見出し画像

推し短歌 | ジョングク

「推し」との出会いは突然だった。

インスタで不意に流れたその声が心臓超えて子宮に響く

とある夜、インスタのフィードでランダムに流れてきたある歌に、急に取り憑かれた。その歌声は3日経っても私から離れなかった。

調べてみると、それは「Still With You」という曲で、BTSのジョングクという人がファンに向けてつくったソロの曲だという。

その声は、切なくて美しかった。
儚いのに力強くて、とても切実な想いが届いてくる。

曲を聴いて心に響くなあと思ったことは今までに何度もあった。
だけどその曲は、体のとても深いところに入ってくるのだ。
心を通り過ぎて、お腹のとても深いところまで入ってくる。

それが推し、ジョングクとの出会いだった。


何が好き答えれず言う顔がいいはじめてなのよそんな笑顔は

もともとBTSの存在は知っていたけれど、友人が「こっちは世界一イケメン」「こっちは一番人気」と教えてくれても見分けがつかなくて断念していた。

それがジョングクの歌声に取り憑かれてから、BTSの曲も色々と聴き、メンバー一人一人の魅力を発見していくと、
あれだけ同じように見えていた人が、人格を知ると全くの別人に見えるし、それぞれが違う魅力を持っていた。

曲もDynamiteしか知らなかったけれど、それまでの楽曲の方がはるかに力強くて好きだった。

急にBTSにハマった私に、友人は何がそんなに好きか?と聞いてくるものの、好きな要素が多すぎて簡単には答えられない。

とりあえず、何がいいって、顔がいい。
顔がいいだけじゃなくて、いい顔をしている。

推しが笑っているだけで、こんなにパワーをもらえるなんて。笑顔ってこんなに威力があったのかとびっくりする。


われ悩むこの服捨てるかその夜に推しはさくっとインスタ削除

一人一人の個性が強いBTSの中でも、
私は推しのジョングクの性格がとても好きだ。

彼はその時の自分の気持ちにとても正直な人間で、
一夜にして、5000万人のフォロワーがいたインスタを突如削除した。

その理由はただ「もう使わないから」。
シンプルだ。

私は着なくなったこの服を断捨離するかで一週間も悩んでいるっていうのに、彼は、スケールの違うものを一瞬にして捨てている。

その時の自分に合わないものはすぐに手放す。それがジョングク。
だから、いつも新しく見えるのかもしれない。

謎に感銘を受けた私は、服どころか、家のソファーまで捨ててしまった。
いや、推しのおかげで、捨てることができたのだ。コマオヨ〜

推しって生きる教科書だな。


「むしろ良い」推しの口癖マネしたらどんな苦境も秒でポジティブ

気づけば推しのマインドまで真似するようなっていた。

彼の口癖に「むしろ良い」(韓国語で”오히려 좋아”オヒリョチョア)というのがあるのだが、それがとんでもなく便利なのだ。

なにか落ち込むことがあっても、人生が急に大変になっても、
そうか、これは「むしろ良い」んだな、と素直に思えて必要以上に落ち込まないで済む。

恐るべし、推し。
なんと実用的なのだ。

待ち受けを見て聞いてくる彼氏なのんなわけあるかこんなイケメン

さて、推しは生活にとても役立つ。
男の子にケータイの待ち受けを見られて、それ彼氏?と聞かれても、
推しだと力説すれば、自然と距離が保てる。良くも悪くも。

もはや推しって便利。


人生が迷子の三十路に推しができはっきりしてきた好きと嫌いが

三十路になり、路頭に迷っている私の前に突如あらわれた「推し」。

ジョングクとBTSに出会い、彼らを通していろんなコンテンツに触れていると、「好き」という気持ちがとても豊かになった。それだけでなく日常の中で、「あれ、これは好きじゃないかも」という気持ちも素直に気づけるようになった。

大人に染まる中で、何か違和感を感じても「嫌いにならないようにしよう」とか、無意識にいろんな気持ちにふたをしていたのかもしれない。その方が物事が進みやすかったりするから。

でも、自分の感情がいちばん大事で、感情に素直になることが自分を豊かにしてくれる。それを推し活が教えてくれた。

ジョングクはあるコンテンツで、
信じているものは「僕の好きな人たち」
信じていないものは「僕の嫌いな人たちの言葉」と答えていた。
「好き」と「嫌い」がはっきりしている彼を、私も見習っていきたい!


さいごに余談:推し活のふしぎ

ジョングクの歌声がなんであの時あんなに自分に響いたのか不思議だった。
でも推し活を1年以上していて思うのは、
推しは必要なタイミングに勝手に現れるものなのかもしれないということ。

2022年のグラミー賞を受賞した、ジョン・バティステさんがこんなスピーチをしている。

"I believe this to my core, there is no best musician, best artist, best dancer, best actor.”
"The creative arts are subjective and they reach people at a point in their lives when they need it most. It's like a song or an album is made and it's almost like it has a radar to find the person when they need it the most."

https://www.youtube.com/watch?v=rFA6JJyj178

「創造的なアートは、音楽は、人がそれを最も必要とするときに、まるでその人を探し出すレーダーがあるかのように届く。」

このスピーチを聞いたとき、私がふしぎだったことを言語化してくれていてとても驚いた。

そうか、私がジョングクを見つけたんじゃなくて、
ジョングクのレーダーが察知して、私に届いてくれたんだな、と思う。

ここまで書いて思うのは、
ジョングクを推したいというより、「推し活」を推したい。
推し活は自分との対話になるし、
推しを通じて、自分自身を応援してあげられる豊かなものだと思う。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?