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【子ども】7年ごとの成長①0~7歳は何が育つ?

「シュタイナーって、テレビ見ないやつでしょ」
「子どもを叱らないで自由にさせとくんでしょ」
こんな感じのことを言われて、困った経験が多々ある。その通りとも返事できるし、そうじゃないとも言えるのがシュタイナー教育。だって、それは「時期による」し、「人による」こともあるから。今日から数回に渡って、この「時期による」がどういうことなのか、自分のためにも文字に起こしてまとめていこうと思う。


7年ごとの教育課題

シュタイナーによると、人間には7年ごとに教育課題があるという。0-7歳を第1七年期、7-14歳を第2七年期、14-21歳を・・・と分けてみて、それぞれの時期に何をいちばん大切にして育てていくか?を示してくれたものがコチラ。

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(↑ 『霊学の観点からの子どもの教育』p.138, 147)

見てもらったらわかる通り、子どもの教育は先生や親などの周りの大人の手に委ねられている。いやぁ、責任重大!

エリクソンも発達課題を示しているし、東洋医学でも7~8年ごとに身体の変化をみていく。日本ではお馴染みの厄年も、「この時期はいつもより気をつけようね」って教えてくれる。

自分の生き方や子育てのヒントに、どの考え方を用いてもいい。それは自由。ただ、私は、これまでにざっと1000名を超える子どもと出会ってみて、シュタイナーの教育課題は子どもに合ってるな~と感じている。

では、それぞれの時期を順番に見ていこう。


第1七年期(0-7歳)

①体が育つ時期

シュタイナー教育は、人間の丸ごと全部、つまり、体と心と精神を育てていく。7歳くらいまでの時期は、特に体がぐんぐん育つ。頭の骨が閉じるところから始まって、目や耳の機能が整ったり、首が座ったり歯が生えたり。ある程度、頭が出来上がったら、座ったり立ったりできるようになり、動き始める。体を動かせたらコミュニケーションも取れるようになって、もっとコミュニケーションを取りたいから、そのうち言葉を覚える。

だから、この時期は、体の成長をサポートするのが周りの大人の仕事になる(もちろん、心も育つけど!)。生活リズムを整えたり、体にいい食事を作ったり、安心して暮らせる家や衣服を整えたり。人も含め、周りの環境をよい状態に整えれば、子どもは心身ともに健康に育っていく。

もしも、体が育つ時期に、体が十分に育たなかったら・・・?たとえば、全ての移動を車やベビーカーで済ませ、子どもが数秒泣いたらあやし、欲しがるおもちゃを全部持ってきてあげて。子どもが1ミリも動かなくても、全ての望みが叶うようにしてあげたなら・・・?一日中バウンサーに寝かせてあげて、寝返りも座位も取らなくていい、超楽チンな環境にしてあげたなら・・・?ブランコやジャングルジム、危険な遊びは一切禁止して、家で子ども向け番組をずっと見せていたら・・・?


②ファンタジーの中で遊ぶ時期

この時期の子どもの世界観を一言で言うなら「夢(ファンタジー)の中」。小人や妖精が見えるし、動物や植物とも、ぬいぐるみやおもちゃとも話ができる。以前、友人が、
「”お靴ちゃんを、お家に帰してあげようね”と保育士さんが言うけど、私は家でそんな言い方をしない」
と話してくれたことがあった。わかる、わかるよ!違和感あるよ!大人になったら、こんな言い回し、コントでしか見ないから!

