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管理会計担当者(FP&A)組織が日本だけ違う?

日本だけ違うものは世の中にたくさんありますが、管理会計を担当する人の組織も日本企業だけ違います。
管理会計というのは何かというと、外に公表するための会計(財務会計)ではなく、社内で経営のために使う会計です。例えば、戦略をたて、中期経営計画を作り、年度予算を作って管理することが管理会計です。また、投資対効果を計算して意思決定することも管理会計です。
日本企業では、経営企画が中期経営計画のとりまとめ、経理部は単年度予算の集計、事業部の事業推進・事業管理部などが事業部の事業計画や予算管理をしており、ばらばらです。日々の意思決定の支援のようなことはだれもやっていない(事業部長が自分で決める)会社がほとんどです。

これって、日本特有の事象なのです。そもそも、メンバーシップ型採用、ジェネラリスト育成の日本的経営のもとでは、管理会計を担当する専門家を育てる風土がありません。

さて、日本以外の国ではどうなっているのでしょうか?

例えば私が長年勤めたアメリカの会社では、FP&A(Financial Plannig &Analysis)という管理会計担当者が、本社にも事業部門にもいて、管理会計とファイナンスのプロフェッショナルとして中期経営計画の策定、年度予算のとりまとめ、業績目標達成と意思決定の支援をします。ボスはCFOです。

さて、海外ではどのような人が管理会計を担当しているのでしょうか。

Goretzki Lukas・Strauss Erik (Eds.). (2018). The Role of the Management Accountant: Local Variations and Global Influences. Florence: Routledge Ltd.

という書籍がありまして、世界各国の管理会計担当者(Management Accountants)の役割変化について論考をまとめた書籍を発刊しています。

 さて、この度、わたしがこの書籍を参考に各国の管理会計担当者の役割の違いをまとめた論文が公開されました。https://www.agulin.aoyama.ac.jp/repo/repository/1000/22220/

アメリカやイギリスでは、IMA, CIMA, AFPなどの管理会計の仕事に従事する人たちを支援する団体があり、管理会計資格や教育プログラムがあります。その団体が、管理会計担当者の社会的地位を高めているので、報酬も高くなっているそうです。

フランスやドイツではそのような団体はないのですが、それでも企業の中で”コントローラー”という名称で管理会計を担当する人たちが認識され、CFOの下で組織化されています。英米ほど社会的地位が確立されているわけではないですが、大学や大学院で会計や経営学を学んだ人たちが就く専門職です。

日本では、新卒一括採用され、大学で会計や経営学を学んだ人が管理会計の仕事に就くとは限りません。研修・教育は企業内で行われ、管理会計の資格はありません。転職しないのが一般的ですから、資格は必要とされていませんね。管理会計を担当する人たちが一つに部署にまとまっていないので、体系だった教育や、明確な役割やキャリアパスが設定されていないのが普通ですね。特に企業内での地位が高いということはないでしょう。

さて、上記の違いは必ずしも「いい、悪い」、「進んでいる、遅れている」というものではありません。それぞれの国の文化や社会環境の違いから生まれているものです。ただ、日本企業で管理会計を担当している皆さんにとって、必要な管理会計とファイナンスの教育を受けてスキルをつけ、専門職として能力を高めると、より企業業績に貢献できる可能性は高いです。




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