〈相聞〉
故郷から遠く離れ
冷たい濃紺の
ブルーマリンを横断する
大陸から大陸へ
あるいは
島伝いに
民族の
境界を東上し
人類を薫陶した
大きな文明を溯行する
花鳥風月を愛し
白楽天や杜甫を慕い
4000年を費やした
同族の愛憎の劇も
通過する
ああ
愛しい人よ
心と心で
交通する
わたしたちには
国家も思想も
無縁だ
暁闇の時を超え
出会った孤独な魂には
夜明けを告げる
優しい声が
堪える
罪を背負い
生まれてきた
文明の子供
じゃないが
人類の
聖痕を
苦悩の深い額の
皺に宿している
震えている
孤独な
貧しい魂に
あなたの
優しい
思い出が
甦る
ああ
麗しき
ユーラシア
花の佳人よ
滔々と
南下する
大河の樹下に
佇み
いま
あなたの涙を
わたしは
哭く
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