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商品開発の天才の発想法「CAS」=「志」の高さでもある

前回ご説明したように、CASは世にある既存商品ではなく、生活者の生活に観点を置く発想法であり、即ち、生活工学的発想法です。つまり、この発想法は現在の世の中の人々(生活者)の生活ニーズとその達成に伴う問題に着眼しているわけです。

これを一言で言うと「世の為、人の為」を考える発想だということになります。

「この商品をいかに売るのか」とか「手持ちのリソースをいかに活かすのか」とか「シェアをいかに高めるか」などの「自社のため」の発想や、「この商品の性能、満足度をいかに高めるのか」という「商品や、消費者(顧客)のため」の発想とは一線を画すわけです。

つまり「志」が異次元の高さにある発想法であるわけです。だからこそ本田氏達は世の中を変えるほどのことを成し得たと私は考えています。

この両者の違いはその志の高さ以外の観点では

・生活工学的発想と人間工学的発想
・ニーズ発想とシーズ発想
・生活者発想と消費者発想

(※上記でもここでも「生活者」と「消費者」という言葉を使い分けましたが、「消費者」は「ある商品を買う」ことや「顧客」であることが前提であるのに対し、「生活者」はそれが前提になっていないことにご注意ください。)
・市場創造と市場奪取
・ブルーオーシャンとレッドオーシャン
・先発発想と後発発想(先行と追随)
・新生活提案と生活水準(商品満足度)向上
・新規商品開発と既存商品改良

などが挙げられます。

ざっくり言ってしまうと、前者は世の中を変えようとする発想であり、後者は世の中に合わせようとする発想です。

「志の高さ」と言うと精神論にも聞こえてしまうのですが、このように観点を変えると、それは戦略論でもあり、戦術論でもあり、技術論にも転換されうるわけです。

通常、後発の方がリスクが低いように思われますが、先発、優位ブランドは、技術力、販売力、ブランド力、マーケットシェアなどにおいて圧倒的に有利な立場にあり、後発、劣位のブランドは早晩行き詰まることも必然です。またあらゆる商品、市場には寿命と限界がありますから、サスティナブルな成長の為には新市場を生み出す商品を開発しなければならないことも必然です。

梅澤先生はCASに該当する商品を「新市場創造型商品」M.I.P.Market Initiating Product)と名付けられ、その成功率(10年以上に渡ってシェア1位を保つ確率)は後者の100倍であることを実証されています。
(梅澤、2001、「長期ナンバーワン商品の法則―「新市場創造型商品」の強さと開発の手法」、ダイヤモンド社)

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つまり、「志の高さ」が「市場での成功」にもつながるというわけです。

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