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はるかぜ、のようなきもちで

新宿まで映画を見にゆくことにする。
去年の年始には、たしか「ローグワン」を見に行っていて、またスターウォーズかよ(前作見ていて普通にシリーズファンだけれども!)という気持ちになった。ので、見逃していたスティーブン・キング原作『IT〜“それ”が見えたら、終わり。』にする。

上映まで時間があったので、もよりの神社で初詣をすませる。お賽銭を投げ込む箱の真横に、「おみくじの方は続いてこちらにおならびくださ〜い」という感じで、それ用の巫女さんが立っている。そうなると「おみくじは別にいいか」となる人はほとんどおらず、全員お賽銭のあとにすっとお行儀よく横にずれて並んでいた。
「UIの勝利だね(笑)」
とぼくはいった。
もちろんこれを「UI」と呼んでしまってはおかしなことだが、しかし何かにつけてギャグのように、UI / UXをぼくたちは随分語るようになった。

例:「このレストラン、内装以外のUXは高いね。おしい(笑)」

それでおみくじを引いたら、吉で、引っ越すなら東の方角がいいと出た。夏までには引っ越しを考えているので、これは計画に対して好都合な見えざる者からの指摘だった。決定的だったのは「春風のような気持ちで」とあったことで妙にこれが胸にグッときてしばらく機嫌よくすごす。春風のような気持ちで、まったくなんというすばらしいフレーズだ。うれしくなってしまう。

しかしどこかで聞いたことがあるな、と思って、あ、「はるかぜとともに」だと思い出す。

「はるかぜとともに」というのは、「星のカービィ」シリーズにおける、チュートリアル的なやさしいステージの名称としてゲーム好きには知られている。ジャンプし、ホバリングし、スライディングをし、敵を飲み込むことで相手の能力をコピーするカービィの身体と、その世界に慣れるためのステージであり楽曲なのだ。たぶんハル研究所ともかけているんだろうなあ。

世界の仕組みに慣れること、その成り立ちを理解して身体をフィックスさせなおすこと。それを「春風のような気持ち」でやろう。

新宿までは各駅停車で向かうことにする。
けっこう混んでいて、自分の中での「人のいないお正月の東京をエンジョイする!」という目的が、とたんに達成不可能といった様子になっていた。
「元旦は福袋、2日は初売りのセールでみんな出かけるんだよ」
と教えられる。そんなことまったく知らなかった。


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