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2回 靖国通り 大カーブの謎

 このコラムは、StudioBpm.-kandaスタッフによる街歩きレポートです。
 スタジオ のある神田の町をより知りたいと、日々界隈を歩いて、新たな発見やちょっとした情報を記していこうと思ってます。
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靖国通り「駿河台下」大カーブの謎

 5月というのに雨模様のこの頃ですが、ちょっと歩いてきました。

 わたくし、日ごろ通勤には都営線を使っていて、神保町で新宿線に乗り換えて小川町、というのがいつもの通勤経路。ただ、早く家を出てしまったときなどは、なるべく歩くようにしてるんです。

 本日は営業自粛中なので、この経路を散歩してみました。白山通りを神保町の交差点まできて、靖国通りを左折。ひたすらまっすぐいけば、およそ1.1㎞で、スタジオちかくの淡路町交差点に至ります。

 靖国通りを直進すれば淡路町、のはずなのですが、なぜか神保町から淡路町付近は見通せません。ふだんたいして気にかけていないながら、「直進してれば楽なのに、なんで遠回りさせられなきゃならないの!」と、通るたびに損したように思ってたんです。

 今回はその調査もかねて、周辺に足を伸ばしてみました。

 まず白山通りを神保町で左折します。するとそこは靖国通り。市ヶ谷駅からほぼまっすぐに東西に走る通りです。
 
 左折すると、右手には古書店街。理工学専門だからちょっと縁遠い「明倫館書店」、国文学から美術・洋書・演劇関係と幅広い「一誠堂書店」、そしてアートや文学に強い「小宮山書店」、さらに新刊書店の「書泉グランデ」があり、その先には和本・浮世絵・古地図の「大屋書店」と続きます。

 神保町に戻って、今度は左手を見ていきましょう。まずはドトール。その先左手路地には私のすきな「壱眞珈琲店」、その先が版画・浮世絵の「山田書店」、そして老舗洋食の「ランチョン」と、その地下にカレー激戦区の中でもイチオシ「共栄堂」。そしてマックがあって三井住友銀行へ。

 問題はここ、右は大屋書店、左は三井住友銀行の付近。それまで直進していた靖国通りが、急に右に曲がります。

駿河台カーブ(小)

 そこから駿河台下の交差点を越えるまで直進しているように見えますが、じつはゆっくりと弧を描きながら、こんどは左に向きを変えていくんです。この左曲がりのカーブは須田町1丁目の交差点までつづき、その先はまた直線道路です。地図をみると驚くことに、問題のカーブが始まる前の通りと、曲がり終えたあとの通りは、みごとに直線を描いています。

 つまり、新宿方面から直進していた靖国通りは、問題の地点から須田町一丁目までの約900メートルの間、邪魔者を避けるように右に膨らんだ弧を描いていることになります。

 さて、ではこの邪魔者は何なのでしょう。
 ヒントは問題のカーブの先にある交差点名、そう「駿河台下」に答えがありそうです。

 そもそもこの駿河台、千代田区の説明にはこうあります。
「(駿河から移住してきた徳川家康の旗本たちが)江戸城に近く富士山が望めるこの地に多く屋敷を構えました。駿河衆が住んでいたことや駿河国の富士山が見えたことなどから、この地は駿河台と呼ばれるようになり、多くの武家屋敷が立ち並ぶ地域となりました」(千代田区設置の「駿河台西」町名由来板から)

 駿河台とは、駿河衆の住む高台という意味だったんですね。
 でもあらたな疑問が――。
 高台って何なの?

 これを読みとくのにちょうどいい資料があります。地形図を駆使して東京の町を立体的に考察している労作「江戸・東京の坂道」(http://yeddo-aruki.b.la9.jp/index.html)というHPに掲載されているものですが、この図を見ると、23区北部には北西方面から南東方面にかけて、いくつかの台地がせり出しているのが分かります。

神田地形図

 東から上野台地、本郷台地、白山台地、小石川台地などが並んでいるのです。よく文京区は「坂道の町」と呼ばれますが、それもそのはず。区内に5つの台地が並んでいるのだから、当然かもしれません。

 さて、駿河台がどこかといいますと、この本郷台地の最南端。もとは神田山と呼ばれていた高台が日比谷入江の埋め立てのため切り崩され、あわせて本郷台地南端を東西にえぐる形で神田川が開削されることに。その神田川の北側が湯島台、南側にポツンと孤立しているのが駿河台と呼ばれるようになったそうです。

 東西に走る靖国通りは、この北から貼り出した駿河台を迂回している、というわけです。

 知ってしまえばたいした謎でもありませんが、気になっていた靖国通りの大カーブ。その由来を知って、何となく腑に落ちました。

 次回からはイライラすることなく歩けそうです。


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