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メタルにおける打ち込みドラムの音作り(スネア編)

メタルミュージックでのドラムの音色は、他のロック系音楽とはだいぶ聞こえ方が違いますよね。やたらアタックが強調されたキックであったり、バスドラムやタムと音色の変わらないようなスネアだったり。
色々あると思いますが、打ち込みのドラムでの音作りおすすめ設定の一例を紹介していきたいと思います!
前回のバスドラム編に続き、今回はスネアです。
※バスドラム編については下記です↓

スネアの処理

スネアのキットは何を選ぶか?

無限か?というくらい選択肢があるのがやはりスネアですね。またメタルミュージックでも年代やジャンルによってかなり定番的な音が異なると思います。重めのサウンドであればGretschやPearlあたり、Ludwigなんかは割とナチュラルな感じの音のイメージがあります。あまり高音寄りのチューニングでなければなんでも良いと思います。

スネアの音作りでは何をする?

基本的にはバスドラム同様EQ、コンプレッサー、サチュレーションの3種類です。スネアはこれに加え、パラレルにもう1chを追加してパラレルCHの方に追加でコンプとリバーブを入れます。

スネアのEQ

Snare-EQ

ポイントを低い周波数から順に書きますと

  • 80Hz〜90HzあたりLPF: 余分な低域を削っておきます。12dB/octのカーブで良いかと思います。

  • 200Hz付近:スネア低音アタックのいい感じのところと、ギターの低音の肝になる周波数帯域がかぶるケースが多いです。-1dB~-3dB程度のゲイン設定で低音のアタックを少し抑えます。

  • 400~500Hz付近:スッキリドンシャリなスネアのEQのポイント部分です。-6dB〜-10dB程度下げておいて良いと思います。

  • 1kHz〜2kHz付近:すこし高めの中域になります。下げるとドンシャリ感が強まりメタルっぽくなります。ナチュラルな感じのドラムサウンドを狙うなら、この帯域をあまり削らないのが良いです。

  • 4kHz〜5KHz付近:高音のアタックがうるさい場合には下げておくと良いです。

  • 7kHz〜8kHz:色々な楽器の高音が集結する周波数帯なのでスネアにおいては下げておいて良いでしょう。この部分のスネアは「ビチビチ」いう高音のケースが多いので耳障りな場合には下げておきます。

  • 15kHz付近:ローパスフィルタで高域を削ります。ここで少しゲインを持たせて、抜けをよくするのも良いです。

曲やドラムキット自体の音質にもよりますが、上記を参考に適宜周波数をずらしたり、減衰量を変えたりすれば良いかと思います。
EQのカーブが「スマイリーマーク」みたいな形にしてみるのがメタルっぽいスネアサウンドになるポイントかもしれません。

スネアのコンプ

スネアに使うコンプレッサーは特にメタルにおいてはしっかり低音のアタックを拾ってやる必要があると思いますので、SSLバスコンプ系やヴァーサタイルに使えるデジタル系コンプレッサーがおすすめです。
設定のポイントは

  • Ratio = 4:1〜6:1程度

  • Attack = 25msec〜35msec

  • Release = 150msec〜250msec程度

  • ゲインリダクション値が一発単独でなる時は5dB程度、連打などでの最大リダクションで10dBくらいになるスレッショルド設定(コンプに入ってくる音量によります)

  • Makeup = 5dB〜7dB程度

サチュレーション

Snare Saturation

音のキャラクターにかなり影響します。大体下記のようなイメージです。

  • クリアなアタック音にしたければ低い周波数帯域はあまり歪ませない

  • 全体を歪ませると中高域が広がったようなワイルドな音になる。

上記の画像のFabfilter Satrun2などのマルチバンドディストーションがプラグインとしてはおすすめです。歪ませた音へのEQのかけ方でかなり全体的な音色が変わってくるとおもいます。ここは完全にどのような音にしたいかの好みの部分になるので、音をききながら調整すると良いと思います。

スネアのパラレルチャンネル

Snare -para

パラレルチャンネルの意味とは

モダンメタル系だとスネアの低音アタックはとても重要なので基本のスネアのチャンネルは基本的にはそこに注力します。そこで作った音をパラレルのスネアCHにセンドします。
パラレルのスネアのチャンネルではコンプとリバーブをかけ、奥行きを出します。

Snare-Para-comp

パラレルCHにはFET系の反応の速いコンプで、スネアの高音成分を持続させます。おおよその設定は下記です。

  • アタック:0.5msec〜1msec程度

  • リリース:50msec〜70msec程度

  • 3dB~5dBくらいのリダクションになるようなスレッショルド設定

サチュレーションで歪ませるのもありです。そしてここにリバーブを深めにかけます。

Para-snare-Reverb

上記は一例ですが、リバーブMix100%に近い状態で良いと思います。Valhalla
Roomはクリアな音質でドラムのリバーブにはおすすめです。

まとめ

ドラムのみならずスネアの音色は曲全体の印象を左右する最重要ポイントになります。数字や波形を見ることも重要ですが、曲全体で聞いてみて都度修正していく音の作り方が良いと思います。
今回の特にスネアのパラレルチャンネルへのコンプとリバーブはあまり一般的な手法ではないかもしれませんが、メタル曲においては良い効果があると思います。
基本のスネアチャンネルでしっかりとした低域アタックとキャラクターを、パラレルチャンネルで高音成分とリバーブによる奥行きを出せるようになります。

余談:どこまでキット単体のチャンネルで音を作り込むか?

メタル系のドラムに限りませんが、ドラムセット全体の音のキャラクターに大きく影響する部分として”ルームマイク”があります。各キット単体の音作りのあとルームマイクの音をミックスすることで、ドラムとしてのまとまりと最終的なキャラクターが決まります。
逆にいうと各キット毎の音質調整の段階では最終的なドラムの音にはなりません。最終形には後工程で行うことを前提に各キット単体チャンネルの音は少し中音域や厚みが不足したような音に聞こえると思います。


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