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生きのびるためのアーバンデザインを探して(URBANWORKS・後藤良子さん)

東京、日本橋小網町。新しいものと昔からあるものが混在した、落ち着いた雰囲気をもつエリアに、コワーキングスペース「flat5」はあります。
私たちStory Design house(SDh)が入居し運営もしているflat5。デザイナーや都市設計プランナーなどが集まり、仕事の枠を超えたコミュニケーションが生まれる場所です。
今回はflat5の共同オーナーでもある後藤良子さんにインタビューしました。聞き手はSDhの原です。
※このインタビューは3月下旬に行いました。

後藤良子さん / 株式会社URBANWORKS 代表取締役
都市開発コンサルタントを経て、2011年に株式会社URBANWORKSを設立。
日本初のアーバンデザインセンターである「柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)」や、技術系ベンチャー企業の支援組織「TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)」に設立より参画。千葉県柏市・柏の葉エリアのほか、全国各地のまちづくりに携わっている。

肩書きを聞かれるといつも悩みます。

――後藤さんはflat5のオーナーであり、オープン以来の入居者ですが、なかなかお会いする機会がありませんね。今日はあらためてお話を聞かせてください。

いろいろと予定が入ることが多くて、flat5にはあまり来れてませんね。当初の目論見では、交流ランチ会などをもっと頻繁に開催するつもりだったんですが(笑)。

私が代表をしているURBANWORKSにはスタッフが4人ほどいますが、生活スタイルに合わせた在宅勤務を推奨しています。月に一度だけ全員が集まる出社日を定め、その日は全員flat5に集合しています。それ以外は不定期で、近くで予定があるときに立ち寄る感じですね。とはいえこの情勢で、3月以降は完全在宅勤務にしています。

――後藤さんはさまざまな仕事に携わっていると思いますが、肩書を名乗るとしたらなんでしょうか?

肩書を聞かれるといつも悩みます。
URBANWORKSは、都市デザインの企画や戦略設計、調査分析などを業務としています。
理事を務めているUDCイニシアチブという団体も、全国のアーバンデザインセンターをネットワークし、支援するための一般社団法人です。
TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)という団体も設立当初から携わっていますが、ここはベンチャー企業の支援組織です。そしてここflat5の運営もしているわけですから、どう名乗るのがいいんでしょうね(笑)。

学生のころから「アーバンデザイナー」を目指して、ずっとそういう仕事をしているつもりでいます。ただ、一般的にアーバンデザイナーと呼ばれる範囲よりもかなり広い仕事をしているとは思います。

後藤さん1

――「アーバンデザイン」とは聞き馴染みのない言葉ですが、どういう仕事なんでしょうか?

一般的な言葉でいえば「まちづくり」が近いですね。
近い言葉に「都市計画」がありますが、これは法律に基づいてどのように街を設計していくかといった、行政の領域をイメージさせる言葉です。
一方で「アーバンデザイン」には、より総合的な観点で戦略を立てて都市をプロデュースしていくイメージがあります。

大学では建築設計を学んでいましたが、だんだんと興味が広がっていきました。
人は建物のなかだけで生きるわけではなく、都市で暮らしています。大学院では、建物の中だけを考えることでは物足りなくなり、都市のことを考えるようになりました。

すると、一般的に都市計画と言われる範囲のなかだけでは、人間の都市生活は収まりきらないことにも気付きます。人々の暮らしは経済や文化とともにあり、そここそが都市のワクワクするクリエイティブな部分。インフラをつくるだけでなく、そこにはどんな人たちが住み、その人たちはどこで働くのか、何を楽しみに生活し、それがどう活き活きとした都市を形成するのか、きちんと繋がりを紐解いて考えなくてはいけないのだと思います。それこそが本当に「都市をデザインする」ということだと思うんです。

この業界で経済活動の話を突っ込んでする人はあまり多くないんですが、私は大切なことだと考えています。

――なるほど。後藤さんがTEPでベンチャー支援にも取り組んでいるのは、そうした背景があったんですね。

そうですね。良い都市には、持続的な雇用が必要です。ベンチャー企業は、最初は小さくても、成長すれば多くの雇用や経済効果をもたらします。

私が仕事で最も大事にしていることに「サステイナブルであること」があります。まちづくりにおいても、特に経済活動に関心を持っている根本的な理由はそれですね。

――どういうことですか?

