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1歳半の赤子に振り回されつつ読むことを止められなかった『暇と退屈の倫理学』が教えてくれた「そうか、私は退屈していたのか…!!」という衝撃的事実

そうか、私は退屈していたのか…!!

小学生男子と1歳半の赤子に振り回され、日中は乳を吸われトイレを急かされ家事もままならぬ暮らしで「暇」を渇望しているんだけども、まさかそれでもこの状況が「退屈」に深く関わってるだなんて思いもよらなかった。この本を読むまでは。

「退屈」の反対を「充実感」と言い表してみればわかりやすいかもしれない。

退屈といえば「なにかすること」を探してしまう、なんだか手持ち無沙汰というか、宙ぶらりん感というか、落ち着かない感じを思い浮かべる。「なんかヒマ…」って感覚だよね。
この本で取り上げる「退屈」はもうちょっと守備範囲が広くて、やることはあるし(なんならそれなりに楽しい)ことをしていても感じてしまうある種の「虚しさ」とか、「物足りなさ」も含む。

子育て中の忙しくて暇がないのに、なんだか「何も(充実感をもたらすナニか)ができていない感」「時間を有効活用できていない感」時折もんやりと襲いかかる焦りとも虚しさとも言えない感覚…
あれも「退屈」の一種なのかもしれないって読んでて思ったんだよね。

「暇」と「退屈」は、イコールじゃない。忙しいのに退屈って状態は現代人アルアルなわけで。忙しいのにスマホばっかり見ちゃう(暇じゃないけど暇つぶし、気晴らしを求めちゃう)、ってやつ。

その関係性に哲学者たちも注目していたってことも意外だった。「生命とは!」とか「愛とは!」みたいなテーマに比べたら、なんだか地味じゃん、「退屈とは!」なんて。ところがどっこい、「退屈」のテーマは「人間観」にもガッツリ絡んでくる奥深いテーマだった…!
しかも深いだけじゃなくて、広い。
考古学的人類史から、生物学(脳科学)の視点、経済学者そして精神分析的な心理学の切り口…「退屈」というテーマに真剣に向き合うために触れる分野のまぁ広いこと!

「退屈」「倫理学」なんて退屈そうなタイトルだから読まずにいたけど、とんでもねぇ。とんでもねぇです。面白くて知的興奮いただきました。ごちそうさまでした。

もうひとつ腑に落ちたのは、「使命を知りたい」と望む彼女たちもまた「退屈」なんだってこと。
私は趣味で占星術を遊んでるんだけど、ほんとによく出会う「使命」とか「人生の意味や目的」なんてコトバ。「才能」とか「自分らしさ」を求めるのも、実は「退屈」につながっているのかもしれない。

なにか打ち込めるものがほしい。自分を行動に駆り立てる強い動機、理由付けがほしい。脇目も振らず夢中になれるものがあればどんなにいいだろう。熱中させてくれるものがあれば。
私にはそれが無い、そういう強いものがない、その事実に向き合うことは、人間にとってひじょーーーに苦しい。
何も取り立てて語るようなことがない日常、繰り返される毎日、このままただ終わりに向けて去りゆく時間…じわじわと苦しめてくるこの感覚、これこそ「退屈」の正体。

この苦しみから気をそらすために、私たちは「刺激的なナニカ」を求める。それは楽しいものでなくてもいい。別の苦しみ、怒りとか恐怖とかでもいい。(メディアはこの興奮を求める人間の需要に応える)

そういえば心理学者の河合隼雄せんせが、「人間は表層の悩みによって、深層世界に落ち込んでいる悩みを感じないようにして生きている」って言ってたのを思い出したよ。深層世界に落ち込んでいる、深い深いコアにある悩み、それが「退屈」。
使命を求める彼女たちの奥には、もっと根本的な悩みが潜んでいた。
これが人類共通の悩みなんだって気付いていたのが哲学者たち。

人類共通と言っても、この悩みは進化の過程で引き受けざるを得なかった新しい類の悩みのようで。そのあたりを歴史、進化の観点で紐解いているのもこの本の面白いところ。

で、その「退屈」という苦しみに対する救済案も哲学者たちはそれぞれ考えてるんだな。この本は、國分せんせがそれぞれの解決策に対して「それは納得いかない!!」って想いと、せんせが導き出した別の「退屈との向き合い方」を書いてるよ。

で、これは倫理学の本、つまり「どのようにして生きるべきか」を考えるための本であって、ビジネス書とかウツー本みたいに「結論ありき」で情報提供してるわけじゃないってのもポイント。読みながら、國分せんせの思考の道筋をたどりながら、自分も問いに向き合って、自分の中で何がどう変化していくのか、そこに注目することを促してくれる本。

だからこそ今回は、内容要約も本編のまとめも敢えて書かずに私の衝撃だけ書いておく!

あとね、文庫版のおまけに『傷と運命』って章があってね!これがまた面白かった!!不穏な苦しみ「退屈」がどうして生じるのか?人間の脳の仕組み、生まれてから辿る発達の過程、精神構造をもとに展開する仮説。

占星術タームで翻訳するなら…キロンと月の物語!!ここだけ占星術ネタとしてピックアップしてもオモシロそうだ…と思いながらも、なんせ「暇じゃないのに退屈」に苦しむイチかーちゃんなもんで、ゴリゴリ🦍ひとまとまりの記事にまで練り上げられる余裕はなさげ。。。

今回は乳首から頑として離れようとしない赤子を寝かしつけながら、暗闇の中首と目を痛めつけつつ一気に書きあげたぞ。

まだまだ読みたい本、読んで紹介したい本、いっぱいあるんだーーー
きれいにまとまってないけど、整っていないままに発車だ!星飛沫をあげて束の間の移動図書館💫

國分功一郎『暇と退屈の倫理学』(新潮社)のお届けでした🙌✨

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