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バナナを置かない八百屋

私は、野菜を買う時に、スーパーの他に、八百屋で買うことがある。私の行動範囲には、三軒の八百屋があるのだが、そのうち、一番家に近い八百屋が、バナナを置かない八百屋なのである。

ある日、その八百屋で買い物している時に、別のお客さんが言ったのだ。「ここの店には、バナナは置いてないの?」と。その答えがふるっていた。

「バナナは輸入物でしょ。輸入した野菜には、農薬がたくさんかかってるの。だからうちの店にはバナナは置かないんです。」

ひょえー。その八百屋にはバナナが置いてないことにすら気づいてなかった私だが、この答えにはびっくりした。

そう言えば、私の行動範囲にある、スーパー、ドラッグストアには、バナナが置いてある。ここ以外の八百屋にも、バナナが置いてある。

バナナは、果物の中では値段が一番安いと言ってもいいのではないだろうか。多少、値段の高いものもあるが、それでも、他の果物よりは安いと思う。そして、一年中売っている。

それまで、私は、普通にバナナを買って食べていたのだが、その八百屋さんの言葉を聞いてさすがに、しばらくは、バナナを食べなくなってしまった。

そうか、バナナにはたくさん農薬がかかってるんだ…

同じ輸入物のオレンジ。オレンジは、いかにも輸入されたもの、という感じで、日本の柑橘類とは違う濃い色合いだし、ものによっては、使ってある防カビ剤の名前なども書いてあって、いかにも輸入されたもの、という感じだ。

それに比べてバナナは、そりゃもちろん、フィリピンをはじめとして、産地国も書いてあるし、輸入されたものだとはわかっているのだが、あまりにも当たり前に果物売り場にあって、農薬がたくさんかかっているなんて意識がなかった。

そしていつの間にか、また、バナナを食べ始めた。安いから。

人間って、都合の悪いことは忘れる生き物だ。

今、この文章を書いていて、バナナにたくさん農薬がかかっていることをまた思い出したから、またしばらく、バナナを食べるのをやめるかもしれないけど、そのうちまた、食べ始めるんだろう。

だって、他の店には普通に売ってるんだし、大丈夫だよね、と頭の中で言い訳しながら。

そして、バナナを置かない八百屋でも、普通に買い物するんだろう。その八百屋にバナナが置いてないことすら、忘れて。



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