見出し画像

意図しない美しさ

雨が止んだので、散歩がてら町の小さな商店にお菓子を買いに行く。濡れたアスファルトが乾き始めて独特の香りがする。

道の脇に草花が咲いていた。白い花びら。硬いアスファルトの隙間をかいくぐって頑張って咲いている。

思わず注目してしまう。少し離れた空き地には同じ種類の花がたくさん咲いているのに、過酷な状況にある花の方に興味が向く。

その場所に花が咲いていることが、やや異質であるから。だから応援したくなる気持ちになる。

応援したいという気持ちだけでなく、なぜか他の花より美しく見える。

硬いアスファルトの間。その場所に花があることを意図していなかった。だからこそ、より美しく思えてしまう。


誰しも予定通りに事が進み、安心感を得たいと思う。しかし美しいものや感動するものに対しては、予想外のものを求める。


そこに新しい発見を見出すからだろうか。

人は自分の中にない感性、発想をいつも心のどこかで求める。だからこそ芸術はこれほどまでに多岐にわたり発展していったのだと思う。


普段の生活の中で、いつも通りの帰り道で。意図しない美しさに出会えるなら。そこから新しい感性。芸術が生まれるかもしれない。

そういえば一昨年の11月。ミツバチが紅葉に止まっているのをみかけた。田舎なので、もうすでに空気は冷たい季節だった。

そんな時期なのにミツバチを見かけて少し驚いた。しかも鮮やかな紅葉に止まっている。恐らくは寒さで動けなくなっていたのだろう。

冷たい空気。紅葉。ミツバチ。
この意図しない出会いを、本当に美しいと思った。


予定通りは安心だし、快適だ。けれどたまに散歩するときは、自分の意図しない何かとの出会いがあると良い。
できれば意図しない美しさであれば、なお良い。

(2019年11月 ミツバチと紅葉)






この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?