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STORESロゴデザイン漂流記 〜完成に辿り着くまでのアイデアと対話の全記録〜

CoineySTORES.jpheyへと経営統合してから約2年。
それぞれ別々のサービスブランド名で運営していましたが、統合してついにひとつの 「STORES」として始動することになりました。

ブランド統合にあたり、STORES.jpとCoineyのデザイナーによる組織横断メンバーと、外部パートナーで組成されたブランドデザインチームで、新生「STORES」のロゴデザインをつくりました。

「STORES」はどんな世界を目指しているのか。制作プロセスにおける、アイデアや対話のプロセスを通じて、その想いをお伝えできればと思います。

新しいストーリーラインへ

まず、新しいロゴの方向性を検討するにあたりチームで行ったことは、2つのブランドが持つストーリーが交差した先にある、新しいストーリーラインはどのようなものかを考えることでした。
その上で具体的に現状のロゴをそもそも大きく変えるべきか、変える場合どうすべきなのかを考えていきました。

ネットショップのSTORES.jpと、実店舗向けの決済サービスであるCoiney。
お商売をする人たちのためのサービスという点では共通していても、それぞれのサービスを使うオーナーの方々の事業フェーズや形態も様々なものがあります。

その中で、ひとつの「STORES」として、どのような人たちのために価値を提供していくのか。それぞれのサービスを越えた共通の目的と世界観はどのようなものなのかを改めて問い直していきました。

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初期フェーズではメンバーの視点をすり合わせるためにそれぞれ資料を持ち込んで世界観のイメージをディスカッション。
プロジェクトスペースは社内での透明性を重視してオープンスペースを間借りして作業することでリアルタイムに社内メンバーの意見を参考に制作していきました。

お商売も “自由になりたがる”

色々な視点が考えられる中で、CoineyとSTORES.jpがheyとして一つに経営統合された背景から大きな方向性を考えていきました。

それは、”ネットショップと実店舗の垣根をなくし、お商売の活動をもっとシームレスで自由なものにしていく” というもの。
また、heyとして “Just for Fun” というミッションを掲げている中で、その傘の中にある「STORES」は、サービスを通じて “楽しみ” のための経済を広げていく役割を担っていくというもの。

この視点を踏まえつつ、お商売はどうなっていくか。その中で「STORES」ブランドとはどんな存在となるのかをチームでディスカッションしながら、以下のポイントへとまとめていきました。

解体と再構築
資金調達、製造、物流、販売、決済、お商売に関わる、あらゆるツールが民主化されることで、個人やスモールチームでも主体的で創造的な生産活動がどんどん行えるようになってきている。お商売におけるインフラ構造の解体と再構築が起きていくことで、これまで持続し得なかったような "楽しみ" 起点の多様な経済活動が成り立つようになってきている。

流動化するお店の概念

ネットショップに実店舗、デジタルコンテンツに物販、イベントにポップアップ。お商売を行う人たちの一つの空間に縛られず活動は多岐にわたっていく。その中で、固定的なイメージであったお店というものの概念もあたらしいものにアップデートされていく。

お商売も "自由になりたがる
かつてスチュアート・ブランドが情報化時代にむけて “情報は自由になりたがる” という言葉を残したように、私たちがクラウドによって働き方や協働の自由を求めていくように。インターネットやスマホによってお商売に関わるあらゆる体験がデジタルで包み込まれていく中で、 “お商売も自由になりたがる” ようになっていく。
“ として “拡張“ する「STORES」ブランドへ
お商売も “自由になりたがる“ 中で、「STORES」ブランドはその自由な活動を後押しするために “空間の広がりや拡張性” をつくり出し、”楽しみ” のための自由な経済活動を広げていくための基盤となる。
多岐にわたる活動をつなげるサービスの “群” として強固なシステム基盤を持ちながら、“信頼感や安定感” を感じさせられるような存在を目指していく。

