、そうじゃないとも言える」
笑美は男をねめつけた。
男はしらっとした顔で笑美を見下ろしている。
「行っても、会えないそうですよ」
男は首
「過去未来報知社」第1話・第8回
<<第7回
https://note.mu/su_h/n/nc70f70dd06ae
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延ばし放題の髪と髭が顔の殆どを覆ってしまっているが、微かに覗く肌や目の感じは、それほど男が年をとっていない様子を表している。
あまりかまっていない感じの身なりに反比例して、来ている服は赤字に金と緑のフレークが散った少し洒落た感じのシャツで、履
「過去未来報知社」第1話・第7回
<<第6回
https://note.mu/su_h/n/nb2f583e67a80
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「えーっと、この角を曲がってその次を……」
地図片手に細い路地を右へ、左へ、と渡りながら笑美は周囲を見渡す。 駅前の商店街を抜けると、そこは閑静な住宅街だった。
風情のわる和風建築の立ち並ぶ横の通りには、今時の新築住宅が軒を連ねている。新旧が
「過去未来報知社」第1話・第6回
<<第5回
https://note.mu/su_h/n/nd3c76ca60a6c?magazine_key=mbb6ba54825ac
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「住民の悩み事を聞いて解決する、やることは一緒。
あちらさんがすべて町内のもめ事を解決しちゃったりすると、
この課の存在意義そのものがなくなっちゃうんだよね」
「えっ?! それは困ります!
「過去未来報知社」第1話・第5回
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「うちがどんな仕事をするところか、軽く説明したよね」
「はい。町役場に申請がある相談事で、法令にあまり関係しないもめ事や困り事を変わりに処理するって」
「まぁそういうのって、大体話を聞いてあげるだけで解決留事が多いから、もっぱら『六合町・人生相談所』みたいなもんなんだけど」
東谷はファイルを開くと、渋い顔をする。
「ちょっと今回
「過去未来報知社」第1話・第4回
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「私は西畑真美。この課の経理を担当しています。
と言っても、たった三人の部署だからね~。
二階の戸籍課と兼業なの。だからここにはあんまりいないかな」
「今日は新人君の書類の手配があるから来てもらってたんだ」
手鏡を下ろすと、東田には笑美の顔をのぞきこんだ。
「で、君は?」
毛布を蹴って立ち上がる笑美。
「右輪瓜笑美です。2
「過去未来報知社」第1話・第3回
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静かな病院の廊下。
時折遠くからうめき声が聞こえる。
そこへ、はじけるような子供の泣き声。
「生まれた!」
爆発でもしたかのように飛び上がると、一目散に病室へ駆け込む猪俣旦那。
つられて駆け出す笑美。
猪俣旦那に開け放たれた病室のドアからそっと顔を覗かせた笑美に、猪俣旦那は涙でぐしゃぐしゃになった顔で振り向いた。
「う
「過去未来報知社」第1話・第2回
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「……どなた?」
はちきれそうなほど大きな腹を抱えた、唇のぼてっとした色っぽい女性が、エプロン姿で小首を傾げた。
「あの、私、今日からここに住むことになっているんですけど……」
「え?」
女性が怪訝な顔をする。しかし、怪訝な顔をしたいのは笑美も同じことだ。
「どうした?」
女性の後から現れた男を見て、笑美は「ああ、箪笥を人
「過去未来報知社」第1話・第1回
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「ここが、六合町……」
自身の身の丈程もありそうな巨大なトランクを転がしながら改札を出た笑美は、駅前ロータリーを見渡した。
そう大きくはない、しかしトロリーバスが進路変更するぐらいはできる程度の大きさのロータリーには、仕事帰りのサラリーマンや、学校帰りの中高生がまばらに歩いている。
時刻表を見る限り、そうバスの本数は多くない