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【子ども】植物学①やりたいことをやればいい、とは限らない

普段から、この野菜の形は五角形が美しい!とか、葉の形と木の全景が似てる!とか、花びらは何枚!?とか、そんなことが気になっていちいち感動の材料になっている私としては、植物学はぜひやりたい。1カ月に1回でどう取り組めば良いのか悩みつつ、子どもの素直さに助けられて進めていった動物学を終え(詳しくはこちら→動物学)、念願の植物学だ。どう料理してくれようか!と気合も十分。


年間計画を立てる

黒板画コラージュ5月17日

前年度、ヒツジを見に行こうと思ったら六甲山は雪の中だったので、今年度はそうならないように、外を散策する日を先に決めることにした。やはり、春と秋がいいかな。気持ちの良い気候のときに。

ただし、気になることが一つ。山でキノコを探したいけれど、キノコって秋に増えるんじゃなかったっけ・・・。図鑑やインターネットで調べたところ、秋ほどではないにしろ春に増えるキノコも多いようだ。試しに、近所にある小さな山に入ってみると、あるある。落ち葉をめくれば白い菌糸。竹藪や雑木林で目を凝らせば、黒いキノコに茶色いキノコ。シダも美しい黄緑色をしていて、上を見ても下を見ても楽しい。しばらくすると、鼻がツーンと痛くなり、涙がボロボロこぼれてきた。そういえば、私、花粉症だった。子どもたちの中にもアレルギーのある子がいるかもしれないので、4月はお花見、5月は導入の授業をして、6月を散策する日にしておこう。

サクラを入口に、菌類、ソウ類、コケ植物、シダ植物、裸子植物、単子葉類、双子葉類・・・。まとめに1カ月は置いておきたいので、これでぴったりだ。


手ごろな山、ありますか?

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(↑ これは手ごろでない山・・・。この辺りで待ってるから、自由に散策しておいで!って言えるくらいのところ、ないかなあ・・・)

さて、神戸シュタイナーハウスの活動場所付近に、手ごろな山はあるのだろうか。うちの近辺だとそこら中に竹藪や雑木林があるけれど、ほとんどが私有地。活動場所から歩いて行ける距離にあって、自由に入れる雑木林?小高い山?そんな都合の良いところあるかしら。あるわけないけど尋ねてみようと、保護者の方に投げかけてみたところ、「車で15分くらいのところに渦が森という場所がある」とのお返事。もう、頼もしいったらない。

車で送迎してもらうなら、大人クラスを中断してもらう必要が出てくる。ならば始めから、その日のクラスは全て屋外でやることにしよう。動物園見学のときと同じように。登頂を目指すわけではないので、1時間程度ぶらぶらと散策できれば良いな。どんなところかな。

インターネットで渦が森を検索すると、保護者の方が紹介してくださったのは、どうやら坊主山という山のふもとらしい。山に入るなら下見は必須。ゴールデンウィークは、それを口実にハイキングへ出かけることにした。


トイレ、どこですか?

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車が後ろに転がりそうなくらい急な坂道を上り、渦森台の住宅地を抜けると、展望公園があった。公園の脇に地図が立てられている。どうやら、本気の登山もできるらしく、地図は六甲山の登山道へと続く道を示していた。今回の目的は登頂ではなくキノコや他の植物と親しむことなので、山に建てられた鉄塔周辺をぐるりと回る、短時間のコースにした。

道もしっかりあるし、これなら子どもたちを連れて歩けそう。キノコもあるし、岩にはコケが生えていて、シダ植物の裏には胞子のうがびっしり。キノコの種類が見分けられたら、もっと楽しいんだろうなあと思いつつ、コースを抜けた。集まって話をする場所の目星をいくつかつけて、外れに静かにたたずんでいた神社で手を合わせ、クラスの安全を願う。

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(↑ 後で調べたら、本住吉神社奥宮だった)

そういえば、トイレを見かけなかったけど、どこにあるんだろうか。こんなに広い公園なら、どこかにあってもおかしくないはず。地元の人らしき方が3人で集まってお茶を飲んでいたので尋ねてみると、「ここにトイレはないので、オープンしたばかりの渦森会館を使うといい」というアドバイス。

皆さん、ここでフジバカマを植え、アサギマダラを呼び寄せる活動をしているらしい。確かに、彼らの座っている一角は、手入れされた様子の同じ種類の植物がたくさん生えている。なるほど、これがフジバカマか。秋の七草なのに、実物を知らなかった私。それに、アサギマダラもどんなチョウなのかよくわからない。

(↑ 代表の方のブログ。久しぶりに覗いてみたら、活動は発展しつつ継続されている様子。)

昨年の様子を写真で見せていただくと、小さな花の周りにチョウが飛び、親子連れが数組集まってチョウを追いかけたり手に乗せたり、和気あいあいと楽しそうだ。「アサギマダラは日本を縦断するチョウで、またここへ帰ってくるんだ」という熱弁から、「住宅地ができた当時は子どもがたくさん遊んでいた展望公園も、今では閑散としているんだ」というちょっとセンチメンタルな話まで。「故郷としてのこの場所を守り、人もアサギマダラも安心して帰ってこられる公園にしたい」と精を出す姿は、活き活きとしていて素敵だった。

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来週子どもたちと一緒に山に入ることを伝えると、皆さんとても喜んでくれて、フジバカマの苗を2つ譲ってくれた。早速、プランターに植えて育ててみると、写真で見たのと同じ、紫色の小さな花が咲いた。根の張り方はとても力強いのに、こんなに繊細な花が咲くなんて。何年かしたら、うちにもアサギマダラが来てくれるのかもしれない。

こんな素敵な出会いは、子どもたちにも伝えたい。アサギマダラの話をするのもおもしろそう。でも、伝えたいことがありすぎて、気をつけないと取っ散らかった感じで収拾がつかなくなる。自分がやりたいことと、子どもたちに今の時期に伝えるべきこと、この境界線を明確にしなければ。授業って、やりたいことをただやればいいっていうような、そんな簡単なモノではない。

自分自身をコントロールする必要性を感じつつ、植物学がスタートした。


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えりか先生。神戸シュタイナーハウスでは、子どもクラスを担当。
小学校教員を経て、現在は放課後等デイサービスの指導員として働くかたわら、神戸・京都において日曜クラスの先生としても活躍中。
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