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マーチの演奏をより魅力的なものにするために(後編)

今回は、前回書いた「マーチの演奏をより魅力的なものにするために」の後編として、さらに踏み込んだ内容についてお話していきます。

場面ごとの音楽、個性を明確にしよう

多くのマーチは3、4分ほどの小品ですが、その短い時間の中には実に多くの音楽的な要素がつまっています。
前奏、第1マーチ、第2マーチ、そしてトリオ。性格の異なったいくつかの場面が組み合わさることでマーチはできているのです。
魅力的なマーチの演奏というのは、それら各場面が明確にキャラクター分けされているものといえます
さて、この話を聞いて「なるほど、それならばそれぞれの場面のメロディーの演奏の仕方を変えればいいのか」と思う人もいるかもしれません。
もちろんそれも大事なのですが、メロディー以外の要素はそれぞれの場面でどのようになっているでしょうか。
ハーモニー進行、リズム・パターン、用いられている打楽器など、伴奏についても各場面での扱われ方がきっとそれぞれ変わっているはずです
それらの差を見逃さず、しっかりと表現することが魅力的なマーチにするコツといえるでしょう。

ソリスティックな打楽器

スネアドラムやバスドラムなど、打楽器セクションはどうしても伴奏に徹底しているイメージがありますが、作品によってはソロのような演奏を求められることもあります。
代表的なのが、前奏やトリオの導入におかれることの多いドラム・マーチでしょう。
ほかにも、フレーズの頂点でバスドラムとシンバルがアクセントを伴って演奏するなど、トゥッティの中においてもそうした場面があります。
こういったときはやはり伴奏的な意識ではなく、ソロを演奏するときのような思い切りが大事です
また、このときに大きな音量で演奏することも忘れてはいけませんが、伴奏らしくない輝かしい音色も表現できるとよいでしょう

歩くためのもの?鑑賞するためのもの?

さて、前編の冒頭で「マーチの基本は『歩くための音楽』であること」と書きましたが、実のところ、それを目的としていないものもあります。
それは、コンサート・マーチといわれる「演奏会のための、鑑賞されるためのマーチ」です。
「マーチは一定のテンポで演奏されるべき」と考えられているのは、その根底に「歩くためのものだから」という前提があるからです。
ですので、「コンサートのためのマーチ(=歩くことを目的としないマーチ)」であるならば、テンポの変化はもちろん、大胆なダイナミクスの変化など、聴いている人たちを楽しませる工夫を演奏に盛り込むことが歓迎されます
また、コンサート・マーチのほかにも、結婚行進曲、葬送行進曲、博覧会やサーカスの興行で演奏されるサーカス・マーチなど、さまざまな場面、目的のためのマーチも数多く存在します。
大事なのは、自分たちの演奏するマーチがどんな目的、背景で作られたのかを考え、そのためにどんな表現をするべきかを追求することなのです

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