ある程度文章がまとまり、方向性が見えてきたところで、これらの言葉を元に具体的なビジュアルイメージを考えていきました。

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👆キーワード、機能要件、そこから考えられるモチーフやディテールのアイデアをチームでディスカッションしながらひたすらアイデア発散。

お商売に関わるインフラ構造が具体的にどう変化しているのかの詳細については、下記の記事を読んで頂くとグッと全体感がつかめます。

お店の概念を拡張する

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これまでのSTORES.jpロゴを、先にまとめたポイントの視点から見たときに、お金や家などの静的で固定的なイメージのするモチーフは、目指すべきかたちと少しギャップがあるとチームは考えました。

しかし、約8年間で蓄積してきたブランドイメージを大きく変えるのは、認知コストや変化への反発リスクが高いのも事実。
そのため、ひとまずディスカッションの土台として、今のストアマークの形状を残しながらも、イメージを拡張させていく方向を考えていきました。

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👆A:ストア拡張案
小さなお商売からどんどん拡張していくイメージ。

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👆B:ポップアウト案
ハコからどんどん飛び出して、活動がどんどん広がっていくイメージ。

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👆C:スペース案
入り口などにも見えるようにすることで空間を拡張していくイメージ。

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👆D:リファイン案
「.jp」だけ削除しながらも、安定感のあるニュートラルなロゴタイプにすることでスタンダードなものにしていくイメージ。

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これらのざっくりラフ案をもとに、ひとまずhey代表の佐藤含めてチームで方向性のディスカッション。フィードバックとしては以下のようなものでした。

お店の "概念" は変わる
「STORES」として目指しているビジョンのスケール感や、お商売における活動の多様性から見たときにストアマークではギャップがある。“お商売の記号 = 家・店舗モチーフ” という発想が古いのではないか。もう少しスケールや広がりの感じられるモチーフを検討していきたい。

デジタルとアナログを同期させる
アプリアイコンなどへの展開の機能性を意識しすぎて、デジタル空間に最適化されすぎている感じがする。リアルなお店の空間でも溶け込んでいくようなものを意識した時にどのようなものが考えられるかを探ってみたい。

5年後にスタンダードとなるものを
STORES.jpのロゴも10年前に出た時はモダンな印象だったが、今ではありふれた印象のものになっている。「STORES」は変化の先端にいる人たちのサービスを目指しているいうことから、5年後にスタンダードになるぐらいの新鮮さが感じられるような表現を模索したい。

ざっくり一言でまとめると「まあ普通に考えたらこうなるよね。もうちょい未来の視点から見たときにどのようなものになるか。」ということでした。

改めて “お店” とは何なのか、未来においてお店の概念はどうなっていくのかということから考えていくことにしました。

サービスの “意味” を問い直す

お商売ってそもそもなんだろう。これからどう変わり、「STORES」はどのように働きかけていくのか。ネットショップや決済という機能的価値を越えて、どのような “意味” を持つものになっていくのか。

そんな問いをチームで共有しながら、色々な「STORES」の “意味” を考えていきました。
その中でも特に可能性がありそうなものをピックアップしながら、それをら中心にビジュアルイメージへと広げていきました。

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👆A:STORES = ウィンドー的な存在
サービス自体は透明で主張はしないけれど、お店を引き立てるもの。光を採り入れてさまざまなものを照らす存在として、脇役だけれどもなくてはならない存在である。
その中でも、ウィンドーはお店のこだわりを表現するもので一つの “画面“ でもある。「STORES」はその “画面“ においてもこだわりを追求できるような価値を提供していく。
その上で、ウィンドーは内から外・外から内へと空間をつなぐものでもあり、さまざまなツールやネットワークの入り口と出口にもなっていく。

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👆B:STORES = 楕円
"楽しみ" のための経済活動の多くは、モノやサービスを通じてコミュニティの輪をつくりだしている。その中で、お店の体験もネットショップと実店舗それぞれ個別化されたものから、顧客を中心としながら全体的で輪のような体験になっていく。
楕円には2つの焦点があるということから、お店の体験、コミュニティの関係など、分断されていたさまざまな要素をひとつにつなぎ、あらゆる輪を作り出していくというイメージに。

