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「恋愛をしている全ての人に」こだわりを突き詰める人、nisai松田直己

STORES ASSIST PROGRAMで支援が決まった5名は、それぞれにこだわりや好きを突き詰めた活動をしています。

そのうちの1人、nisaiデザイナー松田直己さんにオリジナルブランドを始めたきっかけ、STORES ASSIST PROGRAMで実現したいことを聞きました

-恋愛をテーマにしたファッションブランド、nisaiをはじめたきっかけは何だったんでしょう?

失恋です。ブランドを立ち上げる直前の4,5年前、服飾ではなく芸術家を志していて、絵や写真での表現をやっていました。そのときに出会った女性に恋をした。でもその恋は叶わなくて。
それをきっかけに服飾ブランドを立ち上げて、これならずっと続けていればもう一度出会って振り向かせられるんじゃないかなと思ったのが、nisaiの始まりです。だから最初の取り扱い店舗は彼女との最後のデートで行った栃木のセレクトショップna na meでした。

その恋が叶うことはなかったけれど、彼女はこっそりnisaiを見ていてくれたらしく、届いてはいたのだなと思いました。

-そんなストーリーがあったんですね!松田さんは服飾学校などを卒業しているわけではないそうですが、なぜファッションを選んだんでしょうか?

芸術家を目指していた頃からそうだったんですが、自分が作るものがどうなってほしいか、「生活を共にしてほしい」という想いがずっと強かったです。そういう点では、十年近く続けていた絵画表現に対して悩む部分も同じようにあって、そこは自分の中では、生活に必要不可欠な文化ではない。生活から離れたところにある娯楽や文化って認識が、どうも抜けなかった。でも、ファッションは衣食住の1つで、生きていく上で必要不可欠、選びたくても選びたくなくても毎朝選ぶし、毎日見るし、流行のサイクルが常に変動している、ダイレクトに生活に干渉していく、そこで表現する方が自分がやりたい表現につながってる上、その当時好きで振り向かせたくて仕方なかった彼女にも届くと思ったんです。
でもこれは本当に最初の2,3年のモチベーションですね。

-今はモチベーションが変わってきていると?

はい。今はもっと広く、nisaiや自分の生活に関わる人のことを考えながら作るようになりました。ブランドを続けていく中で、お客様であったり、取り扱い店舗の方、仕入先の方、今好きな人やモデルさん、アシスタントさんなど多くの方との出会いがありました。
根本的に恋や愛がテーマというところは変わっていませんが、今はブランド立ち上げ時の彼女に届けたいという想いよりも、身の回りの人や生活の方が、アイデアと原動力となっています。

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-服のテーマはどんなところから取り入れているんですか?

自分の生活や身の回りの人、服以外のところから取り入れています。自分は何を一番考えているのか、本当はどんな服があったらいいか、欲しいのかなど、身近なところや執念、執着、個人的な人との会話や出会いから、想像しています。
例えば、タバコをよく吸う彼氏と、吸わないけど彼氏のためにいつもタバコを持っている彼女のカップルを着想源に、タバコ一本ずつ専用の細いポケットが胸元についたジャケットを作ってみたり、二度と会えなくなった好きな人と最後にデートした彼女の地元栃木の銘菓「レモン牛乳」のカラーリングをコレクションに取り入れたり、結婚したいくらい好きだった子に振られたあと、もしも二人が結婚して子供が出来た世界ではこういう子供何人いてこういう学校に通ってと、全ての設定を組んだ架空の家族に向けた服、というコレクションを作ってみたり、レースが好きだった人に失恋したらレースを多様したり、恋人を押し倒した時に腰を上げさせなくても脱がせられる作りのワンピースやパンツを作ったり、展示会のお客さんの年齢性別体型の幅が広がるのを眺めて「小柄な女性の為のオーバーサイズの服は沢山あるけど、ものすごい大柄の男性の為のオーバーサイズってないな」と、めちゃめちゃ大きいコートを作ってみたり。あとは、別業種の方と話して出てくるアイデアも取り入れることが多いです。
自分自身がエゴや執着、パーソナルな部分をさらけだすことで、nisaiを着てくれる方も、気持ちをさらけ出せるような、さらけ出す様子に寄り添えるような服になれると思っています。

単純に、服を見て服を作るより、身の回りのことや服以外からアイデアを取り入れて作ることの方が、楽しいし、自然と他の服と違う、良い一点物が出来上がるという感覚があります。

-だんだんとブランドが大きくなってきて、プレッシャーは感じませんか?

感じる時と感じない時の気分の差が激しいです。
でもプレッシャーを感じているときの方が良い服が作れる。自分には服しかないとか、服でしか伝えたいことが表現できないと思っているとき、失恋した直後など、反響の高いものが出来ることが多いです。
でも幸せな時よりつらい状況の方が良いものをつくれるというやり方も続けたくなくて。幸せな状況でつくった作品で超えたいと思っています。
つらい方が良いものが作れるよということが伝えたいことではないので。
今回こうして支援金をいただけることで、困らなくなる部分もあると思うんです。その中で良いものを作りたいです。

-松田さんは全て独学で学ばれたとのことですが、知らないからこそできていることは何かありますか?

