上演延期のコメント/赤星マサノリ


 今回は世の中の状況をふまえ、コロナウィルス感染者数が増加傾向になる中、公演を継続するのは難しいと判断し、延期することにしました。

チケットを買って頂いた方、楽しみにしてくださった方、応援してくださっている方、期待に応えられずごめんなさい。

延期になった経緯や想いなどを書きます。矛盾したことも書いていますが、気になった方は読んで頂ければ嬉しいです。

 この数日、今までにないくらい自分に近しい人がコロナ感染しています。昨日会った人も今日にはコロナ感染してる。学校でも会社でもたくさんの人が感染していて、自分もいつ感染してもおかしくない状況になってきている。そういうことが身を持って感じます。

 すぐにでもPCR検査を受けた方がいいのか、公演直前の方がいいのかどうなんだろうかとか思いつつ、かかりつけの病院に予約の電話をしました。すると2日間待っても予約を入れることができず、さらに15人のキャンセル待ちをないとPCR検査を受けられないと言われました。大阪府のPCR検査センターに行くと当日に受けられることがわかりましたが、とてもたくさんの人が並んでいるみたいです。ニュースではPCR検査が混み合っていると聞いていましたが、想像しているより多い、ここまで逼迫しているのかと、病院に電話をしてみて初めてわかりました。これまでわかっていたつもりでも他人事だったのではないか。そんなこともわかっていないのに、公演をしてもいいのか。誰かを苦しめてまで公演をしても良いのか。誰のために、何のために公演を行うのか。まだこのカンパニー内では陽性者は出てません。いつ出てもおかしくない状況でもあります。それなのにお客さんを劇場に呼んで公演をしても良いのか、非常事態宣言が出るのを待ったり、神戸市からの要請を待って中止もしくは延期にした方がいいのか。

 チラシにも書きましたが、この公演はどんな事が起きても中止にしない演劇をつくるという事を目的としています。しかしその想いとは別に、世間と自分の間にぼんやりとした境界線みたいなものがあってうまく繋がれていないように感じました。創作活動ってそんなに世間と繋がっている感じはないのかもとも思うのですが。この変わりゆく状況で世間とのズレを見直して周囲と繋がらないといけないと思いました。

 中止か延期か公演を行うか時間も迫ってきて、判断しなければいけないようになりました。止めたくないけれど止めないといけない。感染は拡大している。今回は重症化しにくいとかも聞く。薬の問題も。身近な人の感染状況も考えないといけないし、楽しみに待っててくれている人のことも考えないと。一緒に作ってくれてる仲間もいて、積み上げてきたものもあって、やりたいこと、やってみないとわからないこともあったりして。こんな重要な事を決断するなんて難しすぎる。保留にしたい。けれどもうメンバーやお客さんに伝えないといけない。時間が迫ってます。

 初めの僕の提案は「今回公演は延期にする。チケットご購入のお客さまには払い戻しや、観劇パスご購入のお客さまには延期のチケットへ変更可能なように相談、対応する。陽性者が出たわけではないのでこのまま劇場に入り仕込みをし、無観客で実験をしながら公演をする。そうしたら当初の目的の、どんな事が起きてもできる公演、つまり出演者も存在しない状態で公演をすることができる。運良く今回は存在と不在をテーマにしている。だから不在から存在を見つけられる実験的な公演ができる気がする」でした。そこから妄想は広がり、「人流を止めたいわけじゃない。人数制限をしたら誰でもみる事ができる公演になるんじゃないか。安全を確保した状態ならみてもらえるんじゃないか」と思考が巡りました。

それに対してメンバーからいろいろ意見をもらいました。「公演を延期し無人の実験公演を行うのはわかる、けれどそこにお客さんを入れるのは少し引っかかる。」「正しく伝わらない気がする。」という意見。「確かに、自分たちはいないのにお客さんだけ集まるのはおかしい。」「配信をする。でも配信では伝わらない気がする」、など。

そうして出したのは、「公演は延期させてもらう。チケットご購入のお客さまには払い戻しや、観劇パスご購入のお客さまには、延期のチケットへ変更可能なように対応する。劇場では普段通り仕込みをし、無観客で無人の公演を実験的に行う。配信については実験している状況がわかるようなものをする」という方向になりました。

現在もまだ悩んでいます。決めたものの、本当にそれで良かったのか、公演を最後までやり遂げた方が良かったのではないか。その結論をだした後で急に落ち込んだというか、公演を途中で断念したことがなかったので、後悔のような、寂しいような、辛いような、なんともいえない気持ちが襲ってきてました。何が良かったのかわからない。今も悩んだり考えたりが巡っています。

でもなんとなく周囲や世間と繋がった状態で考えを出せたことは良かったのかもしれません。

みんなが少しでも納得ができて、こののち延期した日に公演を楽しむことができたら、そしてコロナも落ち着いたら、今回延期した事も良かったんだと思えるのかもしれません。

これからもコロナや色んな状況に悩んだり考えたりすると思います。

そういう事を考えたり悩んだりしながら、延期した日に向かって中止にしない演劇の実験を頑張ろうと思います。

みなさんもよければその延期した日を楽しみに待って頂けると嬉しいです。

早く終息しますように。

StarMachineProject『定位』

参加メンバー代表:赤星マサノリ


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