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👆C:STORES = ストリート
“楽しみ“ のための経済で活動する人たちは、同質的な世界から抜け出して、地に足をつけてこだわりを第一に生きている。いわゆる空間やファッションとしてのストリートではなく、野性的な思考や生き方としての「ストリート」っぽさがあるのではという視点。
情熱や好きの感覚を持ち続け、仲間や地元を大切にしながらお商売を営んでいくために。「STORES」も一緒に楽しみながら支えを提供していくイメージに。

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👆D:STORES = あらゆる可能性を “ひらく“
お店のOPEN看板モチーフで、お店や実現したいことへの可能性をいつでもどこでも “ひらく” 世界観に。斜めの角度は、ちょっとしたやんちゃ感、遊び感、ストリート感を表現。動き線は、お客さんがドアを開けて動いた時の感じ、楽しみ感やにぎわいを創り出していくイメージ。
「ひらけSTORES」といった感じのコピーもつくり、「ひらけゴマ」的に魔法を唱えるワクワク感を演出していく。

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これらの案を元にチームでディスカッションを重ねてしていきましたが、どれも「う〜む、コンセプトの理解はできるんだけど、仕上がりが何かいまひとつだなぁ...。」という感じで、決定打になるようなアイデアがない状況の中で、刻々と時間が過ぎていきました。

守るべきものと変化への恐れ

アイデアを見つけては「なんとなくしっくりこない」をチームで繰り返していく中で、だんだんと内向きな思考に陥りつつありました。

わたしたちはサービスとして黒子であるものなのに、そもそも主張すべきなのだろうかと。意思を表明するようなシンボルマークがそもそもいるのだろうかと。

そんな問いから「もはやHelveticaのようなスタンダードな書体で組んだだけのものをスッと置いただけで良いのでは。」という考えがチームの頭をよぎってきました。

「Helvetica」は、ちょうど「Helvetica Now」として、デジタルとアナログの垣根を超えてあらゆる環境においても機能性と美しさが保たれるようにアップデートされており、それを使って実際にロゴを組んでみると、「うむ、悪くない。」という感じの雰囲気になっていきました。

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小ネタになりますが、その印象をつくりだしていたポイントは文字の「R」にありました。
「Helvetica Now」の「R」は2種類用意されており、従来の「Helvetica」らしさを特に感じさせる曲線的なものと、新しく用意された直線的なものがあります。
試しに組んでいた「STORES」は新しい方の直線的な「R」を使用していましたため、主張しすぎずスタンダード感がありながらも、あらゆる環境に置いても強度を持つものになっていました。(やはりHelveticaは侮れない!

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ビジュアル面の強度に加え、「Helvetica Now」が持つデジタルとアナログの境界線をなくし、デジタル・ネイティブが切り拓く新しい時代を展望するというストーリーは「STORES」が目指すオンラインとオフラインを統合させるという世界観ともマッチしている。
そのストーリーを活かすために、あえてレディ・メイド的に何も手を加えないのはアリなのではということになっていきました。

この案を軸にしながら、ブランドの世界観を改めて以下のように言語化しつつ、展開を整理していきました。

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👆広告などのグラフィック展開イメージ。ロゴがシンプルな分、グラフィックでは遊びの要素を多めにとりいれることによって無機的なサービスになりすぎないようなバランスがとれたものに。

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改めて、この案をもとに方向性を定めるディスカッションを行っていきましたが、結論としてまたもや無し、ということになりました。

「STORES」は自由な領域や活動へと挑戦する人々と同じ目線で、 “挑戦者” としてのマインドや人間味が感じられるものであるべきで、そこはブラしてはいけないという判断からでした。

「わたしたちは黒子であり主張すべきではない。」

実は、この考えは社内のチームから出てきていたものでした。

これまで蓄積してきたものを守ろうとしすぎるが故に、変化を恐れてしまうことから無難なアイデアを選択してしまう。
内部視点だけで制作を行う時に陥りがちな罠に気がつかないうちにハマってしまっていたのです。

