#週一文庫「料理王国―春夏秋冬」北大路魯山人

一番面白かったのは、P67 料理人を募る

「応募の資格。日本料理と限らず、美的趣味を持っている人。絵画、彫刻、建築、工芸等、芸術に愛着を持ち、今日まで食物道楽で変人扱いを世間から受けるくらいの人。そうして非常に健康な身体を持った人。」

かつて、星岡茶寮の料理人を新聞広告で募集したときの文面そのままのものらしい。

まず、「日本料理と限らず、」としている通り、
料理そのものを、「美的趣味」の一つに数えていることが面白い。
料理を技術ではなく、美として捉えている表現は初めて見たと思う。

次に、「限らず、美的趣味を持っている人。」としているところが面白い。
食物道楽を解するには、料理の技術が高いだけでは不十分で、
美的観点から物事を見る力が無ければならないという
魯山人の考えの顕れなのかなと思う。

そして、最後に
「変人扱いを世間から受ける」・「非常に健康な身体」を条件としているのが面白い。
あとがきまで読み通していると、当の魯山人と同じような人が望ましいと
書かれているようにも取ることができた。
良い食を摂ることによって、良い生活をする(たっぷりと睡眠をとるなど)ことによって、魯山人は非常に健康であったと言っている。


中でも一番面白いと思った理由は、2番目の処。

先日読んでいた、村上隆「芸術起業論」に、
北大路魯山人は、「作品の周辺の環境を作ることにかけて、彼は世界に通用する一流の芸術家でした」と評されていました。つまり、じぶんが感じたのは、何か一つのことのプロフェッショナルになろうとしたときに、その一つのことの周辺にあるもの、その成り立ち、意味、歴史を踏まえた上で、それらすべてが自らが志すものの方向に揃うよう、整えていくことができる才能が「美」を求めるにあたって重要なものであるのだなということです。

日本料理は、究める対象であるという前提に立った上で、
その日本料理を提供する部屋に飾られた書画、調度品、建築そのもの、お皿などといった、周辺にあるものすべてに気を配る素養を、この求人に於いて要求していたのだろうなあと思ったのです。

櫻田サロンで取り組むインフォグラフィックであったり、
独学で進めているプログラミングであったりしても、
それを究めるにあたっては、その周辺にあるものにも気を配ることの
できた方が、よりよい文脈で発信をすることができるのだろうなあと思う次第です。


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