正規の勉強をされている服飾学生やデザイナーの方と話すことも多いんですが、学校や企業で学ぶと、その学んだこと、考え方だけが正しいと、一辺倒になる方が多い。学校や企業は、ある一つの方向を向かないといけないから仕方ない。だけど、いざその教えだけでいられる学校や企業の外に出ると、実はここで正しいと教わったこととは、真逆の考え方、別の考え方、作り方が山程あることを知る。それに対応しきれない期間、悩む方が多い。

僕はまっさらなところから独学スタートではじめたから、ファッションについて教えてくれる人、本、服が、みんなバラバラのことを言っていることを最初から知ることが出来た。みんな言ってることバラバラじゃんと、ファッションに触れた瞬間から悩む時間が多かった分、今やっと、色々なことが飲み込めてる部分があります。そういう感覚で作ることが今楽しいけど、それは独学ベース・知らないことだらけだったからこそ、自分の場合は辿り着けたのかも知れない。
ファッションは人の数だけ正解があって、哲学も価値観も皆バラバラ、価値観の数だけ、ターゲットやコミュニティがある。広くても、ニッチでも、どこかに求める人がいる。それを最初から思いながらやれてたから、一つのテーマで続けられた気がする。

ブランド立ち上げ時、先輩デザイナーたちの多くから「ターゲット・年齢・性別を明確にしろよ」と言われてきた、それに疑問があった。
本当に優れたラブソングなら対象年齢も対象性別もない。
だからnisaiは性別年齢でターゲットをくくらない。

ブランド立ち上げ時の頃は、大学生くらいの女性がお客様に多かったんですが、僕自身は最初から恋愛をテーマにしているので、恋愛をしている人ならどんな人にでも合う服を、届けたい気持ちが源流にあります。

そういう気持ちを服に反映させていけたのか、ここ一年はかなりお客様の層が広くなって、今では中学生から主婦の方、男性も女性も関係なく、小柄な子から大柄な方まで、かなり幅広い方に見に来ていただける展示会が続いていて、今、かなり理想の形にいられてるなと思っています。

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作り方でも偶然性を大事にしています。たとえば、シルクスクリーンは本来やり方があって、色が揃っていなかったり、掠れていたりするものは失敗作とされてるんですけど、nisaiの場合はあえて色がグラデーションになるよう、マーブル状に刷ったり、掠れ部分を作ったりして、それをテーマに取り入れています。
あとは、フリーハンド裁断や、パターンを取らない服の作り方をしています。こういうやり方をしていると、同じ作り方をしても毎回違う作りになるんですよ。下書きなしで絵を描く感覚に近いです。一点物を作りたい、たった一人だけの物を届けたいというテーマは、こういう作り方をすれば届くだろうと思っています。

-大変なことはありますか?

nisaiの服の作り方は基本的に全てが非効率的です。大変じゃない瞬間はないかも知れない。
でも大変な方が結果的に楽しいし、面白いと思えるものが出来る。
最初の1,2年はブランド運営に関して見えていない部分も多く、既存の作り方をただただ否定したかった部分もあったのですが、ずっとやっているとデザイン、パターン、生地発注、受注会、縫製工場との連携、生産などのフローは、非常に合理的だったのだなと感じる部分も増えてきました。
でも同時に数年間続けることで、合理性からはみ出したものが好きな人や、そうでないとだめな人が確実にいるということもわかってきて、業界内で連携を取って生産していくようなやり方とは真逆の、自分の足で歩き回って自分の手で作る、非効率的なやり方を貫いています。何より非効率的に作られるものの方が好き。
そして、非効率をつらぬくことで出会える人や、見てくれる人が僕は好きです。
これを変えたら多分、出会う人や一緒にいられる人が変わってしまう。それが今はちょっと嫌です。
10年20年経って、いつかnisaiの服が量産化されたとしても、どこかで手が宿っている部分は残したいですね。

-海外展開も考えていますか?

考えています。今日本では常設を3店舗、期間限定店舗を2店舗展開しています。国内に関しては取り扱い店舗を増やしたいというより、お客様がそこにいるから置きたいという気持ちが強いですね。
でも海外の場合は、欲しい人がいるからそこに置く、ではなく、欲しい人ができるようにしなくちゃいけないですよね。
自分の服が海外ウケする自信はすごくあって。試すとしたらスタートは台湾です。台湾の人って、ポップな服を日常的に身につけるんです。明るい色を怖じけず、ためらいなく着ていて、nisaiのテイストも合うのではないかと思っています。

将来的な目標としてはパリやニューヨークでも自分の服が並んでる様子が見たい。その場所そこに住んでる人が、どんな風に着てくれるのかが見てみたいです。

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-松田さんは今回の支援金を元にファッションウイークへの出展を目指しているんですよね?

そうです。ブランドを始めた当初からの夢でした。でも決して出展がゴールではないと思っていて、やりきれなかった部分なども出てくると思うので、新しい活力にしたいです。
出展が叶うとしたら、音楽が流れててモデルがランウェイを歩くシンプルな演出のショーではなくて、見ている人の想像力が働くような大掛かりなファッションショーをしたいと思っています。

-ファッションウイークに出た後の夢はありますか?

海外展開を考えています。でも究極の目指すところはあまり考えないようにしていて、瞬間瞬間でやるべきことをやっていたいと思っています。

松田直己プロフィール

平成3年4月26日神奈川県横浜市生まれ。静岡市育ち。中学時代、パウル・クレーの画集をきっかけに画家を志し、地元静岡にて数年間、展示発表活動を行う。高校卒業後、見識を深める為にイスラエル kibbutz yotvataへ移住。以降、国内外で20回以上の引越し、15回以上の転職、総数50人以上との同居生活を経た後、2014年、壊れた楽器、不要とされた古着等を素材にした雑貨衣類を制作販売するレーベル"SAI"を京都で立ち上げ活動、2015年解散。同年6月、二度と会えなくなった忘れられない恋人を振り向かせる為、恋愛をテーマに一点物の服を制作するファッションブランド”nisai”を開始。札幌、宇都宮、吉祥寺、大阪、福岡に取扱店舗を持ち、年間10回以上の展示会とネットショップで認知を拡大、アーティストやメディアへの衣装協力等も行う


文:ストアーズ・ドット・ジェーピー広報 上野瑠衣
写真:nisai提供


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