Prince Gyasi 『いろのまこと』 若きガーナは燃えているか
「KYOTOGRAPHIE(京都国際写真祭)2022」(4月9日〜5月8日)での展示で印象に残ったものの一つが、ガーナ出身のビジュアルアーティスト、プリンス・ジャスィ(Prince Gyasi)の『いろのまこと』でした。
カラフルでエネルギッシュな写真を創る
カラフルで鮮やかな背景に立つ精悍なアフリカの人々。一度見たら忘れられない写真、あふれるエネルギーを感じます。
プリンス・ジャスィは1995年生まれ、使い捨てカメラで写真を撮り始め、高校で最初のスマートフォンであるブラックベリーを手に入れました。そしてiPhoneを手に入れてからは、これをメインに使っています。
ジャスィは、音や文字から色を感じ取る共感覚をもっているので、表現したいストーリーがあると、自然に色が浮かんでくるそうです。
また、どのような色の組み合わせが、鑑賞者にプラスにはたらくかも感覚的にわかるので、展示会場に入るだけで元気がでてきます。
ガーナの子供たちを支援する
ジャスィが生まれ活動しているガーナ、アフリカの国であることは知っていても、アフリカのどのへんにあるかはわからない方も多いのではないでしょうか。私もそうでした。今回の展示を観てこの国に興味を持ちました。
ガーナは西アフリカに位置し、南は大西洋に面しています。ガーナチョコレートというだけあって、カカオ豆の生産は世界2位。2010年以降、石油の商業生産が開始され、一人当たりGDPは2,441ドル(2021年)に上昇、貧困国から中所得国になっています。
しかし、カカオ豆の生産を行なっている農家は貧困層で、教育も受けられず、効率的な生産を行う知識も技術ももっていません。
ジャスィは、Kuukua EshunとともにBoxedKidsという非営利の組織を設立しました。ジャスィは、母親が歌手として成功したことで学校に通うことができました。この経験をもとに、ガーナの首都アクラの最も貧しい地域の子供たちに教育を受ける機会を提供しています。
アフリカの貧困を表現している人たちもいますが、ジャスィはカラフルでエネルギッシュな作品で、アフリカの若者を描くことこそ重要だと考えます。
先端技術の拠点として期待されるガーナ
ガーナは、石油の商業化に止まらず、先端技術の面でも注目されています。
2015年、首都アクラがマイクロソフトのCity of Excellenceに選ばれ、2018年、グーグルがAIの研究所を設置しました。
IT企業がガーナに進出するのは、次のような環境が整っているからです。公用語が英語で、政治的に安定した共和制の国であること。そして、なにより魅力的なのは、総人口の年齢の中央値が21.51歳(2020年度)と若者が多いというところです。(ちなみに日本の年齢中央値は48.36歳(2020年度))
若者たちがちゃんと教育を受けられるようになれば、とんでもなく大きなパワーになることでしょう。
そして、2021年には、Twitterがガーナにアフリカ初の拠点を設立すると発表しました。Twitterといえばイーロン・マスクですが、彼は南アフリカ共和国のプレトリアで生まれているんですね。父親はエンジニアで、十分な教育を受けており、10歳でプログラミングをマスターしたといいます。
ジャスィとは境遇は違いますが、ふたりとも同じように未来志向のスピリットやガッツを感じます。ガーナの子供たちの中から、彼らのような大きな夢を描いてチャレンジする人が次々と出てくる、未来はジャスィの作品のようにカラフルでエキサイティングに違いありません。
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