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ベイシー楽曲分析-Basie Straight Ahead

リスニング(聴くこと)が、ビッグバンドをスウィングさせるために必要不可欠な要素だ、と気付いたことから、指導するバンドにカウント・ベイシー楽団の曲を毎週1曲ずつ聴かせようと、リスニングの助けになる楽曲分析を始めました。それを、こちらに掲載していきたいと思います。

今回はこの曲「Basie Straight Ahead (Arranged by Sammy Nestico)」。

1. リスニングのポイント

一見、自然に身体がノッてしまうイージーで心地よいミディアム・ファースト・スウィング(およそ200BPM)ですが、サミー・ネスティコらしい多彩で緻密なオーケストレーションが素晴らしい楽曲です。

注意して聴くべき点:リード・アルトサックスが自由にジャズ・フィーリングを加えている点。トロンボーン・セクションが歯切れよくリズムを刻んだり、伸びやかなユニゾンを吹いている多彩さ。ブラス・セクションの密集配置(Classic Basie 4-Part Voicing)から聴こえてくる内声のぶつかり(短2度や長2度)とその効果。

2.形式

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1コーラスはAABAの32小節で構成されています。Shiny Stockingsと同様、各[A]の4小節目にはIIImからIImへのディセンディング(下降)・ディミニッシュ・コードがあり、お洒落さを醸し出しています。アンサンブルする際には、毎回ここで均等なディミニッシュの響きを出せているか要注意です。

全体的にはC→Eb→Fと効果的な転調を2回します。エンディングは2-5-3-6の4小節のターンアラウンドを繰り返し、曲全体を回想するかのような様々なオーケストレーションが施されていて、「名残惜しい感」が見事に表現されています。

3. 楽曲分析

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冒頭は12小節のブルースのコード進行から。1コーラス目のアルトとテナーのユニゾンは、時々お洒落に2声に分かれます。[B]はエンディングにも出てくる特徴的な1拍半フレーズが登場し、リズミック・テンションを与えています。次の調のドミナント・ペダルから、Key of Fに転調し、最初のクライマックスを与えます。

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転調後のトゥッティ(全合奏)は9小節間、つまり2回目の[A]の1小節目に食い込みます。そこからテナー・ソロが始まるという「粋」さ。

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3コーラス目はトゥッティで始まりますが、3小節目に突然ブレイク、そしてサックス・ソリが登場します。[B]に入ってからサックス・ソリは徐々に抜けていき、ピアノ・ソロがスタート。2コーラス目同様、[A][B]の頭で役割交代しないところが、サミー・ネスティコのハイセンスなところでしょうか。曲の流れを止めず、最後まで聴く人を惹き込んでしまします。

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4コーラス目は2回目の[A]で全音上のKey of Fに転調しますが、各[A]の前半4小節はほぼ同じシークエンスです。一種のシークエンシャル・モジュレーション(同じシークエンスを利用した転調)と言えるでしょう。絶妙です。

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4コーラス目のラスト4小節がターンアラウンドとなって、曲全体を回想するかのような様々なオーケストレーションで繰り返されます(2.形式を参照)。3回目に1コーラス目の[B]の1拍半フレーズが再登場します(ハーモニーが違う点に気付きましたか?)。最後は2小節間のブレイクにベイシーのピアノ・ソロが登場し、全合奏で幕を閉じます。

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