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知られざる宇宙ミュージアム TeNQで体験する浮遊感 - another point of view

東京ドームシティ内に、宇宙ミュージアムTeNQがあります。東京大学大学院の宮本英昭先生が監修されていて、ミュージアム内に、先生のラボもあります。

私はつい最近まで、TeNQの存在を知りませんでした。宮本先生と懇意にしている知人から視察に行こうと誘われたことが、TeNQを知るきっかけとなり早速行ってきました。ここでとんでもない浮遊感を体験してきましたので紹介します。

TeNQのコンセプトは「宇宙を感動する」



TeNQの制作チームが作成したエクスペリエンスマップマインドストーリーを、ロフトワーク社が運営しているLAYOUTというweb siteで見ることができます。このマップに、「超感動!」 〈メインショー〉と書かれ、この施設の目玉なのが、シアター宙(そら)。直径11 mの円形のスクリーンが低い位置に設置されていて、私たちは、円の周囲に立ってスクリーンを見下ろすように鑑賞します。

当初のコンセプト作りで“奈落シアター”とキーワードを設定しました。のぞきこむという姿勢はプラネタリウムとは逆、つまり、能動的に自分から見に行くというマインドを産みます。囲うっていうのは空間を切り取るという意味があって、参加者で切り取って共有体験ができるシアターにテーマが決まりました。イメージを中心にシンプルな表現ながら、体験を共有するという具合です。

宇宙から地球を見たい素直な想いを形にしました。宇宙飛行士が持ってる共通感覚としてオーバービューエフェクトがあるらしいと知って、地球を飛び出して宇宙から地球を見た人だけが持ってる感覚を共有する体験を設計しました。

「宇宙ミュージアムTeNQの制作チームが語る空間づくりと体験づくり」LAYOUT

今回上映されたプログラムは、「another point of view」宇宙から地球の大地や月面のクレーターを眺めたと思ったら、急速に地球から離れ、木星や土星が視界に入り、さらには銀河の外にまで飛び出す、この遠ざかったり近づいたり高速で繰り返す映像を体験できます。遠ざかっているときなど、自分がロケットに乗っているかのような浮遊感を感じることができます。これほど感覚が揺さぶられるとは思っていなかったのですが、超感動といっていいコンテンツでした。

ジェットコースターなどのアトラクションであれば、実際に重力をかけたり解放したりで浮遊感を演出できますが、映像で浮遊感を感じさせるのはなかなか凄いことですね。

劇場で演出する大気圏突破


以前にも、映像でものすごい浮遊感を感じたことがありました。
タイのアーティスト・映画監督のアピチャッオン・ウィーラセタクンの作品《フィーバールーム》です。2017年に神奈川芸術劇場のホール(美術館や映画館ではなく演劇の劇場)で上映され、2019年に東京芸術劇場で再演されました。

観客は舞台の上に作られていて、客席側から無数のレーザー光がこちらに照射されます。と思いきや、レーザーではなくて、強力な光を出すプロジェクタなのだそうです。強烈な光の束につられて体が浮遊していき、ついには大気圏を突破していく感覚になりました。

ただ平べったい今までのスクリーンに加え、目に見えない距離や膨らみをスクリーンの周りに作りだすことができたと感じました。だからこの作品は、映画館の中に今まであったスペースをアクティベートすることができ、観客に作用させて、何らかの刺激を与えることができた。見えなかったものを、見えるように作り出すことができた作品であると思いました。

「アピチャッポン・ウィーラセタクン――『フィーバー・ルーム』から」ASIA Center 

まさに見えない宇宙を見せてくれた作品です。

感覚を揺さぶる映像


フィーバー・ルームにしてもanother point of viewにしても、映像と音で浮遊する感覚を引き出すことができるというのは、とても面白い。VRを使えば、本当に宇宙遊泳しているような状況が作れるのかもしれませんが、多くの人が一緒にいる空間で浮遊感を共有できるのは素晴らしいことです。逆にいうと、一人ではなくて、周りに他の人がいるから浮遊を感じられるのかもしれません。アピチャッポンさんは、以下のように語っています。

私の作品は、個人と個人のコミュニケーションによって作られていくもので、個人と観ている人の間のコミュニケーションによって、知識や知的なものへの欲求と、それから自分の感情や欲望、その両方を満たすことができる作品を目指しています。その作品を観ることによって、感情的にも身体的にも、期待していたよりもさらなる快感を得ることができる。

「アピチャッポン・ウィーラセタクン――『フィーバー・ルーム』から」ASIA Center 

フィバー・ルームはいろいろな国で上映されていますが、日本でだけ涙を流す人がいるそうです。この日本人の感性も素敵ですね。そして、もっともっと人間の感覚を揺さぶり、驚きを与えてくれて、一緒に観ている人々と感動を共有できる映像に出会えるといいですね。


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