でも、大人にとって違和感があったとしても、子どもにとってはコレが普通で当たり前。靴は生きているし、靴箱はお家。帰れないのはかわいそうなのだ。だから、
「靴は靴箱に片付けなさい」
って言うより、
「お家に帰してあげようね」
の方が、子どもの心にちゃんと届く。

他にも、この時期の子どもに
「どうして空は青いの?」
って聞かれたとき、
「太陽の光って透明に見えるけど、本当はいろんな色が混ざっていてね。青い光は空気中の粒に当たってあちこちに散りやすいから、青だけがよく見えるんだよ」
って答えてしまうと、たぶん、夢の世界が壊れちゃう。それでも、私は本当のことを教えたい!と思うなら、
「お日さまはいつも虹色の光をプレゼントしてくれていてね。青の妖精さんたちが、一生懸命、青い光をつかまえて、ここまで届けてくれるんだよ。赤の妖精さんはお仕事で忙しくて、黄色の妖精さんはお寝坊さんだからね~」
って、世界観を守りつつ、正しいことを伝えるようにしたらいいんじゃないかなと思う。

ファンタジーの力、ここにないものをイメージする力がこの時期にちゃんと育っていると、目の前にないものを覚えておくことができるから記憶力もよくなるし、具体物がなくても数えたり計算したりできるようにもなる。もっと成長してからは、抽象的な考え方をするときに役立つし、人の意見を理解したり自分と比較したりすることもできる。大人になってからは、無から何かを生み出す力って、社会の役に立つこと間違いなし。

「うちの子は現実的だから、そういうのは合わないな~」
という人は、近くの大人の言動や年上のお友達、兄姉を真似ているのか、本当に現実的な子なのか、よくよく見極めてみて欲しいと私は思う。


③世界は善である、私とは世界である

「真似る」というのも、この時期の特徴の一つ。この時期の子どもは、見るもの聞くもの触れるもの、とにかく、何でもすべて受け入れる。何でもかんでも模倣して学ぶ。なぜかって、自分と他者や世界の区別もなければ、すべてを「善」としか思ってない時期だから。

バイ菌も善いものだと思ってるから、汚いものでも平気で口に入れる。お母さんや先生の口調、お友達の悪いクセでも何でも真似をするのがめちゃくちゃ得意。隣で泣いている子がいれば同じように泣くし、怒っている子がいれば怒る。街中やテレビで流れてくる言葉や歌はすぐに完コピ。しかも上手。相手と一体だから、いちいち「よーし、真似しよう!」なんて考えてない。というか、自分が真似していることにも気づいてない。

この感じは、2年生くらいまで続いているので、低学年の授業をするときには、余計な説明はせずにいきなり見本をしてしまっても、真似てくれる。1人を褒めればクラスのほとんどの子が喜ぶし、仲の良い友達が傷ついたら自分のことのように怒る子がたくさんいる。

自己と他者の境界線がきっちり引けるようになるのは、なんと3年生ごろ。この辺の話は、また次回に。


そんな時期なんだって、知っていたら?

7歳までの時期がこんな感じなんだと知っていたら、子どもへの接し方もおのずと決まってくる。

テレビを垂れ流すことは、それ以外の学びの機会を奪うことになるからやめといた方が良いだろうな~って思う。五感(シュタイナーは、十二感覚っていう)をちゃんと育てようと思ったら、自然の中へ出かけていくのが一番。人工的に作られたものにはやっぱり限界があるから。

しつけのために叱り善悪を教えることは、この時期の夢の世界観を壊し、全てが善ではなくなってしまうからやめとこう、とも思う。子どもがミミズを刻んで遊んでいたら、
「生き物にそんなことしちゃダメでしょ!」
って叱らずに、
「ミミズさん、ケガして痛そう。病院で治療しましょうね」
って畑の隅へ運んで、葉っぱの布団をかけて、花びらの薬を散らして、安静にしてあげたらいい。

要するに、「シュタイナー教育はテレビ禁止」じゃなくて、こういう成長を遂げる時期には、何を大切にしたら健やかに育つかな?っていうこと。「ご飯の用意をしている間はテレビ観ておいてくれた方が、私がイライラしなくて、子どもをきつく叱らなくて済む」ってことなら、テレビもよい環境の一つに入ってくるだろう。用法用量を守って、適切にお使いくださいね。

次回は、7-14歳の第2七年期について


参考図書

霊学の観点からの子どもの教育

シュタイナー教育基本指針Ⅰ・Ⅱ

教育の基礎としての一般人間学

これからのシュタイナー幼児教育ーいま、おとなにできること


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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスで障害児支援にあたりつつ、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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