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第86話「将来のパートナー」

約束どうり、18時に待ち合わせ場所のパーネル通りに面したBNZ銀行の前に
カツヒロが運転する本田のドマーニが到着した。先日買ったばかりのこの中古車は木村の知り合いが経営する日本車輸入業者から購入したものだが、木村の紹介と言うことで1,000ドル(日本円では6万円/当時の為替レートです)割引してもらえた。

それでも価格は80万円近くかかったので、ワーキングホリディで来ている人には、中々手が出ない価格だ。

28.ドマーニ

初対面の挨拶はそこそこに済ませ、上村由紀恵と関根さとみが後部座席に座った。

「武藤さんの車ってスゴク綺麗ですね。私達みたいな貧乏ワーホリ仲間だと、かなりボロい車しか皆持ってないから、ちょっと感動しました。」

関根がしみじみとした口調でそう言った。

「そうなんですか、確かに結構オンボロな車もたくさん見かけますが、
私もイギリスに留学していた頃は、ワーホリの方と同じような貧乏学生でしたから、車なんてとても持てませんでしたよ。この車はこれから数年乗るつもりなんで、なるべく状態の良いものを買おうとかなり奮発したんですよ。」

カツヒロはそう言って軽く笑った。

M4.カツヒロ

関根さとみは、肩より長いロングヘアの先のあたりを、軽く指でいじっている。少し、緊張した様子だ。服装は上が白のTシャツに黒で英文字がプリントされているモノにチョコレート色のカーデガンを羽織っていて、下はカーキー色のチノパンだった。

カツヒロは運転しながら、時々、リアビューミラー越しに、さとみの顔を見た。何となくだが雰囲気がタレントの鈴木杏樹に似ている。

29.鈴木杏樹

何だか分からないけど、何となくこの関根という女性の中に自分を強力に惹きつける何か特別な魅力がある。今、それを口頭で説明しろと言われても,言葉ではうまく表現は出来ない。

野生の感と言うのか、とにかくこの女性ともしかしたら、結婚するんじゃないかと、初めてあったばかりだったけど、そう感じる自分をスゴク不思議に思った。

そう言えば2年前に、メルボルンに留学していた頃の友達がめでたくゴールインして結婚式の2次会を横浜で開くから、是非来て欲しいと招待された時の事を思い出した。

あの時、友人のさやかは、旦那と初めてあった瞬間にこの人と結婚すると思ったと・・・。その時、教えてくれたけど、そんな初対面で、結婚するなんて絶対思わないでしょう。

と半分信じていなかったけど、今、自分がこの関根と言う女性に抱いている気持ちは、その時のさやかの気持ちと一緒なのかもしれないと、カツヒロは思った。

29.焼肉店

目的の焼肉屋まではあっという間に到着し、店の中に入ると常連客の木村に店長らしき韓国人の男があいさつし、その男の案内で4人は窓側の席着いた。

あらかじめ女性陣二人に、「焼肉を食べに行くのでお腹を空かしておいてね。」と伝えていたので、二人共お腹を空かせており、無心になって肉を食べました。

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カツヒロと木村の二人がスチュワードと言う事もあり、話題の中心はキウイエアラインに関する物が多かった。

どうやら、上村も関根も日本を出発する際、キウイエアラインを利用していたらしく、機内食のメニューや搭載しているワインの事など、結構詳しくてカツヒロと木村は少し驚いた。

木村が少し自慢げに機内食の内情を話した。

M5.木村

「オークランドから日本へ出発する便は、老舗日本食レストランの有明に、
そばと寿司を作ってもらっているです。今、エコノミークラスの機内食は2,000円以下の予算でやりくりしているエアラインが多いのですが、うちは3,000円を出しているので、食事に関する評判はいいんですよ。」

「えー、そうなんですか?意外に高いんですね。」上村が驚くと、

「そうなんですよ。案外、お米とかが高いので、予算を削っているエアラインだと、コシヒカリとかでなくて、インデイアカ米とか使うから、お米が冷めると美味しさが半減してしまうんですよね。」

「あと、雑誌や新聞も案外予算をかけていて、年間2千万円近くかかるんですが、マネージメントから予算を削るように言われたりしてるんですよ。確かに、他国の路線に比べてコストがかかり過ぎていると文句言われたりしてるんですが、日本エアウエイズとの共同運行なので、サービスの品質を合わせる必要があるから、削れないんですよね。」

カツヒロもこのあたりの内部情報は知らなかったので、今度、誰かに豆知識として教えてあげようと思った。一通り、キウイエアラインの話が終わると、カツヒロは関根にどうして、ワーキングホリディでニュージーランドを選んだのかを聞いてみた。

さとみは、ひと呼吸おいてから、カツヒロをまっすぐ見据えた。食事中に何度か二人の目線はあったが、カツヒロはこの瞬間、ちょっとドキッとした。

「オーストラリアやカナダも考えたんですが、年齢が超えていたんで、必然的にニュージーランドになってしまって。」

そう言って、少しはにかんだあと、更に話が続いた。

「私、福岡市の出身なんですが、福岡市とオークランドは姉妹都市でして、親近感があったんです。それで、前からニュージーランドには興味がありまして、2年前にアクロス福岡という場所で一斉留学フェアと言うのに参加した時に、ブースに出ていたオークランドの語学学校の方に声をかけたんですが、その人、あんまりやる気なさそうで、こんなんでいいのかな?と思ったんです。でも、他の学校の人達は皆、生徒を集めようと必死に見えたんで、ビジネスライクな語学学校より、ガツガツしていない雰囲気が気に入って結果的にその方の学校に行こうて決めてしまたんですよ。」

「へー、そうだったんですか。でも、そう言ういきさつがあったんで、こうしてお知り合いになれたのですから、スゴイ偶然ですよね。」

「確かにそうですよね。この広い地球の上で、こうやって同じ時間に、同じ場所で一緒にいるって、確率で言ったらめちゃくちゃ低いですよね。」

「ホント、ホント。あの時日本で語学学校の人に合わなかったら、きっと一生お会いする機会はなかったはずですから、考えてみるとスゴイですよね。」

カツヒロはなぜか、その瞬間、彼女と将来結婚すると直感した。

しかし、この後、二人の間に繰り広げられる数々の運命のいたずらが待ち受けている事など、カツヒロにとっては全く予想はつかなかった。

つづく。

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