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『血が、止まらない』



 うあー痛い。

 つい、大きな声が出た。

 はじめて、切った。

 まだ、ドキドキしてる。どんどん、ドキドキが増幅してる。

 こんなことやる人ってどんだけ肝座ってるんやろうって、ずっと思ってたけど、意外といけた。

 おお、血が、流れ続けてる。

 やべー、これまじでやべー、

 あー、、

 このまんま、いつまででも流れ続けて、干からびたい。

 深くいったなぁ、あ、あ、

さっき睡眠薬を貪り食ったから、

ねむ、、




 どこだここは?

 あれ、ああ、なんだ、病院かよ。


 右見ても、左見ても、だーれもいないじゃないか。まあそんなものだ。くそ、誰が助けた。

いてーな。


 頬が冷たい。


 助けたやつは薄情だろうか。それとも、良い奴だろうか。

 もうどうでもいい。

とにもかくにも、頬は冷たい。

 ずきずきする。


 ぜんぶ、冷たい。


みんな温暖化で騒いでるクセに、

お前の心の寒冷化については、

問題じゃねえのかよ。


まぁもう、どうでもいいや。

 

もう、どうでもいい。

 

 なにもない。


痛いのはもう勘弁だし、苦しいのも嫌だ。

安楽死が許されない生命維持装置的社会で、

魂、いのち、は、尽く死んでいき、

こんな血が流れ続ける連鎖の中で、

一体お前は何に希望を感じてるんだろう。


安楽死さえも許さないお前は、

一体、どこまで卑怯者で殺魂者なんだろう。


人は簡単に死ぬんだぞ。

と言い続けて生きてきたけど、

分かんねえんだろうな。

自分の感情や欲望に支配されてしまう「人間」たちには。


きっと、死んだ後も、分かんねえんだろうな。


そして自分を肯定して、生きるんだろうな。


いのちと向き合っている責任感と、現実を、どこまでも受け入れないで、まるで人が機械のように、駒のように、見えているんだろうね。


ふ。


ふふ。


頬どころか、枕まで冷たいや。







 

 

大丈夫.