「守るべきものを大切にしながらも、「STORES」は “挑戦者” として同じ目線で “こだわり” の後押しをできるような存在となるべき。そのためにブランドには機能性を超えた "意味" や価値を感じられる要素がなければいけない。」

このような外部パートナーの方からの率直な意見をきっかけに、内向き寄りだった社内チームは、改めて思考を前向きなものへと変えていきました。
そして、これが最終決定にいたる案への大きなターニングポイントとなっていきました。

“Just for Fun” が生まれるところ

ホワイトボードに貼られていたこれまで作ってきた無数の案を全て取り払い、真っ白なホワイトボードを前にしながら、もう一度原点に立ち返ることに。

お商売を楽しむこととは何か、”Just for Fun” を生み出す源泉は何だろうか、機能性を越えた価値とは何か。
そんな問いの中で出てきた一つの答えが、以下のようなものでした。

「Just for Funの源泉は、一見不合理で無駄のようにも思えるような細部にまで行き届いた “こだわり“ なのではないだろうか。

好奇心や情熱からはじまり、楽しみながらも、時には失敗や試行錯誤を重ね続けることで生まれてくるオリジナリティ。それこそが共感を呼び、人々の楽しみをくっつけていく。

お商売がもっと多様なものになり、必ずしもネットショップや実店舗を持つといったような型にはまるようなものではなくなってきているなかで、『STORES』ブランドが体現すべきなのは、“気持ち“ のような抽象的なものなのではないか。」

「STORES」が考えるお商売のかたち。それは、もっと自由で流動的なものであり、ネットショップや実店舗を示す具体的な空間や物ではない、”気持ち” そのものを表す何か。

それは、幾何学的で機能的なものでは表現しきれない、もっと寄り添う姿勢や人間的なものが感じられるもの。
このような指針を持ちながら、改めてアイデア探索へと再出発していきました。

"気持ち" の手ざわり

これまでの機能的で具体的なイメージのものではない、"気持ち" が感じられるようなものをかたちにしていく。

この中で、指針としていったのが「going my way」という言葉でした。
「STORES」は、テクノロジーの力で、お商売をする人たちの手間を減らし、できることを増やしていく。その上で、同じ目線に立ち、こだわり続けるの道へと進んでいくことを、全力肯定していくというメッセージ。

この言葉を元に、なんとなくの感覚をイメージしながら体で描くようにペンを滑らせながらひたすらスケッチ。
チームメンバーがそれぞれ手探りながら少しづつ見えるかたちにしていく作業を続けていきました。

前回のディスカッションの結果を受けて振り切れたおかげか(頭のネジが外れたせいか)、これまでチームで発見してきたもの(これまでで約200案)とは違った雰囲気の案が出てきました。

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だいぶ思い切った感じのものもありましたが、その中でも吹き出しのような形状はこだわりの "気持ち" に近いのではないかという話になりました。

...が、しかし! まだ何かが足りない...(汗

果たして「STORES」はこだわりに寄り添うだけでいいのだろうかと。
“リアリティ” に欠けてしまっているのではという話になりました。

理想や綺麗事だけではやっていけないときもある。はじめは楽しくても、思い通りにいかず諦めなければいけないこともある。実際、裏舞台は泥臭い試行錯誤の繰り返し。こだわりや楽しみの気持ちと、相反するものが行ったり来たりしながら同期する。

「STORES」は、その裏舞台にあるリアルな気持ちにも寄り添っていくことも大切にしていきたい。その “リアリティ“ へ共感する力こそが、正しいプロダクトを生み出す原動力となり、より良い価値を提供していくことにつながっていく。

