忘年会ならぬ「be年会」のひらきかた
「be の肩書き」ワークショップを開くときにもっとも大切にしたいことは、言葉で遊ぶくらいの気楽さです。
「わたしのbeの肩書きはこれだ!」と、それを見つけたときの喜びはとても大きいのですが、言語化することの副作用として、言葉に縛られてしまう感覚が伴うのも事実です。
勉強家である僕にとって、自分の中から「勉強家でなければならない」という義務感のようなメッセージがやってきたときは注意するようにしています。むしろ大切にしたいのは「これまでの決断は、勉強家としてどうだっただろうか?」「これからする決断は、勉強家としてどうだろうか?」という開かれた問いの方なのです。
探求の始まりには、beの肩書きは移ろいゆくものという前提でいた方がラクだと思います。そうやって「あーでもない」「こーでもない」と言葉をこねこねしていくうちに、何か響きが違う重要なキーワードと出会う。それが"しっくりくる"、"ストンときた"という感覚なのでしょう。
だからこそオススメは、一年の最後に、定期的に今年のbeの肩書きを振り返ること。そこで今回はbeの肩書きを肴にワイワイする忘年会=be年会のひらきかたをまとめてみました。
be年会のひらきかた
準備
大前提として、beの肩書きに興味のある人に声をかけてください。初めましての人同士でも打ち解けやすいので、いちおう大人数でのアイスブレイクとしても使えますが、個人的には人数よりも濃度が大切だと思っています。最初は自分にとってやりやすいコミュニティに声をかけて、自分も含めて3〜5名くらいの方がいい時間になるかもしれません(もちろんデートにも◎)。
また、お酒をいつから飲み始めるべきかの判断はそれぞれにおまかせします。最初からはっちゃけてもいいでしょうし、対話のときはアルコールなしの方がじっくり聞けるかもしれません。
be年会編
① チェックイン
② 今年の「be の肩書き」候補を選び、共有する
③「be の肩書き」エピソードを語る
④ あとは楽しむだけ!
①チェックイン
年末にかけて仕事でソワソワしている人も多いと思うので、モードを切り替えるための時間を用意します。まずは「今の気分」や 「beの肩書きに興味を持った理由」などを話してみてください。もし時間があれば、「思い出に残っている肩書きやニックネーム」というお題を事前に案内しておいて、それらを共有してみるのもいいで しょう。
②今年の「be の肩書き」候補を選び、共有する
プリントアウトしておいた「肩書きリスト」を配布し、それぞれbeの肩書きを選びます。
まずはすべてを目で追ってみて、ピンときた職業にいくつでも印をつけてい ます。そして二周目で、「今年はこれだったなあ」「別格だなあ」と思うものをひとつ決めてください。
5分くらいで選び終わったら、その理由も含めて軽く共有します。改めて理由を語ってみて、あまりワクワクしないなと素直に思ったら、またリストに戻ってもう一度選んでみてください。
時間があれば、「国語と体育に偏っていた」 というふうに一周目でチェックした肩書きの傾向などについて話してみるのも面白いかもしれません。
③「be の肩書き」エピソードを語る
ひとりの持ち時間を10分くらいとして、前半の5分で、その肩書きが象徴する今年の出来事を語ります。
もし「占い師」だったとすれば、占い師"的"な自分として幸せだなあと感じたことはどんなときでしょうか?「後輩が○○で悩んでいるときに、○○と声をかけたら元気が出たみたいで嬉しかった」というふうに、なるべく具体的なエピソードを話してください。
そのbeの肩書き"的"な自分として、あなたにとっては当たり前でも、2 人以上から「すごいね」と言われたことはありましたか? こういう瞬間こそが幸せだなあ、と思うことはなんでしたか? この人生で、やっておきたいなあ、と思うことと出会ったりしませんでしたか?
もしパッと思い浮かばない、という場合は、ここで5分くらい個人ワークの時間をとって、箇条書きで思い出してみてもいいかもしれません。
後半5分は、グループの全員が質問をしたり、感想をフィードバックします。これを1セットとして、人数分繰り返します。
④ あとは楽しむだけ!
ここからはそれぞれ自由にどうぞ!
グランドルール(注意事項)
最初にお伝えしましたが、beの肩書きは「言葉を用いた遊び」のひとつだと思っています。そこにいる全員が安心して自分のbeを開示し、他者のbeを受け入れるには、呑み会といってもそれなりに場の工夫が必要です。次のグランドルール(注意事項)をぜひ心がけてください。
・他者のbeを評価しない
その人が選んだものに、よいも悪いも、上も下もありません。そこにあるのは、いまその人がそれに惹かれたという深い理由です。評価を手放して、まだ言葉になってない言葉に耳を傾けてみてください。
・他者のbeを揶揄しない
「beの肩書きは"お笑い芸人"だった」とシェアしたとき、深く考えずに「そっかー、じゃあ、ボケてみて」といってしまいがちですが、そのプレッシャーが逆にbeを押し込めてしまう可能性もあります。むしろ、その職業の本質的な意味は何か、をともに探りながら、焦らず急がず、beが立ち上がるのを待ってみてください
・他者のbeに貢献する
他者の話を聞くときは、お互い「何かできることはないだろうか」という気持ちで向き合ってみてください。beが立ち上がるきっかけとなるのは、多くの場合、他者からの思いがけないお誘いです。「"お笑い芸人"の本質を感じるために、いっしょに寄席に行こう」など、be年会のあとにもつづくような、何か約束できそうなことを探してみてください。
はじめまして、勉強家の兼松佳宏です。現在は京都精華大学人文学部で特任講師をしながら、"ワークショップができる哲学者"を目指して、「beの肩書き」や「スタディホール」といった手法を開発しています。今後ともどうぞ、よろしくおねがいいたします◎