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standのこれまで-03|物語を語れる服作りを。アパレルブランドstand5年間の軌跡で得たもの。

ボタニカルダイをはじめとする、日本の生地産地の持つ技術。その技術の多くが、商品実績がないために既存のアパレルブランドに採用されることはなく、日の目を見られない現状があります。そんな中、「実績がないなら自分たちで作ろう」と、浅草橋のアパレルのOEM企業リブルスが立ち上げたアパレルブランドが、「stand」です。

今回は、standを立ち上げ、服づくりに取り組んできた中での実際のエピソードや想いをお聞きしました。

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語り手|内藤明子

stand立ち上げのきっかけとなったのは、酒蔵さんとコラボしたボタニカルダイのシャツ作りでした。ボタニカルダイや草木染めというと、藍染めや桜染めなど、草花を使うイメージがありますが、あらゆる植物から染料を作ることができる特性上、「酒」から染料を作ることもできます。一見同じような白一色になってしまいそうなこの企画ですが、実はボタニカルダイは同じ原料でもその品種、抽出方法や温度などの差で異なった色合いに染まる面白さがあります。酒蔵さんごとに微妙に異なった「白」の個性が出るのです。

企画内容は、日本酒イベントに集まる酒蔵さん各社の日本酒を使った「日本酒染め」のシャツを作成し、酒蔵さんの酒造りへの想いと一緒に展示するというもの。単に「日本酒で染めました」ということだけではなく、「日本酒の作り手の想いも伝えたい」という気持ちで取り組んだこの企画。

この企画をお手伝いさせていただいたことを通して、ボタニカルダイの魅力を再確認すると共に、ブランド立ち上げへの想いと、standの構想が出来上がって行きました。

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「デザインがいいから買う」「値段が安いから買う」ものよりも、「想いに共感するから買う」ものを作りたい。その想いに至ったのは3.11の東日本大震災以降、これまでの消費行動について考え直したことも理由の1つです。

物語のあるブランドづくりを目指して

多くのブランドは失敗を怖れるあまり、「今シーズンはこれが流行っているから」と、売れている他社を参考に「これに似たものをつくりたい」という形で服づくりを進めることがあります。中にはそれを逆手に取って、「他社もやっているので、これをつくりませんか?」とメーカーに持ちかける業者も。

「みんながやっているから安心」「真似をしておけば安全」と似通った商品が無数に並ぶ中、standが掲げたコンセプトは「物語を語れる服をつくる」こと。最初に扱った技術は「ボタニカルダイ 」と「レーザー加工」でした。ナチュラルで自然なボタニカルダイと、先進的な技術であるレーザー加工は一見真逆のイメージを持っていますが、日本産地の生地の「実績」をつくるために立ち上げたブランドとして、一般的なアパレルブランドとは違ったメッセージを込めて服づくりに取り組んでいきました。

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春夏、秋冬の年2回のコレクションの中で、「旅行」などのシーンをテーマにすることもあれば、「土を感じる」をテーマにごぼうや玉ねぎを使ったボタニカルダイのシリーズを展開したり。またあるシーズンでは「桑の実だけで染める」をテーマに1つの植物だけでどれだけの色合いの違いが出せるかといった実験的な挑戦もしてきました。

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「今日は白いシャツを着よう」でもいいけれど、「今日は白椿で染めたシャツを着よう」と、その日に着るものを選べたら。そんな時間がつくれたら、日々の暮らしが少し豊かになるのではないだろうか。毎回、そんな想いでテーマを決めていきました。

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standでの服づくりの流れとしては、「テーマ決め」→「テーマカラー決め」→「アイテム決め」と進め、在庫とのバランスを見て新作アイテムの内容を調整していきます。流行ありきで進める服作りとはスタートも考え方も異なります。

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生産管理においては、アイテム数も生産数量も多くはない中、1つの釜で同時にスカートとシャツを染めたりといった工夫も。そうして、OEM企業だからこそ分かる現場の状況や生産管理のポイントを踏まえつつ、standだからこそできる「物語のあるブランド」の服づくりを進めていきました。

立ちはだかったのは販路の課題

「流行」有りきではなく、「想い」をベースにブランドづくりを進めてきたstandは、2014年秋冬のコレクションから2019年の春夏までの5年に渡り、日本の生地産地の技術を「服」として形にしてきました。その中で、暮らし方そのものを提案するようなコンセプトのショップなど、standに共感してくれる取り扱い店もいくつか出てきました。

しかしその後は販路確保において、かなりの苦戦を強いられました。roomsのような合同展示会への出展や、セレクトショップやインテリアショップに営業をかけることもしましたが、店側のテーマやタイミングに合わなかったり、一時取り扱いがあっても、後々取り扱ってくれなくなってしまったり。

ブランドを「知ってもらう」「扱ってもらう」そしてそれを「継続してもらう」ということは、容易なことではありませんでした。

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また、「物語を語れる服」づくりを進める中で、時にはお花屋さんにボタニカルダイの商品を置いてもらおうと営業をかけたこともありました。ピンク色に染まるイタドリや、ログウッドの紺色のピーコートなど。販売している草花と関連付けたアパレルを販売してはどうかと。しかし、 そもそもアパレルの販路でないところに商品を置いてもらうことはさらに難しく、実現することは叶いませんでした。

販路確保のためのやり取りを通じて、自分たちは普遍的な価値として取り組んでいる「良いものを長く着る」ことや、日本の産地を応援したいという「ものづくりへの考え方」が、取扱店にとっては「一時のブーム」でしかないこともあるという気づきも。

現在では、standの服の販売はWEBのみで展開していますが、当初はここまで影響力を持つとは思っても見なかったInstagramなどのSNSに取り組んで来なかったことも、反省点のひとつ。standのコンセプトに共感するファンと直接繋がることができていたら、違った展開も望めたかもしれません。

5年間の挑戦で得たものを次世代へ

5年間の挑戦を通して、自社ブランド「stand」を継続・拡大するよりは、新しくブランドを持ちたい作り手のサポートや、新しい生地問屋としての機能を持つことで日本の生地産地を応援したい。そう、方向転換を決めました。

ですが、自社ブランドを展開する中で得たものは大きく、standは「生地サンプル」以上の実績を多くつくってきました。時には、繊細な織りが美しいネクタイ地を使って、コートやワンピースをつくったり、アイディアを「形ある服」にすることで新しい可能性を切り開いてきたという自負があります。

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若い作り手さんの中には現場で「こんなことを聞いたら怒られるのでは?」「こんなものは作れないに決まっている」と決めつけてしまう方もいるかもしれません。ですが、やりたいと思ったことは挑戦すべきだし、そんな挑戦のひとつひとつが日本のものづくりを支えていく。

自分たちの失敗談や経験、知恵を活かしてその手助けをすることで、次世代の作り手の力になっていけたらと思っています。

現在、日本で売られているアパレルの97%は海外生産です。生地生産はまだしも、縫製工場は本当に数が少なく、普段繋がりのない者の依頼を引き受ける余裕もありません。そんな中でも私たちが橋渡しとなり、知恵を貸すことで次世代の作り手の想いを形にする助けになれば。

それがstandの次のステージだと思っています。


〈次回は、standデザイナーにブランドづくりのアイディアについて〉


取材|小泉優奈


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