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2018年のJoe Kelly投手のスライダーとカーブ

 今回は『アメリカン・ベースボール革命』という書籍に気になる記述があったので少しデータを見てみたいと思います。

2018年のJoe Kellyのシーズン中の変化

 面白い本ですので一読を勧めますが、今回はエピローグに登場する2018年のJoe KellyとHeath Hembreeという2人の投手の変化球について着目していきます。

 2人はスライダーを得意とする投手だったのですが、シーズン中に次第にフォームが変化し威力が落ち始めます。

「4月に投げていた球は大きく曲がっていたのに。“小さなカッター”くらいになり、バットに当てられるようになっていた」

 という記述が本文にはあります。所属元のRed Soxは彼らのフォームを修正するのではなく、現状のフォームにあったカーブの割合を増やすことで乗り切ります。

 『アメリカン・ベースボール革命』の本題は、投球フォームのようなこれまで測定できなかった領域まで手が届くようになったところにあるのですが、今回はこの2人のうちJoe Kelly投手のシーズン内のスライダーとカーブの変化をStatcastデータから見ていこうと思います。Statcastデータでどの程度変調と改善を見ることができるのかというのがテーマになります。

スライダーとカーブの投球割合

 最初に2018年の月ごとのスライダーとカーブの投球割合と、それぞれの空振率の変化を見ていこうと思います。このデータは『アメリカン・ベースボール革命』の本文中にも出てきますが、今回は左右の打者で分けたデータを以下の図1に示します。

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 こちらは投球割合のデータです。Joe Kelly投手の場合、対左打者へのスライダーはシーズンの早い段階で使わなくなっており、対右打者では8月にスライダーとカーブの投球割合が逆転しています。

 次に、スライダーとカーブの空振率を以下の図2に示します。

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 左打者に対しては、スライダーとカーブの空振率にそれほど違いはありません。右打者には、投球割合が逆転する1月前の7月から空振率は逆転しています。

ボールの変化量の推移

 次に、ボールのリリースポイントと変化量について月ごとの変遷を見ていきたい思います。まずはスライダーの水平方向の変化を下図に示します。

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 横の軸は水平方向のリリースポイント位置を、縦の軸は垂直方向のリリースポイントの位置を表しています。プロットの色でスライダーの水平方向の変化の大きさを表しています。シーズンの平均をグレーで、そこからプラス方向への変化(左打席方向)で赤色、マイナス方向(右打席方向)への変化が大きいほど青色になっています。

 プロットを見ると、8月と9月は7月以前と比較して、リリースポイントが低くなっているのがわかります。ボールの変化量はシーズンを通じてグレーで水平方向への変化はほとんどないといえます。

 同様に垂直方向への変化を主計したものを下図に示します。

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 垂直方向への変化ではプロットの色に変化が見られました。序盤は赤のプロットが目立ちますが、リリースポイントが低くなる8月以降は青いプロットが目立ち、ボールが沈むような変化になってきています。

 次に、カーブで同様の集計をしたものを下図に示します。

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 カーブの場合は、スライダーと同じく、8月以降にリリースポイントが低くなっていることを確認できます。そして、下図の垂直方向(pfx_z)への変化に大きな違いはありませんが、上の図の水平方向(pfx_x)への変化が8月以降赤いプロットが増えたことで確認できます。

投球結果の推移

 シーズン中のリリースポイントの変化とボールの変化量を確認できましたので、併せて投球結果のプロットも確認したいと思います。下図にスライダーとカーブの結果をそれぞれ示します。

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 プロットの位置がリリースポイントの位置を表しているのはボールの変化量の集計と同じで、ここでは投球の結果によってプロットの色を変えています。

 スライダーでは6月以降に空振を表す赤のプロットが減っています。一方カーブは、空振が8月以降にやや増えているでしょうか。

まとめ

 以上、Joe Kelly投手の投球の変化を見てきました。Statcastデータでも、それなりに変調を確認できたかと思います。次回は、Heath Hembree投手のデータを同じように見ていこうと思います。

タイトル画像:いらすとや

データ



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