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『カゲロウと陽炎』


目に写る空気が、揺れている。太陽の光は、地面を熱し、また天に昇ってゆく。

 メリ、、メリメリ、スル、という音をたてて、少しずつ、皮が溶けはじめた。一体、どれほどの分子が、今までこの額を叩き、傷つけてきたのだろう。新しいものとは思えないほど、錆びていて汚い皮膚が、ヌルヌルと顔を出す。


「今から、私は、この空気の中を揺れにゆく。」

そう言って、カゲロウは、勢いよく飛び立った。


しかし、飛び立つ勢いとは裏腹に、舞っているカゲロウは、ユラユラとしていて、まるで、海を彷徨うクラゲのように、虚無に満ち溢れていた。

 カゲロウに、聞いてみたくなった。

「あなたに、ひかりは、いりますか?」


カゲロウは、そのまま池の中にポツンと転がる苔だらけの石に、ユラユラと着地した。

まるで、迷子にでもなったかのように舞っていたカゲロウだったが、よく見ると、頭は全く左右に揺れていない。目は常に一線を見据えて、潤んでいた。


 私はまた、カゲロウに、聞いてみたくなった。

「あしたって、なんで来るの、、、?」


カゲロウは、返事なんてせず、

ただ、真っ直ぐ、和やかに、

灯台を、見つめていた。





大丈夫.