ウエイトトレーニングがトライアスロン競技におけるBike後のRunのランニングエコノミーの改善に及ぼす影響!?
下記の記事では、トライアスロン競技パフォーマンスを決定付ける種目(Swim or Bike or Run)は何であるかということについて、過去のレース結果から分析した研究によってオリンピックディスタンスでは最終種目であるRunパフォーマンスの良し悪しが競技結果を決定付ける可能性があり、アイアンマンディスタンスではBikeパフォーマンスとRunパフォーマンスの良し悪しが競技結果を決定付ける可能性があると示唆されていることを紹介した上で、トライアスロン競技パフォーマンスを向上させるためには、BikeトレーニングとRunトレーニングを優先すべきであると述べました。
しかしながら、トライアスロン競技に関する科学的知見は、まだまだ十分ではなく、改めてトライアスロンに関する先行研究をPubMed(論文検索サービス)で検索してみると意外にも少ないことが分かると共に、特にトライアスロン競技パフォーマンスに関連する生理学的要因・指標やトレーニングに関する研究は、まだまだ不十分であり、BikeトレーニングやRunトレーニングを優先させるべきであるという確固たる根拠がないことが分かります。
そのような状況を踏まえた上ではありますが、トライアスロン競技(オリンピックディスタンス程度の距離)パフォーマンスに関係する生理学的指標について分析した研究(1)において、男性トライアスリート、女性トライアスリート共にRunning Speed@VT(換気性作業閾値レベルの走速度)が競技パフォーマンスに関係していると示唆されていることから考えれば、トライアスロン競技パフォーマンスを向上させる上でRunトレーニングを優先すべきであることは支持されるといえるでしょう。
但し、単純にRunトレーニングを実施し単純なRunパフォーマンスを高めれば良いという訳にはいかないと当方は考えます。
なぜなら、トライアスロン競技はSwim、Bike、Runを連続して行う競技であり、トライアスロン競技におけるRunは必ずBikeの後に行われますので、例えばオリンピックディスタンスでいえば単純に10kmランニングの能力を高めれば良いという訳にはいかないと考えられるからです。
これは、実際にトライアスロンレースに出場したことがある人には容易にご理解頂けると思いますが、オリンピックディスタンストライアスロン競技のRun(10km)は、10kmロードレース中の身体感覚、身体状況、疲労感とは異なり、かといってハーフマラソンやフルマラソンの残り10kmの身体感覚、身体状況、疲労感とも異なるものであるといえます。
そのことは、トライアスロン競技の研究ではありませんが所謂「ディアスロン競技(Run-Bike-Run競技)」のシミュレーション実験を行った研究(2)においてBike後のRunはVT(換気性作業閾値)に相当するランニングスピードが低下していることが示されると共にランニングエコノミーも低下している可能性が示唆されていることからも理解出来るといえるでしょう。
そして、上記のシミュレーション実験結果から考えれば、デュアスロン競技やトライアスロン競技において、その競技パフォーマンスを向上させるためにはBike後のRunのランニングエコノミーを低下させないことが重要であると考えられ、それは単純なRunトレーニングによって単純なRunパフォーマンスを高めれば良いということではなく、トライアスロン競技におけるRunという視点から戦略的なRunトレーニングが必要であると考えられます。
恐らく、今現在も多くのトライアスリートがBike→Runを連続して行うトレーニング(ブリックトレーニング)やデュアスロン競技形式のトレーニングを行っていると思われ、こうしたトレーニングはまさにトライアスロン競技パフォーマンスを向上させる上で非常に有効であるといえる戦略的なRunトレーニングであるといえますが、当方はS&Cプロフェッショナルとしての立場から敢えて「ウエイトトレーニンがトライアスロン競技パフォーマンスの向上に効果的である」という提案をしてみたいと考えています。
なぜなら、近年の研究結果によって、高強度ウエイトトレーニングやプライオメトリックトレーニングがランニングエコノミーの向上に有効であることが示唆され、更に、ウエイトトレーニングはBikeのペダリングレートの改善にも有効であることも示唆されており、これらのことからトライアスリートが高強度ウエイトトレーニングやプライオメトリックトレーニングを実施することで、Bike及びRunの動作効率の改善、向上をもたらしトライアスロン競技パフォーマンスの向上に結び付くといえるかもしれないからです。
残念ながら、恐らく「ウエイトトレーニングがトライアスロン競技におけるBike後のRunのランニングエコノミーの改善に及ぼす影響」というようなテーマの研究は行われていないと見受けられますので、ウエイトトレーニンがトライアスロン競技パフォーマンスの向上に有効であるとは断言出来ませんが、諸機関と連携し、このようなテーマの研究を行ってみたいと考えています。
ご興味ある方、関係者の皆様がいらっしゃいましたら是非とも以下メールアドレスまでご一報下さい!
katsuhiko.noguchi@gmail.com
参考文献:
1.Sleivert GG , Wenger HA;Physiological predictors of short-course triathlon performance.,Medicine and Science in Sports and Exercise,25(7),1993:871-876
2. Nathaniel T. Berry, Laurie Wideman, EdgarW. Shields,Claudio L. Battaglini;The Effects of a Duathlon Simulation on Ventilatory Threshold and Running Economy.,Journal of Sports Science and Medicine,15,2016:247-253
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