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~神話・民話の世界からコンニチハ~ 12 水蛇ムキティさま

こんにちは。いつもは土曜の更新なのですが、明日は家族で外出するので、ちょっと早めに投稿を。

第十二回は、アフリカはコンゴ(かつてはザイールと呼ばれた地域)のニャンガ族に伝わる神話、水蛇ムキティさまと人間の村長の娘イヤングラの結婚のお話&ムキティさまとのインタビューです。

今回のお話

昔のことです。トゥボンドという村があり、シェムウィンドという長が治めていました。村長シェムウィンドには、類稀(たぐいまれ)な美しい妹のイヤングラがいました。

ある時、トゥボンドの近くの川の上流に住む、川の主(ぬし)の水蛇ムキティさまが、イヤングラのことを知って、ぜひに結婚したいと思いました。ムキティさまはトゥボンド村にやって来て、村長のシェムウィンドに、イヤングラを嫁にくれるように言いました。シェムウィンドはムキティさまが村へ来てくれたことに対する厚意の証(あかし)に黒い山羊を一頭贈り、村の皆と協議して、イヤングラをムキティさまの嫁とすることに決めました。ムキティさまとイヤングラは一目お互いを見ると、たちまち打ち解け合ってお互いの胸が触れ合うほどになりました。

ムキティさまからの贈物もなされ、村長のシェムウィンドは「よろしい、あなたは男だ。何物によっても止められぬ男、恐れと疑いを乗り越えることのできる男だ」とムキティさまに賛辞を贈り、ムキティさまとイヤングラは結婚しました。ムキティさまはイヤングラを連れて淵に戻ると、ムキティさまが住む村の頭領のカシイェムベにイヤングラの身の回りの世話をし、川の流れに逆らうものの取り締まりをするよう言いつけ、自分はすべての乾いた葉の集まるところ、すべての倒れた木の幹が淵の真ん中をせき止めるところに住むことにする、と宣言しました。


……とても平和的な異類婚のお話です。このあとに続く、イヤングラが登場するお話では、とても重要な地位にイヤングラがいるので、蛇と結婚した女性は、特別な地位に置かれて大切にされたようです。それでは、水蛇ムキティさまとのインタビューと参りましょう!

すー: ムキティさま、よろしくお願い致します。

ムキティ: 我ら蛇……蛇神とされる存在は、そなたら人間とはるかに古い付き合いをしておったのだ。主に水を司る存在としてな。そして、狩猟を成す人間の男たちからは、獲物を確実に仕留める名ハンターとしての憧れや尊敬の思いを受けておったのだ。

すー: そうなんですね。嘘つきの象徴とか、オロチのように、悪さをするとか、後付けで物語の悪者になっていってしまったんですね。

ムキティ: 我ら蛇は、見る者に恐怖を呼び起こしたり、移動すればその姿が波のように見えたり、脱皮をすることがとても不思議がられたり……農作物を荒らす生き物を食べる一面もあるが、自然の神秘としての象徴が我らであったということだな。人間の住むところが、村から町になり、巨大な都市になっていくにつれて、人間を襲ったり、毒があったりする厄介な生き物として扱われるようになっていったのだ。

すー: 日本では、民話に、さんざん悪さをしていたオロチ、大蛇が改心をして龍神になったというお話もありますし、文明圏に入らなかった、今でも狩猟と原始的な農耕とで生活を成すひとびとの地域では、現在も蛇の神さまはとても神聖なものとして扱われています。世界は蛇である、という考え方も先史以前は、どうもあったようで。そうした昔々の、蛇と人間の、どちらも自然に則して生きていた平和的な関係が、この水蛇ムキティさまとイヤングラさまの結婚のお話として残っているのかもしれませんね。ムキティさま、どうもありがとうございました。

十二回「~神話・民話の世界からコンニチハ~ 12 水蛇ムキティさま」は以上です。

すこしでも楽しんで頂けたなら、それに勝る喜びはありません。

ここまでお読みくださり、誠にありがとうございました。

次回予告

次回はオーストラリアの先住民であるアボリジニに伝わる、世界の始祖の女蛇エインガナさまのお話&インタビューを予定しています。お楽しみに~。

見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーから吉岡ヤスさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。


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