このような考えを念頭におき、チームで再度スケッチを行いながら “気持ち“ の手ざわりを少しずつ掴んでいくようにしていきました。

ひとすじの “流れ” がすべてをつなげる

近いんだけど何かが違う。そんなことを考えながら吹き出しの形状をひたすら描いていくと、フッとすべてがひとつにつながり、風向きが変わったような感覚のものが出てきました。

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これまでチームが考えてきたことのすべてがこの一本の線につながっていながら、人間的なエッセンスの意味を感じ取れる。
この一本の線こそが、こだわりを価値に変える “流れ” であり、「STORES」が考えるお商売の “かたち” なのではと考えました。

このスケッチをもとに、シンボルのコンセプトを以下のように整理していきました。

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シンボルコンセプト「Stream」
始筆部は、新しいことをはじめるときの力強い一歩を。
好奇心や情熱を持ちながら、ぐるぐると試行錯誤や実践を繰り返し、時には原点に立ち返りながらも、最後はオリジナルなものへと突き抜けていく。
そんな流れから創りされたものごとが、人と人をつないでいき、やがては “楽しみ“ のための経済の、大きな流れとなっていく。

このコンセプトを軸に、改めて各種ツールなどへの展開イメージをつくった上で、チームで再度ディスカッションを行なっていきました。

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結果、形状はまだまだ検討の余地があるが、コンセプトとシンボルの基本的な形状の方向性は良さそうだという意見で一致!
これでいよいよ、最終案の候補としてブラッシュアップ段階へと進んでいくことになりました。

“ことば“ と “かたち“ の相互作用

ブラッシュアップを行なっていく中で、もうひとつ並行して大きく決めてなければいけないものがありました。それが「STORES」の世界観を一言で表せるような言葉、いわゆるタグラインです。

先の案の時点で「going my way」という指針の言葉も出ていましたが、少し独りよがりな感じもあるということで、チームとして完全にストンと腹落ちするには至っていませんでした。

ビジュアルデザインに加え、ブランドが持つ世界観を、より強固なものにする言葉。ディスカッションを重ねていくつか出てきた中で、“Original“ という言葉が大きく可能性ありそうだということになりました。

そもそも “Original“ とは何か、辞書的に整理しておくと、以下の様な意味を持つものになります。

定義
1. 何かが生じたり、進展したり、派生したりする、発端や源になる性質
2. 唯一無二または独特な性質を持つもの。魅力的または興味深い形で、ほかとは違う人。奇抜な行動を起こす人、あるいは発明の才がある人。

オリジナリティとは
不変の性質ではなく、自由に選択できるもの。エイブラハム・リンカーンは、奴隷解放宣言の署名には6ヶ月もの間悩み抜いたり、市民と対話する時間を1日4時間設けたりしていくことで、「みなと何ら変わらない人だったが、エイブラハム・リンカーンになった」

参考:『ORIGINALS』アダム・グラント, 三笠書房

“Original“ とは、ものごとの始まりにある好奇心や使命感、情熱の源泉であり、自らが持っているものを信じ、続けていくことで “やがて“ オリジナルなものになっていくものでもある。

この定義のように、「STORES」が大切にしたい価値が凝縮されている言葉なのではということになりました。

この “Original“ を軸に、タグラインの候補がいくつか出てきていた中で、最終的に決まったのが「Go Original」という言葉。
「Go」という言葉が組み合わさることによって、ひとつひとつの原点やこだわりを尊重しながらも、前向きで気持ちを後押しできるような言葉であり、「STORES」が目指す世界観にマッチしている感じがありました。

実際に、最終案と文章を組み合わせてみると、ビジュアルデザインと言葉のイメージが相互に引き立て合うものとなった感触があり、完成へ向けて大きく前進した瞬間でした。

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👆写真のイメージは、よくあるような正面のポートレイトは使わず、裏舞台にある "気持ち" にスポットをあてる。シリアスさがありながらも、ちょっぴり楽しさが感じられるようなものを指針に選定。

ビジュアルはビジュアル、言葉は言葉といったように、それぞれが独立して価値を発揮するのではなく、さまざまな要素が創発的に組み合わさる。
そうすることで予想もしていなかったような総和以上の価値を生み出せる。デザインと言葉の相互作用させていくことの力を改めて感じました。

