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創作未来神話「ガーディアン・フィーリング」10話 絵美とジョニーと周りのひとびと

9話のあらすじ

ジュピターにアドバイスをしてもらいながら、バレンタインデーのメッセージカードを完成させたジョニーは、さっそく「グレイ宅急便」に頼んでカードを絵美のもとへと届けてもらった。この先は、絵美の記録。

10話

日時: 2222年2月14日 バレンタインデー(火星自然創生コロニーにて)

記録者: 絵美(エミ)  マイジェンダー: やや女性 16才

出身地: 日本  趣味: ネコとたわむれること


あたしはそわそわしながら、今日のイベントを待っていた。ジョニーからは「楽しみにしててよ」としか言われていないし、何があるんだろう? 気になって仕方がない。落ち着くために、地球産の紅茶を淹れてリビングルームでそれを飲みながら待っていると、個人ドームのドアにあるインターホンが鳴った。

「まいド! グレイ宅急便でス!」

わあ! かなりお高いけど、火星のコロニーどうしや、地球と火星での極めて短期間で行われる物資のやりとりが出来る、グレイ宅急便だ! ジョニーってば、かなり奮発してるよ!

「どうぞ!」

「お邪魔しますネ」

目の前に、ふっと緑色の肌をした、小さな宇宙人リトルグレイが現れる。

「ジョニーさんからのメッセージカードをお届けに来ましタ」

「わあ! ありがとうございます」

あたしはジョニーからのメッセージカードを受け取った。本物の紙に、直筆のジョニーの文字。どうしよう、すごく嬉しい!

「ジョニーさん、この間のご飯のお礼だそうでス。日本みたいに、チョコが無くてごめんね、とおまけの言葉を預かっていまス」

「ええ! メッセージカードのほうがお洒落だよ! あたしはうれしいな。ところでグレイさん、良かったらお茶でも飲んで行きませんか? ちょうど、今淹れたところなので」

その喜びを分かってもらえそうな、目の前の貴重な実在の相手に、あたしは提案してみた。

「いいノ? それではちょっとだけネ」

わーい! うちにアイドルが来てくれたみたい!

あたしは、リビングルームのソファにグレイに座ってもらって、マグカップに紅茶を淹れて持ってきた。

「ずっと気になってたことを聞いてもいいですか、グレイさん?」

「いいヨ! なんですカ」

あたしから受け取った紅茶をずずっと小さな口ですすり、グレイが聞き返す。

「グレイさんって、あたしたちより姿かたちが、どんな時代でもどんなところでも同じですよね。何でですか? あたしたちが、お魚とか鳥さんの区別がつかないみたいに、違いがあっても分からないってことなのかな」

「ううン。グレイはね、みんな同じひとつのボディから生まれたんだヨ」

「えーっと、人間の科学技術で言うとクローンってこと?」

「そウ! 人間さんみたいに、ひとりひとりの個体に、それぞれ個性の魂、意識体があるのと違うネ。ひとりもグレイ、みんなも同じグレイなんだヨ!」

「わあ。それだとケンカとかもなさそうだね」

「ウン、地球の人間さんはとても賑やかで面白いネ」

「うちだと、すぐ姉とケンカしちゃったりするから」

「ケンカが出来るのも、貴重な固有の意識体があるからだヨ」

「そうかなぁ……」

あ。そうだ。今日はバレンタインデー。地球で、うちの地元の神社にお礼をしに行ってもらったお姉ちゃんに、あたしからビッグサプライズが出来るじゃん。ここにいるグレイにお願いして!

「グレイさんの宅急便は、ここから地球にもすぐに物が運べるんですよね」

「ウン、カップラーメンが食べられる時間で、届けるヨ」

「じゃあ、ひとつお願いします」

何がいいかな。あっ、以前に共用コロニーのパサージュエリアで買った、火星人チョコ! 地球に帰る時のおみやげって思ってたけど、ちょうどいいかも。チョコの原産地は地球だけど、火星で作って売ってることに意味がある、火星のお土産では定番のやつ。

ジョニーにも贈ろう。本命チョコとしてはちょっと心もとないけど、今度ふたりで会えた時に手渡ししようっと。

あたしは、クラゲの頭みたいな黒いチョコの上に、ちょんちょんと目と口がホワイトチョコで描かれていて、そこから伸びた何本もの足が普通のチョコで作られた火星人チョコをグレイに渡した。

「これを、うちのお姉ちゃんに渡してください。神社へお参りのお礼にって伝言をお願いします」

「了解でス! 荷物と、お姉さんへのメッセージとを確かに受け取ったヨ! じゃあグレイは行きますネ。そうそう、今グレイ宅急便は、ドリームゲームで遊んでくれるひとを募集しているヨ! 宇宙船に乗れるから、ぜひみんなでやってみてネ!」

ゲームの宣伝をしっかり残して、グレイは火星人チョコを持って去っていった。

あたしは「コミュニ・クリスタル」でジョニーを呼び出した。

「ジョニー! グレイ宅急便を受け取ったよ! 本当にありがとね、すごく嬉しい」

「そうか、喜んでもらえて良かった」

シルクハットをかぶり、ジャケットをはおった小さなネズミ姿のジョニーがホログラフで笑う。

「今度会えた時には、日本の風習になってるチョコを渡すね! ……それでね、グレイ宅急便がやってる宇宙船に乗れるゲームがあるそうなんだけど」

「ああ! こっちでメッセージカードを受け取る時も、確かにグレイがそんなことを言っていたね。えっ、絵美はゲームに興味が出てきた?」

「なんだかすごく、面白そうだなと思って! ドリームゲームの、お芝居や音楽の鑑賞とかでないゲームの使い方は今いちあたしはよく分かっていないんだけど、宇宙船に乗れて、みんなでやれるっていうから気になって」

「うん、じゃあ僕が遊び方を調べておくよ。一緒に遊べるなら、きっととても楽しいと思うからさ」

「ありがとう、ジョニー。バレンタインのメッセージカード、ほんとに、すごく嬉しかった。じゃあ、準備が出来たらグレイ宅急便のゲーム、やろうね!」

「ああ。……その、これからもよろしく。絵美」

「うん!」

そうして「コミュニ・クリスタル」での通信を終えて、あたしは紅茶のおかわりをした。ジョニーから素敵なメッセージカードが届いて、本物のグレイとお茶が出来たなんて! 今日のバレンタインは、きっといい思い出になるね!

(続く)

次回予告

11話。は絵美の姉、真菜。予定の無かったバレンタインデーに、グレイ宅急便で絵美からのお礼チョコをもらった……。真菜の記録。

どうぞ、お楽しみに~。

※ 見出しの画像は、みんなのフォトギャラリーからkomachiさんの作品をお借りしました。ありがとうございます。


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