「新商品発表会」の現在形──体験が共感を呼ぶインタラクティブなPR事例
「新商品発表会」といえば、かつては企業がメディアや得意先に対して新製品を一斉に紹介する場でした。しかし今日ではその形態が多様化し、一般消費者の参加も視野に入れた、よりインタラクティブで参加型のPR施策が増えています。本記事ではそういった「現代の新商品発表会」とも言えるユニークなPRイベントの事例を5つ紹介します。
味の素「冷凍餃子フライパンチャレンジ」- 消費者の声から生まれた商品改良とPR
「冷凍餃子フライパンチャレンジ」は、「味の素の冷凍ギョーザがフライパンに張り付いた」という1件のSNS投稿(元投稿は削除済、リンク先はそれに対する味の素社のリプライ)から始まった、商品改良兼PRプロジェクトです。
味の素は、SNSなどを通じて消費者から「ギョーザが張り付いたフライパン」を集め、分析することで商品改良につなげ、その様子を特設サイトやnoteで検証の様子を発信しました。
そして改良後の新商品が完成したタイミングで、体験イベント「みんなの、新『ギョーザ』焼き体験会」を開催。参加者たちは新旧ギョーザを実際に焼き比べて、新しい冷凍ギョーザの優位性を実感しました。一見ネガティブな消費者の声を逆手に取り、商品開発への真摯な姿勢を消費者に示しながら、新しい商品のPRにつなげた好事例です。
丸亀製麺「食べられない試食会」- 意表を突くコンセプトがSNSで話題に
丸亀製麺は、人気メニュー「タル鶏天ぶっかけうどん」の復刻を記念し、オンラインライブイベント「#丸亀製麺食べられない試食会」を開催しました。
事前の調査で、同商品はアニメやゲームに興味のある層から人気があると判明したことから、そのファン層にアプローチできるよう、人気声優の木村良平さんや田所あずささんをゲストに招きました。
このイベントでは、「試食会」と銘打ちながら、会場にいるゲストが実際にうどんを食べることができない、という意表を突くコンセプトを採用。その意外性により、SNSを中心に話題が広がっていきました。
さらにイベント終了後には「深夜の飯テロ動画」と題し、声優ゲストを起用した動画を配信。ターゲット層のあいだで長く話題に上り続けるための工夫がなされています。
花王「暗闇茶会」- 五感を研ぎ澄ます特別な体験の提供
花王は、「n/36500 by MegRhythm」ブランドの新商品発売に合わせて、東京国立博物館内の茶室で「暗闇茶会」と題したユニークなイベントを開催しました。
参加者は「蒸気でホットアイマスク(無香料)」で視覚を遮断した状態で、新商品の練り香水「とろけるソリッドパフューム 〜月の満ち欠け〜」を体験。
香りを聞く「聞香」の考え方をもとにしたこの企画は、商品が持つリラックス効果を最大限に体験できるよう設計され、ブランドの世界観を消費者に届ける機会となりました。
日産自動車「バーチャル発表会・試乗体験会」 - メタバースを活用した次世代の車体験
日産自動車は、新型軽電気自動車「サクラ」の発表に際して、バーチャル空間でのPRイベントを実施しました。VRプラットフォーム「VRChat」上に専用の仮想空間を構築し、参加者はアバターになってその空間に入ることができます。
この仮想空間内では、「サクラ」の詳細な内外装が再現されており、実際に乗り込んでドライブする体験ができるようになっています。ハンドル操作はもちろん、アクセルやブレーキの踏み応えまでリアルに再現されていて、まるで実車に乗っているかのような感覚が味わえます。
発表会自体もこの仮想空間内で行われ、開発者自らがアバターになって製品の紹介を行うといった、まったく新しい形のプロダクトコミュニケーションが実現されています。
アサヒビール「新スーパードライ号」 - 飛行船と連動したオムニチャネル発信
アサヒビールは「新スーパードライ」の発表に合わせ、大規模な認知拡大キャンペーンを実施しました。かつて話題を呼んだ「スーパードライ号」の飛行船を「新スーパードライ号」として復活させ、日本国内の主要都市上空を飛行させました。
この飛行船の運行に合わせ、SNSでは「#新スーパードライ号を探せ」と題したフォトキャンペーンを展開。飛行船をとらえた写真をSNSに投稿すると、抽選でノベルティ商品がもらえるなどのインセンティブが用意されていました。
さらに、飛行船からは新商品のCMを空撮した映像をリアルタイムで配信。公式ホームページでもその映像に加え、飛行船の軌跡を追跡できるスペシャルコンテンツを公開するなど、デジタルとリアルをシームレスに組み合わせたプロモーションが展開されました。
体験と参加による双方向のアプローチへ
従来の新商品発表は、メディアや既存顧客に向けて、主に製品の特長や優位性を一方的に伝える場でした。しかし近年は、一般消費者も含めた多様なターゲットに商品を実際に体験してもらうことで、その価値を実感させるアプローチが主流になってきています。
さらに、開発者の思いに触れる機会や、体験を通じた参加者同士の交流の場を設けることで、商品を介したコミュニティの形成にもつながります。
こういったインタラクティブなコミュニケーションは、単なる商品PRのレベルを超えて、ブランドへの愛着醸成、顧客リレーションシップの構築にもつながってゆくものです。ぜひ、今回取り上げた事例を今後の施策のヒントにしてみてください。