ひとつなぎの線と「Go Original」。

これを「STORES」ブランドの核としてさらなるブラッシュアップとイメージの展開を進めていきました。

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👆形状の検証。初期案は少し先の勢いが強すぎる感じもあったため、幅広くバリエーションを出しながら、少し柔らかい印象のものを基準にチームで調整していきました。

最後のフィードバック

シンボルの形状はある程度決まってきたなかで、カラーとロゴタイプの検証を進めていきました。

カラーは、マルチカラーを入れることによって、多機能なイメージが出できたことで情緒的な意味とのバランスがとれた感じになっていきました。
また、これまでにないものが混ざり合っていくことで新しいものが生まれていくというイメージもあり、大きくストーリーと展開を広げやすいもになっていきました。

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👆並行してロゴタイプのバリエーションも広く出していって検討。あえて、シンボルの曲線と対比させた「Gotham」をベースに、エレメントの角度などをシンボルと併せて一体感が出るように調整していきました。

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ここまでで、チームでの納得感もある程度出てきて、ようやく最後の島が見えてきたというところ。
そんな中、チームメンバーのある一言が、最後の変化を後押しするきっかけとなりました。

「これまでのものと大きく変わるし、実際にロゴはお店の空間のさまざまなところに入っていく。リリース前に実際のユーザーとなるオーナーさんの意見も聞いてみた方が良いかもね。」

この言葉を聞いて、チームの頭によぎったのはFirefoxやgapのリブランディングの顛末。
リリース後に既存ユーザーの大きな反発を招き、大混乱、どちらのブランドもリリースを撤回したというものです。
この事例から読み取るべき教訓は、ブランドロゴは基本的に「むやみやたらに大きく変えるな」ということ。それでも「変えるならやり切れ」ということです。

どんなブランドでも変更時は違和感があるものですが、徐々に馴染んでいく。その中でも、1番やってはいけないのが、あらゆる人の反対を恐れて迷走し、無難な選択をしてしまうこと。

安心を選ぶこととはすなわち、群衆の中に身を隠すことなのである。
ーエリック・シュピーカーマン『図解で知る 欧文フォント100』

チームとしては、事前に行っていたフィールドリサーチの結果を踏まえつつ、対話を繰り返し、あらゆる可能性を検討した上で方向性を決め、自信を持てているという状態。

そのため、フィードバックの内容を受けても大きくデザインは変えないという前提をおきながら、いくつかのオーナーさんからフィードバックの機会をいただくことにしました。

意志と葛藤

最終候補の案を持って、数名のオーナーさんへ訪問。結果、非常に真摯かつ丁寧にフィードバックをいただくことができました。
チームが思ってもいなかったような新鮮な視点もいただくことができ、今後のデザインを適切に判断していく上で、とても貴重な機会となりました。

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しかし、その中で、ポジティブな反応があった反面、ネガティブに受け入れられてしまう部分もありました。

大きな変化であり、すぐには良し悪しを判断できないという点を考慮した上でも、フィードバックを受けて検討の余地があると判断したのは、最終フェーズで追加したマルチカラーでした。

具体的なフィードバックとしては、お店はこだわりを表現する空間で、その裏側にあまりサービスやツールは前に出ない方が良いのではないかということ。

お店とお客さんの間にあるツールはできるだけ透明な存在である方が良い。
これは、これまでCoineyとSTORES.jpともに大切にしてきた価値観でもあったため、チームとしても大きく迷うこととなりました。

改めて、フィードバックの結果をどのように活かしていけば良いかをチームでディスカッションしていきました。

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社内の人たちも交えながら多様な視点を交えたり、反証となるような全く新しい案をつくって並べて検討してみたりした結果、チームとしてやはり今の案がベストであるという判断をしました。
 
