ナレッジワーカーの働きやすさをOPQRSで表してみた

私は SIer で「現場の人達ができないこと(新規事業、改善や支援)」をする後方部隊として働いていますが、数ヶ月単位で仕事内容が変わるという中々に流動的な日々を過ごしています。

前々から「働きやすいときと働きにくいときがあるなぁ」と思っていました。

どういうときに働きやすい(あるいは働きにくい)のだろう?

これがわかれば、働きやすさを担保しやすくなるはず。というわけで自分なりに整理してみた結果、OPQRS で上手くまとまってくれたので今回共有します。

働きやすさのOPQRS

以下の5つです。

・Organizable …… 組織として機能している
・Productive …… 生産的である
・Questive …… 冒険の余地がある
・Restriction …… 制約が少ない
・Salary …… 給料がいい

順に詳しく見ていきます。

Organizable

個人の集まりやワンマンではなく、ちゃんと組織として機能していることを意味します。

もっと言えば、仕事の文脈とプライベートの文脈をきちんと分けられることです。以下の2つですかね。

・仕事時にちゃんと仕事モードで働ける(これを担保する仕組み・体制・リテラシーが整っている)こと
・仕事モードがオフになる余地が十分にある(プライベートにまで波及しない)こと

ここで仕組み・体制・リテラシーと書きましたが、意外とリテラシーが重要になってきます。たとえば「情報共有だけなら会議はしなくてもいい(各自読んでもらえればいい)」というテクニックがありますが、これには以下のリテラシーが要求されます。

・無駄な会議をへらすべきという高い意識
・自分で情報を読む自律性
・「話し合い」と「コミュニケーションの蓄積」は分けて考えればいいという知見(たとえば後者は1on1など雑談タイムでやればいい)

上記のリテラシーがない場合、(たとえメンバーの一部が問題を自覚していても)情報共有会議は構わず開催され続けてしまいます。

リテラシーが低いと、このような「仕事としてもっと上手くやれるのに」が成就しない率が増えます。代わりに、プライベートでやるような効率度外視の「とにかく一緒に時間を過ごして仲良くなる」が行われます(私はこれを家族ごっこと呼んでいます)。

そういう意味で、Organizable とは「家族ごっこを軽減できる」と言い換えても良いでしょう。

Productive

仕事が生産的であることを意味します。

ここで、生産的とは「成果÷コストの値が大きい」ではありません。生産的とは「高いパフォーマンスを出しやすい」という意味です。これは以下のような意味を含みます。

・内省できるレベルでどっぷり集中できる(たとえば2hの間、誰にも邪魔されずに集中できる機会を毎日2回確保できる)
・自分に合ったツール(デスクや椅子、PC、ソフトウェアやサービス)を使うことができる
・WNGF(難しすぎず、斬新で、ゴールが明確で、フィードバックされる)が担保されている
・自分の興味や資質にあった仕事である
・内向きの仕事(社内政治、渉外、煩雑で無駄な手続き、IT介護、無知のフォロー)でない etc

仕事というと「個を押し殺して、言われたとおりに手足を動かす」「内向きで頑張ることも大きな仕事である」という前時代的なスタイルが何かと幅を利かせがちですが、そうではないということです。

言い方を変えると、自分という多様性を尊重してもらいつつ、内ではなく外を向いて成果を出していくことができる――これがProductiveだとも言えます。

Questive

冒険要素があること――言い換えると、新たな学びがあることを意味します。

ICT は日進月歩であるため「IT エンジニアやプログラマはー生涯学び続ける必要がある」とはよく言いますが、Questive はこのニュアンスです。

別の言い方をすると、たとえば「一年間、何も新しいことを学ばずとも食べていける世界」は、Questive ではありません。楽という意味では素晴らしいですが、退屈すぎてつまらないですし、成長もしないのでもったいない。

ナレッジワーカーという人種には多かれ少なかれ、未知への好奇心や成長欲求があると思います。これらが満たされない(つまり Questiveでない)と、たとえ安定していても満足できません。

ちなみに Questive にも種類があります。

・ドメイン(業務)がもたらすもの
・ゴールに向かう過程で(調査や試行錯誤によって)もたらされるもの
・お客様がもたらすもの
・チームメンバーや会社がもたらすもの

なので「毎日同じことをしている飲食店員や講師は Questive でない」というと、そうでもありません。来店客や生徒からもたらされていたりします。

Restriction

制約、拘束、束縛が適切であることを意味します。

・制約とはツールーロール(Tool/手段、Rule/ルール、Role/役割)のこと
・拘束とは以下のこと
 ・時間的拘束(特定の時間に集まらねばならない)
 ・場所的拘束(特定の場所に集まらねばならない)
 ・話題的拘束(ある一つの話題しか話してはならない)
・束縛とは裁量がないこと

これらがキツければキツイほど、ナレッジワーカーは働きづらいです。

なぜかというと、ナレッジワークが単調作業ではなく、本質的に個人的で高度な仕事だからですね。そのような本質がわからず、無闇にこれらをキツくする環境はもはやハラスメントと呼んでいいほどの所業でしょう。

しかし何もないのがベストかというと、そうでもありません。チームで仕事をする場合は適切な役割とコミュニケーションが必要ですし、そもそも仕事も有限(ゴールや締切がある)でなければやりづらいでしょう。チームと有限性があるなら、秩序と完遂のために制約・拘束・束縛も必要になってきます。

多すぎてもダメ、なさすぎてもダメ、ということで「適切」と書いています。

Salary

給料が「ナレッジワーカーとしての生活基盤を整えられる程度に」良いことです。

ナレッジワークでは高い生産性(パフォーマンス)を出す必要があります。また日々のインプット、アウトプット、学びや修練も不可欠です。アスリートと同様、トレーニングが必要な職業だと私は思います。

そんなナレッジワーカーを支えるためには、確かな生活基盤が必要です。

もっと言うと健康的な生活を担保し、十分な時間を確保し、勉強や道具に費やせるだけのお金が要ります。凝ればきりがないですが、必要に応じて万円のキーボードや椅子を買ったり、月に万円分の本を買ったりくらいのことはできねばなりません。

倹約のために何時間も費やすとか、お金がなくて劣悪な環境と道具でしか働けないなどといったことはあってはならないことです。

ナレッジワーカーは何かを生み出す生き物であって、ただ生活していればいいなどという怠惰は許されません(もちろんたまには休んだ方が良いです)。そんな甘い世界ではない。慢性的怠惰が許されるのは、よほど実力があるか、市場価値の高い場所に巡り会えているかのどちらかでしょう。

……と、少々持論が強くなってしまいましたが、それほど生活基盤(とこれを担保できる程度のお金)は重要なのだということが伝われば幸いです。

おわりに

ナレッジワーカーとしての働きやすさを OPQRS で整理してみました。働きやすさについて考えたい場合は、この OPQRS を思い出していただけると捗る(こともある)でしょう。

ではまた。

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