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#週一文庫

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毎週1冊の文庫もしくは新書を読み、その本の中でじぶんが一番おもしろいと思ったところを引用しながら、「なぜおもしろいと思ったのか?」を踏み込んで解説。 いわゆる書評ともちょっと違う…
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2019年9月の記事一覧

ぼくのマンガ人生 (岩波新書)手塚 治虫

この本は、みなさんご存知のマンガ家「手塚治虫」が、幼少期にマンガと出会い、マンガに助けられ、そしてマンガを描き続けてきた自身の人生について、改めて振り返りながら、自分がどのようにして「マンガ」、ひいてはマンガを通じて「人」と、向き合ってきたかを書き記した一冊です。 「好きだから」で選べるか一番おもしろかったのは、P72 「生命の尊厳」がぼくのテーマ より ぼくは医者になれたらいいなとも考えていましたし、マンガも描きたいと思っていました。そしていよいよ進路を決めなければなら

居酒屋の誕生: 江戸の呑みだおれ文化 (ちくま学芸文庫) 飯野 亮一

この本は、江戸の頃にできてきた「居酒屋」の誕生期について、当時の文献から明らかにしていく一冊です。徳川の時代における禁止令の話や、それでも止めることのできなかった世俗の様子。またどんな風にして飲まれていたのかということがわかるようになります。 変わらない飲み人たち、変わる居酒屋の経営一番おもしろかったのは、P100-101 酔っぱらい天国・江戸 「われわれの間では誰も自分の欲する以上に酒を飲まず、人からしつこくすすめられることもない。日本では非常にしつこくすすめ合うので、

横井軍平ゲーム館「世界の任天堂」を築いた発想力 (ちくま文庫) 横井 軍平、牧野 武文

この本は、横井軍平氏がこれまで関わってきた「マジックハンド」や「ゲームウォッチ」「ゲームボーイ」などといった玩具たちについて、どんな思いで、どんな苦労をして生み出してきたかを語り尽くした一冊です。 ゲームの本質を外に活かす一番おもしろかったのは、P217 218 第5章 横井軍平の哲学 今までは、ゲームの世界で「枯れた技術の水平思考」、つまりある技術をそのままストレートに活用するのではなくて、別の発送のもとに活かすということをやってきたわけです。でも、ゲームの世界はある程

最後の秘境 東京藝大: 天才たちのカオスな日常 (新潮文庫) 二宮 敦人

この本は、奥さんが芸大出身の方が、藝大生にインタビューをしながら書かれた本です。傍から見るとちょっとビックリするような、藝大生エピソードを、いわゆる"一般人"としての著者の視点で掘り下げていってくれる一冊です。 研究旅行一つとっても、一味違う一番おもしろかったのは、P9 はじめに 「何か準備してるみたいだけど、旅行にでも行くの?」 妻はリュックサックにせっせと物を詰めている。 「明日からコビケンなんだ」 「コビケンって?」 「古美術研究旅行。二週間、奈良の宿舎に止まって、