何より大きな理由としては、お商売の形態が多様かつ流動的なものになっていく中で、その自由な活動を支えていく世界観を表すためには、これまでの型や枠組みから外れていくような形や色が必要があると考えたためです。

それでも、やはりグラデーションの色味は検証の余地があるのではという話になり、改めてカラーバリエーションをつくっていくことにしました。

あたらしい商い方の “はじまり“ へ

無数にカラーバリエーションが考えられる中で指針としたのが、お商売はもっとシームレスなものになっていくというイメージでした。
具体的には、hey代表の佐藤のインタビュー記事でのコメントが分かりやすいので、そのまま引用しておきます。

僕らがフォーカスしているお客様はオンライン、オフラインを当たり前のように行き来し、商品のフォーマットもさまざま。例えば、Tシャツ屋さんだからTシャツのみを売るのではなく、イベントをやる際はチケットの販売をしたり、ファンクラブのようなサービスを提供し、会員限定のコンテンツを作ったりするんです。

お客様が提示したい世界観、ブランド、興味関心の傘の下に多様な商品が並ぶ。物販もやるし、イベントもやるし、会員制のコミュニティもやる。オンラインとオフラインを行き来するのが当たり前だからこそ、そこはシームレスに繋がっていた方がいい。

ー『立ち上げから2年、いまheyがサービスブランド統合に打って出たワケ』Forbes

このように、そもそもの「STORES」の出発点が、多岐に渡るお商売に関わる体験をシームレスにしたいというもの。

「STORES」が考えるお商売の "かたち" は、一つのものにとどまっていくようなものではなく、ボーダーレスでグラデーションのように要素が混ざり合っていく。この考え方を軸に、再度グラデーションを検証していきました。

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上図の様に、ひたすらバリエーションを作っていく中で、どうしても引っかかっていたのが「無機的になりすぎる」ということ。
多様な色味を組み合わせたグラデーションにしようとすると、どうしてもデジタルっぽくなりすぎてしまっていました。

何かもっと自然にあるようなもので、親しみが感じられるようなグラデーションは何か。そう考える中でヒントになったのが、チームメンバーが色々と資料を探す中で見つけた朝焼けの画像でした。

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朝日が登っていくイメージは、あたらしい商い方の “始まり” を予感させる。
大気が流れるようなイメージは、大きなお商売の “流れ” を感じさせる。
広大な空のイメージは、領域にとらわれない空間の “広がり” を感じさせる。

それでいて、異なる色味が混ざり合いながら、主張しすぎず暖かみが感じられる。これこそが「STORES」が考えていた世界観にピッタリのカラーなのではないかということになりました。

朝焼けのグラデーションによって広がるストーリーの可能性を感じ、この色味をインスピレーションにしながらカラーを検証していきました。

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👆朝焼けのグラデーションの微妙な色合いを彩度と色相で網羅的にバリエーション出し。最終的には暖色寄りで自然な柔らかさのある彩度のものを起点に細かく微調整していきました。

Go Original

そして、ついに出来上がった最終決定版のコンセプトとビジュアルの展開イメージがこちら。

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Stream」
すべては好奇心や情熱を持って「おもう」ことからはじまる。そこから、楽しみながらも失敗と混沌が伴いながら「つくる」ことを続ける。それによって生み出されたものごとをわかち合うことで人びとが「つながる」。

「おもう、つくる、つながる。」STORESは、人々の創造的な経済活動にある気持ちの流れに寄り添いながら、“楽しみ“ のための経済活動の大きな流れをつくり出していく。

そして、わたしたち自身も、朝焼けに感じる “はじまり“ のワクワク感を胸に、あらゆる境界を越えていく人びとの新しい挑戦を支えていく。

もしも「STORES」があったなら

個人的に今回のプロセスは、お商売とは何かをひたすら考え続けた数ヶ月で、その活動を支えるようなサービスづくりに携わることは、とても意義深いものだと改めて感じるようになりました。

