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海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版

<イントロダクション>
海の上で生まれ、生涯一度も船を下りなかったピアニストの伝説
『ニュー・シネマ・パラダイス』のジュゼッペ・トルナトーレ監督と映画音楽の巨匠エンニオ・モリコーネがタッグを組んだ不朽の感動作『海の上のピアニスト』。1999年に日本で公開され多くの映画ファンを魅了した本作が、約20年の時を経て、4Kデジタル修復版、そしてイタリア完全版として再び劇場公開される。
本作はトルナトーレ監督にとって初の英語作品であり、現代のイタリアを代表する名匠として、その名を世界に知らしめた作品。一つの時代の終わりと新しい時代の始まりの狭間で揺れる、一人の天才ピアニストを描いた現代の寓話とも言うべき映画史上に残る傑作である。

大西洋を巡る豪華客船の中で、生後間もない赤ん坊が見つかった。彼の名は1900=ナインティーン・ハンドレッド。世紀の変わり目を告げる1900年に因んで名付けられた。彼は船内のダンスホールでピアノを演奏し、類稀な即興曲を次々と作り出していった。そんなある日、彼は船内で出会った美しい少女に心を奪われてしまう。彼女が船を去った後、断ち切れない彼女への想いから人生で初めて船を下りることを決心する…。

『海の上のピアニスト 4Kデジタル修復版&イタリア完全版』公式サイト

2020年8月22日 池袋グランドシネマサンシャインにて鑑賞。

豪華客船という限られた世界で、戸籍や出生記録もない主人公1900がピアニストとして才能を開花させ、どのように成長していくのかを乗船してくる様々なキャラクターとの交流と共に描いたヒューマンドラマ。
1900は名優、ティム・ロスが演じているが、外の世界を知らないため挙動に特徴がある様子や、純粋無垢な役柄をみごとに表現している。タランティーノ映画の常連として知っている方はある意味衝撃的な演技を見ることができるかもしれない…。笑
監督は『ニュー・シネマパラダイス』 『マレーナ』で有名なイタリアの巨匠ジュゼッペ・トルナトーレ。音楽が注目されることが多い本作であるが、モノクロ映画で見たことがあるような20世紀初頭の古き良き時代のアメリカ&イギリスをノスタルジックに描いている気がする。4Kデジタル修復版ということで画面のカラーリングをやり直したそうだが、画面が綺麗になるのと同時に、よりフィルムの色合いが強く見え、1999年に製作された作品というイメージが一層不自然な感覚に陥った。
また豪華客船の美術は素晴らしく、一見の価値あり。狭くて汚い二等船室にいるのではないか、と錯覚する。ボイラー室や機関室など機械的なセットもSF映画並みにリアルに作り込まれていると思う。
そしてこの作品のテーマともなっている音楽を担当するのは本年7月に逝去したエンニオ・モリコーネ。普段ジャズやクラシック音楽を聴かないが、とてもキャッチーが多く見終わった後でも耳に残るメロディを生み出している。1900が唯一録音をする“Playing Love”はぜひ劇中で聴き入って欲しい。「映像と音楽が合わさる」ということの素晴らしさを体感できる唯一無二のシーンである。

この作品は音楽的なアプローチが大きいイメージだが、1900が船から降りられない&降りない理由には、情報過多になってしまった現代社会へのメッセージが込められていると思う。少しネタバレにもなってしまうが最後にその部分のセリフを記載する。

「ピアノの鍵盤には限りがある。
でもピアノで人が紡ぎ出す音楽には限界がない。そこがとても好きだ。
もし君が僕をここから連れ出して、無限に鍵盤があるピアノの前に座らせたらとても僕は弾けない。
限りがなさすぎる。
ニューヨークの街を目の前にした時、至る所に道があり、どの道を行けばいいのかわからなかった。
その中からどうやって一つだけ道を選べっていうんだ!?
選択肢がありすぎる。考えただけで頭が痛くなるよ。」
  ※映画を観て、覚えている限りの記憶で書いております。

本作は是非音響の良い映画館で!

( Y.K )

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