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海外で知り合いのプレイヤーと間違えられた話

どうも、ストーム久保です。
海外で知り合いのプレイヤーと間違えられた話を今回は執筆しました。

残酷

あれは去年ロサンゼルスで開催されたCapcom Cup 2019当日予選に参加している時のこと。
予選の最中、突然人込みを掻き分けながらJames Chen氏が私に向かって走ってきました。


普段のにこやかな表情ではなく、とても慌てた様子で近づいてきた氏の姿に只ならぬ気配を感じた私は思わず背筋を伸ばします。

暑い中を長時間走っていたのでしょうか、汗を流し息を切らしながら私の前に立った氏は額の汗を拭う間もなく私にこう言いました

撮影の時間だよ!今すぐ裏に来て欲しい!

?????

一体何のことか、正直わかりませんでした。
何かインタビューやオフィシャルな仕事が入っているという話は聞いていませんし、もしもそういうのが行われるとしたら当日予選を優勝したタイミングのはずです。

もしかして当日予選に参加するプレイヤーの中から何人か選んで、あらかじめ意気込みとかを聞いておくパターンとも推理しましたが、それならおかしい点が生まれます。

そもそも、業界の大御所であるJames Chen氏がわざわざ血相を変えながら走って呼びに来ること自体おかしい…

違和感を拭えないので目の前で慌てながら話をするJames Chen氏を尻目に、私は頭を働かせした。
表情や現場の状況、タイミング、時間、いろんな要素を組み合わせて可能性を模索していく内に、ある答えが浮かび上がります。
しかしその答えは残酷でした。


もしかして....人違いをしている?

いや、待って欲しい。私は自分に言い聞かせます。
仮にも私とJames Chen氏は知り合って3年、これまでの大会でも目があえばお互いに挨拶や握手をして、短い雑談くらいはしてきた仲...のはず。

まさか...そんな...
このまま不安のあまり確かめなければ、彼は解放されないのだろうと私は意を決してJames Chen氏に拙い英語で一言伝えました。

「私はキチパじゃないよ」

James Chen氏の目がカッと開いたと思えば、次第に表情が暗くなっていきます。
先ほどまで流れていた汗は、走ってきた時のものだったのでしょう。だが、今流れている汗はきっと違う意味を含んだ汗なのでしょう。
青天の霹靂と自己嫌悪が混ざった表情を、私は人生27年 目にして初めて目にしました。

難題を解決した後、James Chen氏は何度も何度も謝ってくれました。そしてまだ行きも整っていない状態で、本来の目的であるキチパを探しに再び人混みの中へ戻っていきます。
その場にわずかな寂しさと、悲しさを残して....

怒り

そして当日予選の翌々日。
Capcom Cup2019も終わり、アフターパーティー会場にて。

アフターパーティーは次のVer「ストリートファイターV チャンピオンエディション」が先行稼働していて、参加者は酒を飲みながら新しいVerを遊べました。

私はみんなが新Verで遊んでいる光景をカウンターに座って眺めながら1年の終わりを噛みしめていると、突然知らない海外プレイヤーから声をかけられした。

その人はすでに酔っぱらっていて、陽気に笑いながら『こっちに来てくれ!』と私を強引にカウンターから引っ張って連れていきます。

酔っ払いはとても上機嫌で、歩きながら奥の席に座っている友人と思われる人たちに向かって
「お前に似ている奴を連れてきたぜ~~wwwww」と叫んでいるのは、端的であるが理解できました。

あっ、これまたキチパに間違われるやつね...
素早く察した私はこの酔っ払いに付き合ってやるために、どんなリアクションをしてやろうかと考えながらついていきます。

そして奥の席に到着すると、酔っ払いは私を席に座っていた男の前に突き出して得意気に言いました

『どうだ?!似てるだろう!wwwwwww』

座っていた男はNephewだった。

『キチパじゃねぇのかよ!!!!』

渾身のツッコミが現場に響く。
ロサンゼルスの中心で周りに日本人がいない場においても、抑えられず日本語で叫んでしまいました。

Nephewもポカンとしているし、周りにいた人全員ポカンとしている。
酔っ払いと久保以外、事態を理解していないのだ。
Nephewとキチパが似ているのは、前々からでカナダの大会の際はツーショットを収めてお互いに認知させたことがありますが...

キチパと間違えられるのはいい。
しかしNephewは違うだろ!そのジョークはキチパに取っておけよ!

新Verで盛り上がっていた場を白けさせたのは、酔っ払いのはずです。
それなのに何故か私も場を乱した片棒を担いだような罪悪感が沸いてきたので、無言でその場を後にすることにします。
後にすると言いますか、もう逃げることしかできなかった、が正確な表現ですね。


逃げ出してカウンターで飲みながら落ち着いていると、James Chen氏が歩いてくるのが見えました。

James Chen氏は私に気がつくと、申し訳なさそうな表情をしながら
『この間は間違えてごめんね!君はキチパじゃない、君は久保!もう間違えないよ(要約)』と、またも謝ってくれました。

本当にいい人です。もう気にしていないし、笑い話になりますから。

それに、私はもうJames Chen氏を攻めることはできませんでした...

この世に三人似ている人間が居るとはよく聞きますが、こうも同じ場所に居るのはどうかと思います。

キチパに対して
おい!Nephewの2Pカラー!』と煽ったことがありますが、実は私もNephewの別カラーだったのでしょう。

あの日、あの出来事を境に少しだけ優しく慣れた気がします。

久保でした。

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