単純な好奇心や情熱、使命感から始まり、誰かを想いながらつくりはじめる。
失敗や試行錯誤を重ねてつくりつづけ、そこから生み出されたものを通じて、みんなが  “こだわり“ を分かち合うことができる。
その輪が広がっていくことこそが、ひとりひとりの生きがいになっていく。

人生でもっとも必要なことは、人から必要とされることだ。
ー『古くてあたらしい仕事』島田潤一郎

お商売をすることは、人に必要とされるための大切なことがたくさん詰まっている。「STORES」として、そのお手伝いをできることは大きなやりがいがあるなと思っています。

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私自身、素人ながら10年くらい前にデザインフェスタで自分でつくった商品を販売した経験があり、それが今「STORES」に向き合う原動力になっています。

デザイナーとして働く傍ら、「自分が欲しいものをつくりたい、その上で人をちょっとだけ楽しませられたら最高!」そう思って単純な好奇心からつくったアイデアふせん。
本当に売れるかどうか不安が入り混じる中で、はじめて売れたときの感動は今でも忘れられません。
お客さんと向き合って直に反応を得られたことの達成感と、商品を手渡すときに心の底から「ありがとうございます!」と言えたときの嬉しさを今でも鮮明に覚えています。

自分がつくったものが人に認められて、得られた対価を元手にあたらしい “楽しみ” を生み出したり、こだわりを分かち合うことができる。
「STORES」としてその機会を広げていくことは、とても意義深いことだと思います。

そして、もうひとつ原動力となっているのが、出店中に興味を持って立ち止まって見てくれていたお客さんに聞かれた質問。

「ネットショップでは買えないんですか?」

そのお客さんは、商品はとても気に入ってもらえていたのに、手持ちの現金が全く無くなっていたようで、商品を購入いただくことができなかったのです。

今は個人でもカード決済などの端末を導入して対応することはハードルが高いものではありませんし、ネットショップもたった数分でつくることができるため、この機会を逃すことが無かったでしょう。
しかし当時は、決済端末は高い上に申し込みや導入に手間はかかるし、ネットショップを立ち上げようもんなら、とても大変なもので素人には手が出せないような仕組みでした。

でも、あのとき「STORES」があったなら。

カードで買ってくれて、ちょっぴり売り上げが増えていたかもしれない。
ネットショップからもお客さんが買ってくれて、指で数えられるくらいは共感してくれる人が増えていたかもしれない。
もしかしたら、もっとその気になって違う仕事を本業にしていたかもしれない。

素人の思いつきのような挑戦でも、「STORES」という仕組みがあることで可能性が拓かれていく。
はじめて商品が売れたときの成功体験を追い続けられるように。
楽しい事ばかりではなく、ときには理解されず、行き詰まる時もあっても、お商売を “楽しみ” つづけられるように。

あたらしいシンボルと「Go Original」という言葉には、そんな価値がぎゅっと込められていると感じています。

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わたしたちも境界を越えていく

今回、ブランド統合にあたって発足当初はやるべきことが山積みの状態でしたが、それぞれのチームメンバーが境界を自由に飛び越えながら、協働していくことでひとつひとつ解決していくことができ、その姿はまさに「STORES」のシンボルの姿そのものであったように思います。

あたらしい “商い方” で活動する人たちが境界をどんどん越えていくように。わたしたちもどんどん境界を越え、目指す世界観へと近づいていく。
より多くの自由な活動を支え、目指しているビジョンを実現するために。
新生「STORES」はまだまだはじまったばかり。一緒にはたらく仲間を絶賛募集しています!

隔週で「Hello hey」という会社説明会のイベントも開催しておりますので、気軽にご参加いただけたらうれしいです。ご応募お待ちしております!

Just for Fun.
ともに "楽しみ" のための経済へ。

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↓ブランド統合の背景と展望についてhey代表佐藤のインタビュー

↓Coiney創業〜ブランド統合までのCoiney創業者によるインサイドストーリー

↓heyのCIデザインプロセス


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Coiney, heyリードデザイナー https://takamasa-matsumoto.com

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