子どものとき、なぜか母が図書館で借りてきた『生きのびるためのデザイン』(ヴィクター・パパネック著)という本を読んだんです。当時はまだ一般的ではなかったサステイナビリティという概念に、その本を通して触れました。今の私の仕事に影響を与えている本だと思います。

「生きのびるためのデザイン」

まちづくりの一環として、まちに賑わいを創出するためのイベントを行うことはよくあります。しかしそれが一度きりで波及性の無いイベントだったら、その都市にとっての価値は限られてしまうかもしれない。イベント終了後も、何らかの形で波及効果が継続するように設計するべきです。それが、都市のサステイナビリティを考えるということです。

ただ広場をつくるだけで街がにぎわうのではありません。そこに生活する人がいて、雇用があって、雇用のためには元気な企業が必要です。経済活動が生まれる土壌があってこそ、広場のにぎわいも生まれていくのだと思います。

柏の葉、ベンチャー企業、コワーキングスペース

――2011年にそれまでの職場を離れ、URBANWORKSを設立されました。

都市計画の会社に勤めながら、いろいろとやらせてもらっていました。2008年ごろから、まちづくりの中の新産業創造の観点で、TXアントレプレナーパートナーズ(TEP)の企画が動きだします。

しかし周りは従来の都市計画業務をやっている中で、なかなか異質だったので(笑)、独立したほうがいいかなと。
いまはスタッフも増えましたが、はじめの2年間はできる範囲のことをひとりでやっていました。

――そして2016年には、当社(SDh)代表の隈元といっしょに新会社、株式会社asDesignを設立し、このflat5の運営を始めます。

当時から、SDhにはTEPのPR業務をお願いしていました。あるとき隈元さんと食事をしていて、そのとき居たレストランみたいな雰囲気のスペースで仕事ができたらいいよねという話になって、「じゃあつくっちゃおう!」と(笑)。
1年くらいかけて物件探しをして、最終的にこの場所に決めました。内装の設計図面は私が引いたんですよ。図面は4年ぶりくらいでしたが(笑)。

――素敵な空間です。こだわったポイントはあったんですか?

部屋の真ん中にキッチンを置いたことですね。中央にオープンキッチンがあることで、自然に違う会社同士のコミュニケーションが増えるんじゃないかと期待しました。実際、会員の方によって「カフェ」もオープンしましたね(笑)。

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――こうして後藤さんの仕事を俯瞰すると、アーバンデザイン、ベンチャー企業支援、会社や社団法人の経営、コワーキングスペースの運営と、本当に幅広いことをされています。どんなバランスなんでしょうか。

そうですね、いまはアーバンデザイン関連が5割、ベンチャー支援・事業支援関連が3割、残りがその他という感じです。

自分の中では全て繋がっているのですが、その中でも柏の葉キャンパスのお仕事は多分野にまたがっています。柏の葉アーバンデザインセンター(UDCK)の設立が2006年ですが、それ以前からいままでずっと柏の葉とは関わり続けています。ライフワークですね。

――最後に、今後の目標を教えてください。

これまで様々なまちづくりを通して得られた知見を、日本各地で活かしていきたいです。そういったご相談をいただける機会も増えてきました。私に出来ることがあるなら、どんどんいろいろな街に出ていきたいですね。

このflat5という場はただのコワーキングスペースではなく、集まる人たちで一緒に新しい仕事を創り出していくのが理想的です。
まちづくりの文脈には、PRが必要になる場面が必ずあります。SDhはPRの全体戦略を立てるのも得意とされてますから、一緒に仕事をする機会を増やしていけたらと思っていますし、今入っていただいている他の入居者の皆さんとも、間違いなくたくさんの接点があります。

まちづくりは時間のかかる仕事で、生きているうちに完成形が見えるかはわかりません。気が遠くなってしまったときは、タイムスパンの異なる事に関われるといいですよね。そういう意味でも、目の届く広さのflat5の運営も、楽しく続けていきたいです。

――今日はありがとうございました。落ち着いたら、またランチ会やりましょうね。

後藤さんエンド

Story Design houseでは「意志あるところに道をつくる」をミッションとして、さまざまな企業のPR活動を支援しています。是非、ウェブサイトもご覧ください。
お問い合わせはこちらから。 https://www.sd-h.jp/contact

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